分散型金融(より一般的にはDeFiと呼ばれています)は、ここ数ヶ月でますます注目を集めています。毎週のように新しいサービスやプラットフォームが登場し、短い歴史にもかかわらず、環境はますます複雑化しています。
本記事では、DeFiの主要な構成要素の概要と日本の法律の下での規制上の意味合いについて説明しています。
訳注: 本書は当事務所作成の英文DeFi資料下記(1)を翻訳したものです。そのため日本語としては最初から日本文で作成した下記(2)~(4)の資料のほうが判りやすいと思います。 (1) 英文DeFi資料(2020年9月29日付) https://innovationlaw.jp/en/key-building-blocks-of-defi/ (2) DeFi全般について解説するセミナー資料(2020年9月9日付) https://www.slideshare.net/SoSaito1/defi-japaneselaw200909?fbclid=IwAR0DcqVcqCmdDd79-MbCII1h0Z6-MZL3WHnNFtL2GMT9-b0E27WRQCCe-7Q (3) リクイデティマイニング(Compound)の分析(2020年7月31日付) https://innovationlaw.jp/yield-farming-and-liquidity-mining-in-japan/ (4) DeFi デリバティブ (dYdX)の分析(2020年9月10日付) https://innovationlaw.jp/defi-derivative-in-japan/ 但し、上記(2)~(4)ではAMM、aggregator、vaultsについては十分に触れていないため、更に情報を知りたい方は本書をご覧下さい。 本書本文中の+/-や/-は規制適用の可能性を示します。 当事務所では継続的にDeFiを研究しており、今後も各種分析を提供する予定です。 |
DeFiの主要な構成要素
分散型取引所(DEX)は、暗号資産を売買できる市場をユーザーに提供します。DEXの基本的な概念は、中央集権型取引所のそれに類似しています。別の言い方をすれば、DEXは通常、オーダーブックとマッチングエンジンを有しています。
オーダーブックとマッチングエンジンの両方がオンチェーンになっている場合もあれば、これらがオフチェーンになっていて決済だけがオンチェーンになっている場合もあります。
例としては、以下のようなものがあります。
規制の観点からは、オーダーブック/オーダーマッチングと決済を区別する必要があります。 分散化の程度、すなわちDEXの作成者が管理者権限を用いて資金にアクセスしたり、スマートコントラクトを制御したりすることができる程度に応じて、活動は規制され、又は規制されないことになります。
規制対象となる可能性のある活動
管理されたカストディあり1 | 管理されたカストディなし | 規制されるか | |
オフチェーンのオーダーブック | ✓ | はい | |
✓ | はい | ||
管理ありのオンチェーンのオーダーブック | ✓ | はい | |
✓ | はい | ||
管理なしのオンチェーンのオーダーブック | ✓ | いいえ | |
✓ | はい |
AMMはオーダーブックを持っていません。その代わりに、1つ以上の暗号資産のペアで構成される流動性プールを使用します。各暗号資産の価格は、プール内の他の資産に対して測定されます。
Uniswapの例では、プール内の各暗号資産の価格を決定するために以下の式を使用しています。
x * y = k
この式では、xとyはプール内の各トークンの数を表しています。xとyは時間の経過とともに変化しますが、kは一定であり、AMMは任意の時点で各資産の価格を決定することができます。
たとえば、ETH/DAIプールでETHをDAIに交換すると、DAIの価格はETHよりも割高になります。プール内のETH価格が実際の市場価格から乖離している場合、これは裁定取引の機会を開きます。裁定取引の機会を利用するには、トレーダーはプールにDAIを供給し、ETHを引き出す必要があります。その結果、ETHの価格はリバランスされ、全体的な市場価格に合わせて調整されます。
プールの流動性は流動性プロバイダー(LP)によって提供されます。流動性を提供することと引き換えに、LPはプールとの遣り取りで請求される手数料に参加し、場合によっては追加のインセンティブとしてガバナンストークンを受け取ります。
例としては、以下のようなものがあります。
規制対象となる可能性のある活動
現存するレンディングプラットフォームのいずれかから資金を借りるには、ユーザーはまずプロトコルに暗号資産を預ける必要があります。レンディングプロトコルに資金を供給した場合、レンダーはレンディングプールのシェアを表すトークンを受け取ります。このトークンは、プロトコルから資金を借りる際に担保として使用することができます。
プロトコルによっては、追加のトークン(通常はガバナンストークンの形をしています)が、プラットフォームを使用するためのインセンティブとして、貸し手と借り手の両方に発行される場合があります。
借り手は、プロトコルに対して利息を支払いますが、この利息は直接レンダーに渡されるか、又はレンダーがプロトコルから自分の資金をアンロックすると決定した後にレンダーに支払われます。
例としては、以下のようなものがあります。
規制対象となる可能性のある活動
アグリゲーターは、流動性を提供して、ユーザー、ウォレット、スマートコントラクトを接続します。そうすることで、複数のプラットフォームの中で最良の価格でトークンを交換することができます。
他のアグリゲーターは常に最高の利回りを探し、それに従い、供給された資金を分配します。
例としては、以下のようなものがあります。
規制対象となる可能性のある活動
VAULTは、彼らに提供された資金のリターンを自動的に最適化します。そのために、複数のAMMやレンディングプロトコルに接続し、最高のリターンを生み出す場所に資金を移動させます。
AMMやレンディングプロトコルがインセンティブとしてトークンを発行する場合、貯蔵庫は自動的にトークンを売却して再投資します。最も顕著な例としては、yearn.financeが挙げられます。
例としては、以下のようなものがあります。
規制対象となる可能性のある活動
デリバティブプラットフォームは、ユーザーが投機し、又はポジションをヘッジすることを可能にします。効率性とコストの理由から、dydxのような取引所は、オフチェーン/オンチェーンのハイブリッドソリューションを使用しています。プラットフォームのユーザーによって支払われた証拠金がオンチェーンプロトコルによって維持される一方、オーダーブックと注文のマッチングはオフチェーンで実行されます。
ほとんどのデリバティブ取引所が運営しているインフラは、DEXのそれに似ています。
例としては、以下のようなものがあります。
規制対象となる可能性のある活動
免責事項
本文書は、一般的な情報提供のみを目的としています。本書は法律上のアドバイスを構成するものではありませんので、特定の法律上の問題や問題に関して依拠することはできません。本資料に記載されているプロジェクトは、例示目的でのみ使用されています。本資料の形式上、トークンのデザインやビジネスモデルの詳細がすべて考慮されているわけではありませんので、当書による評価結果は、規制当局による評価結果や各プロジェクトのために作成された法律意見とは異なる可能性があります。
以 上