VALUと2号仮想通貨

2017.06.22

国会でも取り上げられた(参議院財政金融委員会平成29年6月18日付質疑、VALUで検索したところで出てきます)ということで、VALUについて少し書いてみます。
VALUは仮想通貨法上の「仮想通貨」に該当するのでしょうか。
これは結論としては、1号仮想通貨には該当しない、他方、2号仮想通貨に該当するかはよく判らない、ただ、現状の仕組み(現状β版)の範囲では当たらないと考えることも充分できる、ということになると思います。

仮想通貨法の仮想通貨の定義

仮想通貨の定義は資金決済に関する法律の2条5項にありますが、2種類の仮想通貨があり、それぞれ以下のように定義されています。

1号仮想通貨の定義
「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」

2号仮想通貨の定義
「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」

考え方: 「不特定」に該当しない?

このうち、1号仮想通貨については、私が見る限り、VALUは現状、提供者のサービスを受ける、という目的にのみ使用され、「不特定の者に対して使用できる」に該当しないので定義に該当しないということになりそうです。

他方、2号仮想通貨については、「①不特定の者を相手方としてBTCとの間で相互に交換できる」「②電子機器に記録された財産的価値」であり、かつ、ネット上で売買できるので「③電子情報処理組織を用いて移転することができる」に該当する、従って、2号仮想通貨に該当するようにもみえます。
ただ、この①について、現在、VALUはあくまでVALUの会員登録をした内部でのみ移転が可能な仕組みのようであり、そのために「不特定多数の者」と交換できるものではない、とVALU運営側は考えているようです。
Ready ForのQ2参照。

仮想通貨の定義の「不特定」の概念について、金融庁は限定的に解釈しているようです。例えば1号仮想通貨の定義の「不特定の者に対する使用」については、発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか」、「発行者が使用可能な店舗を管理していないか」等の要件が課されます(仮想通貨ガイドラインの4頁I-1-1参照。なお、この規定及び通貨建資産の除外の規定により通常の電子マネーは仮想通貨の定義から除外されます。)。

また、2号仮想通貨の「不特定」は、仮想通貨法ガイドラインでは「発行者による制限なく、1号仮想通貨との交換ができるか」、「1号仮想通貨との交換市場が存在するか」等の要件が基準になります。もし、運営側が会員間でのみ売買を認めるとしており、実際にその仕組みが担保されているのであれば、それは「不特定」の間の交換ではない、と考える余地は充分あります。(6月22日(木)午前1時38分追記:他方、誰でも会員登録でき、それで売買できるのだから「それは不特定だ」という考え方もありえます。「不特定」の考え方次第です。ただ、ここで不特定の範囲を狭くしすぎるとそれはそれで他の商品を考えた場合に問題が出る場合も・・・)

VALUの移転の仕組みについて、規約を見るだけではどういった仕組みなのか良く判りません。報道ではブロックチェーン技術を活用しているようですので(TechCrunchさんの記事など)、ブロックチェーン上で発行されブロックチェーン上で移転可能な仕組みなのか、とも想像されますが、他方、VALU利用規約上、「当社は、VALUの発行及び売買を制限し又は取り消し、又は発行済みのVALUを無効とすることができるものとします。」等とありますので、現在は、各種の制限が加えられる仕組みになっているように見えます。

ファンクラブ会員権、株式とかがBTCで売買された場合は?

なお、2号仮想通貨については定義上、仮想通貨の範囲を限定しすぎて脱法的な仮想通貨が発行されないようにするために、広めの定義になっています。そのため、VALUのような商品や各種の新しい商品が出てきた場合、2号仮想通貨に該当するか否かは、検討を要することになります。

例えば、VALUについては、価格がついており移転がされる、という違いがあるだけで、ファンクラブの会員権のようなものにも見えます。ファンクラブの会員権が紙では発行されず、単にコンピュータ上で記録されている、その会員権がオークションサイトでBTCで売買できるようになっている、という場合、ファンクラブ会員権は仮想通貨になるのでしょうか?

また、VALUは株式に類似する、等の説明もされています。
例えば、上場されている株式(無額面株式)をオンライン証券でBTCで売買できるようになった場合(現在、そのようなことは金融庁から認められないと思いますが笑)、当該株式は「仮想通貨」になってしまうのでしょうか。現在の株券は電子化されており紙では発行されていない、また移転もほふりでの移転でなされるので「電子」的になされる、そしてBTCと相互に交換できる、また無額面株式であれば通貨建資産には該当しない、とすれば、2号仮想通貨の定義に該当するようにも見えます。証券会社で口座を開いた人の間でしか売買できないことから「不特定」ではないと考えるか、それともほふりでの移転は「③電子情報処理組織を用いて移転することができる」に該当しないと考えるか・・・・


仮想通貨については「情報通信技術は急速に進展しており、日々、変化するものであることから、仮想通貨の該当性については、その利用形態等に応じて、最終的には個別具体的に判断する」とあり(上述仮想通貨ガイドライン4頁)、個別判断になります。ただ、ブロックチェーン上に各種権利が乗ってきた場合に、どう考えるのか、というのは面白いですね。