仮想通貨ファンドについて

2018.06.01

I 初めに

仮想通貨ビジネスの進展に伴い、近時、「仮想通貨に関するファンド」を設立したいというご相談が増えてきております。

しかしながら、「仮想通貨に関するファンド」(以下「仮想通貨ファンド」)という場合、その内容としては①ファンドの調達手段が Bitcoin や Ether などの仮想通貨である場合、②ファンドの投資対象が仮想通貨である場合(例えば ICO トークンへの投資、アルトコインへの投資、主要コインのアービトラジ取引など)、③投資家の得る権利がトークン化されている場合、など様々な場合があり、それぞれの仕組みに応じて異なった法規制が適用されます。

そこで、以下、それぞれの形態ごとに適用ある規制の概要を検討します。なお、本書では「仮想通貨ファンド」を検討対象としているため、いわゆる通常のファンド(金銭出資×有価証券等の運用)は下記Ⅶ1 を除き検討の対象外とします。

Ⅱ ファンドの調達手段に関する規制

1. ファンド調達手段が金銭(Fiat Currency)の場合の規制

ファンドの調達手段が金銭(Fiat Currency)である場合、その出資を自ら募る行為(自己募集)(金融商品取引法(以下「金商法」)第 2 条第 8 項第 7 号)は、原則として、第二種金融商品取引業(以下「第二種金商業」)(同法第 28 条第 2 項)に該当し、第二種金商業の登録なくして自己募集はできません。これはファンドの調達手段が金銭であり投資対象を仮想通貨とする仮想通貨ファンドの場合も同様です。

ただし、かかる金商法のファンド規制には幾つかの例外が設けられており、例えば①他の第二種金商業者に対して募集の取扱いを全面的に委託する場合や、②適格機関投資家等特例業務(金商法第 63 条)として実施する場合には第二種金商業の登録は不要となります。

このうち②適格機関投資家等特例業務とは、ファンドの出資者の全てが適格機関投資家である場合、又は出資者に1人以上の適格機関投資家と 49 人以下の投資判断能力を有すると見込まれる一定の者が含まれる場合に、金融庁に対する簡単な届出のみでファンド業務を行える、という制度となります。ただし、同制度は平成 27 年度金商法改正で規制が強化されており、例えば同規制強化前は 49 人以下の投資家の範囲が一般の個人投資家でも良かったのに対し、同規制強化後は、投資性金融資産(有価証券等を指し、仮想通貨は入りません)の合計額が 1 億円以上であり、且つ、証券口座開設後1年を経過している者など一定の富裕層に限って投資が認められていることに留意が必要となります(https://www.fsa.go.jp/ordinary/tekikaku_kyouka/index.html 参照)。

2. ファンド調達手段が仮想通貨の場合の規制

これに対して、ファンドの調達手段が Bitcoin や Ether などの仮想通貨である場合、その出資を募る行為について金商法が適用されることは原則としてない、と解されます。

これは、金商法のファンド規制は、出資者が金銭又は類似するものとして政令で定めるものを拠出する場合を規制し、類似するものとしては有価証券、為替手形、約束手形などが上げられているところ、現行法上は、Bitcoin や Ether などの仮想通貨はこれらのいずれにも該当しないためです。

ただし、「脱法的な場合」には規制対象となり得、例えばですが同一主体や関連主体がファンド出資のために Bitcoin を販売し、当該 Bitcoin でファンドへの拠出を受ける等の場合、実質的に金銭の出資を受けているとして規制が適用される場合は考えられます。

Ⅲ ファンド投資対象に関する規制

1. 投資対象が主として有価証券やデリバティブの場合の規制

金商法上、投資対象が主として「有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資」であるファンドについては、その自己運用行為(金商法第 2 条第 8 項第 15 号)につき「投資運用業」の登録が必要となります(金商法第 28 条第4項)。この「主として」とは、基本的に運用財産の 50%超を意味します。

ただし、ファンドの資金調達が仮想通貨で行われている場合、主として有価証券やデリバティブ取引に係る権利を投資対象とする場合でも「次に掲げる権利その他政令で定める権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用」を行っているわけではないため、自己運用行為には該当せず、金商法の適用は原則としてないと解釈されます。

自己運用行為の定義(金商法第 2 条第 8 項第 15 号)
金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、次に掲げる権利その他政令で定める権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うこと(第 12 号及び前号に掲げる行為に該当するものを除く。)。

イ 第 1 項第 14 号に掲げる有価証券又は同項第 17 号に掲げる有価証券(同項第 14 号に掲げる有価証券の性質を有するものに限る。)に表示される権利
ロ 第 2 項第 1 号又は第 2 号に掲げる権利
第 2 項第 5 号又は第 6 号に掲げる権利

2. 投資対象が主として仮想通貨の場合の規制

投資対象が主として仮想通貨の場合、「有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資」を行っているものではないため、自己運用行為(金商法第 2 条第 8 項第 15 号)には該当せず、運用に関して金商法の適用はありません。この結論は、金銭によって資金調達を行っていたか、仮想通貨によって資金調達を行っていたかによって異なるものではありません。

また、仮想通貨の自己運用に相当する行為は、仮想通貨の売買又は交換を行うものですが、投資目的で行う取引であるため一般的には「業」には当たらず、仮想通貨交換業(資金決済法第 2 条第 7 項)には該当せず、資金決済法の適用もないと考えられます。

なお、第三者がファンドから仮想通貨への投資運用行為の委託を受けて行う、いわゆるアセットマネジメント業務については、「業」として行う「仮想通貨の売買」、「交換」又はその「代理」として仮想通貨交換業に該当するか否かは問題となり得ます。しかしながら、 金商法上は有価証券に対する投資一任運用行為は「投資運用業」に該当し、「有価証券の売買」又はその「代理」として第一種金融商品取引業に該当するとは解されていないこととパラレルに考えると、仮想通貨の場合も同様に消極的に解釈されるべきものと考えます。

Ⅳ 投資家の得る権利内容に関する規制

1. 金銭や仮想通貨の配当についての規制の有無

ファンド契約は、一般的には、匿名組合契約や投資事業有限責任組合契約、海外のパートナーシップ契約(以下併せて「組合契約」)を利用して組成され、投資家は、当該組合契約上の権利を有することになります。仮想通貨ファンドでは、①仮想通貨でファンドの出資を募り、その後、金銭での配当や元本償還を行う場合、逆に②金銭でファンドの出資を募り、その後、仮想通貨で配当や元本償還を行う場合、③仮想通貨でファンドの出資を募り、その後、仮想通貨で配当や元本償還を行う場合が想定されます。

なお、これらの行為が仮想通貨の売買や交換等として仮想通貨交換業の登録が必要とならないかも一応は問題となり得ますが、例えば金銭でファンドの出資を募り即座に仮想通貨で元本償還をするような「脱法的」な場合を除き、文言上、仮想通貨の売買でも交換でもなく、資金決済法の適用はない、と解釈して良いのではないかと思われます。

2. トークンが発行・付与される場合の規制

「仮想通貨ファンド」が希望される場合、上記のような組合契約上の権利をトークン化し、ファンドがトークンを投資家に対して発行・付与することを希望されることがあります。

この場合、実質的には、電子的にトークンと呼ばれる証票を発行し、それを販売することによって公衆から資金(金銭又は仮想通貨)調達を行う行為(Initial Coin Offering)に相当するスキームと判断されることがあり得ます。そのように解釈される場合、トークンの発行・付与行為は、仮想通貨の交換等にあたり、仮想通貨交換業に該当するとして、資金決済法の適用を受けます。ただし、当該行為を仮想通貨交換業者に委託する場合には、不要となります。

なお、金商法上の有価証券であるファンドの権利をトークン化し、転々流通とさせる場合、当該流通市場を提供する者について、私設取引システム(PTS)運営業務の認可(金商法第 2 条第 8 項第 10 号、第 30 条第 1 項)が必要となりうることに留意が必要です。

Ⅴ ファンド組成スキームについて

1. 投資対象を仮想通貨とする場合のファンドのスキーム

ファンド契約は一般的には、上述のとおり種々の組合契約を利用して組成され、日本ではPEファンドやベンチャーキャピタルファンド等において、投資事業有限責任組合契約を利用して組成されることが多くみられます。

ただし、投資事業有限責任組合は行うことができる事業内容が法令上定められており(投資事業有限責任組合契約法第 3 条第 1 項)、仮想通貨や ICO トークンの取得及び保有はこれに含まれていません。したがって、投資対象を仮想通貨とする場合には、投資事業有限責任組合を用いることはできず、匿名組合契約を利用することが考えられます(→合同会社と匿名組合を利用する一般的に GK-TK スキームと呼ばれる方式)。

2. トークン化を行う場合のファンドのスキーム

組合契約上の権利をトークン化し、ファンドがトークンを投資家に対して発行・付与する場合(上記Ⅳ2 参照)、単に既存の契約上の権利をトークン化するのみで機能するか検討の必要があるように思われます。

例えば、日本法上の組合契約、匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約の権利をトークン化した場合、組合契約等の対抗要件は確定日付ある通知や承諾、動産債権譲渡特例法の登記等によるところ、トークンの譲渡のみで権利が移転するという仕組みが現実的に機能するか、他方、例えば特に準拠法を指定せず The DAO のようなファンドとして組成することも考えられますが、そのような仕組みの本邦での税務・会計上の取り扱いはどうなるか、など様々な問題点を検討する必要があるように思われます。

Ⅵ まとめ

以上をまとめると下記の表になります。

調達手段主たる運用方法投資家の権利ファンド業規制除外事由
金銭仮想通貨やICO 出資※1トークン化なし第二種金商業他の第二種金商業者に対する募集の委託、適格機関投資家等特例業務
トークン化あり※2第二種金商業なおセカンダリーに関し PTS 認可が必要となりうる。当初の販売に関し他の第二種金商業者に対する募集の委託、適格機関投資家等特例業務。
仮想通貨交換業他の仮想通貨交換業者に対する仮想通貨の販売等の委託
仮想通貨有価証券やデリバティブ取引トークン化なし原則規制なし
トークン化あり※2仮想通貨交換業他の仮想通貨交換業者に対する仮想通貨の販売等の委託
仮想通貨やICO 出資※1トークン化なし原則規制なし
トークン化あり※2仮想通貨交換業他の仮想通貨交換業者に対する仮想通貨の販売等の委託

※1 この場合には投資事業有限責任組合を選択することはできない。
※2 対抗要件など各種スキームの検討が必要

Ⅶ 補足

1. 仮想通貨関連企業・ブロックチェーン関連企業への投資

金銭等による資金調達を行い、主として仮想通貨関連企業・ブロックチェーン関連企業の「株式」に投資するファンドを「仮想通貨関連ファンド」と呼ぶこともありますが、このようなファンドは、主として「有価証券」に投資するファンドとして、本文Ⅱ1 及びⅢ1 の考え方により、その自己募集行為につき原則として第二種金商業が、自己運用行為につき原則として投資運用業の登録が必要となります。

2. 社内ファンド

企業等が自らの資金を仮想通貨関連企業・ブロックチェーン関連企業の株式に投資する「社内ファンド」を立ち上げる場合も「仮想通貨関連ファンドを立ち上げ」等と言われる場合もあるようですが、これらは金商法第 2 条 8 項第 15 号に定める「次に掲げる権利その他政令で定める権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用」には当たらないため、金商法上のファンド規制の適用を受けることはありません。

留保事項

本書は Blog 用に纏めたものに過ぎません。具体的案件に際して法律アドバイスが必要な場合には各人の弁護士にご相談下さい。

本書の内容は関係当局の確認を経たものではなく、想定される各種スキームを踏まえて、法令上、合理的に考えられる議論を記載したものにすぎません。具体的案件に際しては更なる検討が必要となりえます。