日本におけるDAOの組成の可能性

2022.07.25

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1 初めに及び結論

1.1         問題意識

日本でDAOを組成できないか、と尋ねられることがあります。

DAOの定義が不明確であることから、ご質問時点でどういうDAOを組成したいのか曖昧な場合も多く、弁護士からどのようなDAOを想定しているのかお尋ねしても、法律上可能なDAOを組成したい、そのために日本では何が出来るのか教えてくれ、等の曖昧な返答を受ける場合も多いです。

このように整理がなされていない状況ですとDAOの組成が困難であると思われるため、本稿では、日本でDAOを組成する場合に何を検討すればいいのかを整理し、日本法上、組成が可能と思われるDAOを探求することを目的として執筆をしています。

1.2   検討すべき点及び結論

様々なDAOが考えられる前提で、結論として日本でも一定のDAOの組成は可能ですが、それが金融規制を順守できるか、及び、どのような法形式で行うのか、慎重な検討が必要です。

金融規制は、配当や100%以上の元本償還の可能性がある(以下、配当及び100%以上の元本償還を併せて「配当等」といいます。)DAOのトークン販売は、原則として、第一種金融商品取引業者に行わせる、又は自ら第二種金融商品取引業を取得して行う必要があります。

また、配当等のないFungible Tokenを販売する場合には、原則として、暗号資産交換業者に行わせるか、自ら暗号資産交換業を取得する必要があります。

なお、移転に技術的制約を設けたり、販売相手を限定することにより、緩和された規制の適用を受けられる可能性があります(トークンによります)。これらに対し、配当等のないNFTを販売する場合、金融規制は一般的にかかりません。

DAOの法形式は、それぞれの法形式に利点、欠点がありますが、例えば、配当等のあるInvestment DAOで税務上の有利さを追求したいのであれば組合やGK-TKスキーム、特に税務上の有利さを重視しないのであれば権利能力なき社団や一般社団法人、合同会社がトークンを発行するスキームが考えられます。配当等のないFungibleトークンやNFTの発行の場合、特に法人格を持たないことで良いかもしれません。

1.3         結論の参考表

以下、法的スキームや、金融規制について、検討すべきと思われる点と、それに対する結論を纏めた表となります。

配当等のあるInvestment DAO(=配当や100%以上の元本償還がある想定)のトークン販売には下記の規制が適用されます。

  日本法上の形態 トークンの無償配布 トークンの販売 投資運用
合同会社、株式会社の社員権のDAO 合同会社の社員権のトークン化など 社員権トークンの無償配布は、会社法などで不可 発行者のための販売の代行は第1種金商業。自己募集は合同会社の場合、第2種金商業、株式会社の場合は規制なし。

50名以上勧誘の場合、有価証券届出書の提出等

規制なし

社員権以外の権利のDAO(配当あり) TK出資、組合出資、所定の法形式に分類困難な権利のトークン化など 規制なし 発行者のための販売の代行は第1種金商業。自己募集は第2種金商業。

50名以上勧誘の場合、有価証券届出書の提出等

規制なし

(有価証券投資の場合には投資運用業の可能性)

他方、配当等のないDAOも考えられますが、その規制は以下となります。

  トークンの無償配布 トークンの販売 投資運用(配当なし前提)
ユーティリティートークン 規制なし 暗号資産交換業 規制なし
NFT 規制なし 規制なし 規制なし

DAOに考え得る法形式に関しては、以下の比較ができると考えられます。

  法形式 有限責任性 配当可能か 二重課税回避 その他、総合評価

法人格なし

権利能力なき社団+権利性の良く判らないトークン 〇? × △~〇 自由度が高い。二重課税の点さえ問題なければ良いスキーム。
民法上の組合+組合持分トークン × △~〇 自由度が高い。有限責任性の点さえ問題なければ良いスキーム。
投資事業有限責任組合+組合持分トークン × 他の点は良いものの、NFTの購入が不可等、投資先や事業に制約。通常DAOでは使いにくい。
有限責任事業組合+組合持分トークン × 他の点は良いものの、組合員の名義の登記が必要である等、DAOでは使いにくい。
法人格あり 法人(*1)+匿名組合(例:TK-GKスキーム)のトークン化 △ 会社法や一般社団法に従った運営が必要。TK保有者には指図権がない等の点に留意が必要。二重課税がない、有限責任である点は良い。
法人(*1)+権利性の良く判らないトークン 〇? × △~〇 会社法や一般社団法に従った運営が必要。それ以外の自由度高く、二重課税の問題を気にしなければ良いスキーム。
法人(*1)+社員権(*2)のトークン化 〇(一般社団法人は×) × × 会社法や一般社団法に従った運営、社員としての管理が必要で、自由度低いか。

*1 法人としては合同会社、株式会社、一般社団法人など。株式会社より合同会社のほうが一般的に設立と運用が簡便。より公益的なイメージを持たせたい場合には一般社団法人を利用
*2  合同会社の社員権、株式会社の株式、一般社団法人の社員権

2 DAOについて

2.1         DAOとは何か?

DAOとは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、分散型自律組織等と呼ばれます。

特徴としては、特定の管理者が存在せず、メンバーが共同にて所有運用を行う組織のことを指します。

多くのプロジェクトでは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトと呼ばれる仕組みを利用し、スマートコントラクトで記載した事柄は自動的に実行されるようにします。また、ガバナンストークンと呼ばれるトークンを発行し、そのスマートコントラクトを変更したりするなどの重要な事項については、トークンホルダーの投票がない限り行えない仕組みになっています。

2.2         DAOの分類

Hideto@VancouBoysさんの2021年8月26日付Twitterが良く纏まっていたので、それを転載させて頂くと、DAOは下記のような分類になります。

①   Investment DAO
プロジェクトへの共同出資を目的とした営利目的DAO。「経済資本」を中心に利益を生むことを目的とされるためGrant DAOと比較すると資金が集まりやすい。
例)Genesis DAO, The LAO, BitDAO
 
②   Grant DAO
最初のユースケースとして正式稼働したのはGrant DAO。寄付された資金の使途をガバナンスを通じて決定する仕組み。「社会資本」を中心にメンバーが集まる傾向。
例)MolochDAO, MetaCarteDAO, Uniswap Grants
 
③   Protocol DAO
DeFi Protocol群を中心に発展しているDAO。コアチームからコミュニティにProtocolの権利を徐々に移行させ将来的にコミュニティ主導で自律的に運営されることを目指す。
例)Maker, Compound, Uniswap, Aave, Yearn, Sushi
 
④    Service DAO
分散型ワーキンググループ。プロジェクトを遂行すると対価としてトークンをもらえる。
例)RAID GUILD, DXdao, PartyDAO
 
・Social DAO
Grant DAOの社会資本中心の性格を抽出したDAO。メンバー間で価値観を共有するソーシャルネットワークのようなもの。
例)Friends With Benefits(FWB)
 
①   Collector DAO
何か(多くの場合NFT)を収集するために結成したDAO。
例)PleasrDAO
 
②   Media DAO
ニュースレターなどのコンテンツを提供するメディアをDAO化したプロジェクト群。
例)Fore Front(FF), Bankless DAO
Hideto@VancouBoys氏twitter
(https://twitter.com/VancouBoys/status/1430687658104168451以下)から引用

2.3         DAOの事例

以下では現在あるDAOの事例を幾例かご紹介します。

3 海外のDAO法(Wyoming州のDAO法)

①          Flamingo DAO
NFTへの投資、共同所有を目的とするInvestment DAO。NFTへの投資、売却により収益を得る。また、保有するNFTを貸し出したり、デジタルアートギャラリーに展示したり、他のDeFiプラットフォームの担保として利用する等で収益を得ることがある。
 
Flamingoは米国法上の証券に該当する可能性があるため、投資家は米国法上の適格機関投資家で100名以内とされている。
Flamingoのトークンホルダーは、1トークンあたり1票の権利を有し、また配当を受領する権限を有する。
 
Flamingoは、MolochDAOのスマートコントラクトのv2を使用し、スマートコントラクトは以下を管理している。
・メンバーのFlamingoに対する出資を集める
・投票
・投票の第三者への委任
・投資
・収益の分配
・rage quittingと呼ばれるメンバーの脱退
その他詳細はFLAMINGOの公式ウェブサイト(https://flamingodao.xyz/)をご参照下さい。

②  BitDAO
BitDAO はシンガポールの仮想通貨取引所「ByBit」が全面的にサポートする DAO。
BitDAO は、DeFi や NFT に関するプロジェクトに資金提供・流動性の供給をするInvestment DAOであり、独自トークンのBITを発行。BITは、イーサリアム基盤上に構築されたERC-20トークン。
ガバナンストークンとしての役割があり、BIT所有者は、BitDAOの出資先や出資額の決定に関与可能なほか、保有量に応じて利益の分配も受けられる。
 
③          ConstitutionDAO
ConstitutionDAOは、アメリカ合衆国憲法の原本をオークションで落札するためのクラウドファンディングとして立ち上がったDAOプロジェクト。
2021年11月に実施された原本のオークションでは敗れたものの、1週間で4700万ドルもの資金調達に成功。独自通貨peopleを発行し、ガバナンストークンとして使用する予定であった。
敗北後、返金を行い、今は活動を中止しているよう。
 
④  山古志村DAO
人口800人の限界集落が、デジタルアート×電子住民票として、NFTを発行するDAO。
錦鯉をシンボルにしたデジタルアートのNFTが電子住民票を兼ねている。
 
NFTセールによる調達資金により、山古志地域に必要なプロジェクトや課題解決を独自財源で押し進める。例えば、山古志地域をフィールドに世界中の子どもや大人がアクセスできる教育プログラムの立ち上げ、大小さまざまな地域課題を解決するためのファンドの設立、空き家や遊休施設を活用したスタートアップの誘致など。同時に、山古志地域を存続させるためのアイデアや事業プランをリアルタイムで、NFTホルダーであるデジタル住民専用のコミュニティチャット内(Discordを使用)で展開し、メンバーからの意見の集約、投票などで行う。
 
以上は、山古志住民会議のNote(https://note.com/yamakoshi1023/n/n1ae0039aa8a4)を参考に記載。

海外でも、DAOに対する法律の適用は明確ではありません。一つの例として、Wyoming州では、2021年にDAOを法人として認める法律を制定しています。

概要
・DAOは、ワイオミング州の有限責任会社(LLC)として登記可能。
・DAOのメンバーはDAOの債務に関して有限責任。
・法人課税を選択しなければパススルー課税。
・ワイオミング州でDAOを設立する場合、その定款には自律分散型組織であることを示す文言や略語である「DAO」、「LAO」、「DAO LLC」などを含めなければならない。
・DAOの管理は定款および運営契約に別段の定めがなく、アルゴリズムが管理する場合はスマートコントラクトに帰属する。
・DAOは1人以上のメンバーを有するDAOを組織の定款の原本1部と正本または合本1部に署名し、州務長官に提出することによって結成できる。
・DAOを結成した者が、組織のメンバーである必要はない。DAOを結成した者はDAOの登録代理人としての役割を果たすことになる。
・DAO結成の条件として、その組織基盤となるスマートコントラクトが更新、修正、その他のアップグレードができなければならない。さらに定款には、DAOの管理、促進、運営に直接使用されるスマートコントラクトの識別子を含める必要がある。
・定款に記載されるスマートコントラクトには「メンバー間およびメンバーと自律分散型組織との関係、メンバーとしての資格を有する者の権利および義務、DAOの活動とその遂行、運営規約の変更の手段と条件、メンバーの議決権等の権利、メンバーの権利の譲渡性、メンバーシップの脱退、解散前のメンバーへの分配、組織規定の改正、適用されるスマートコントラクトの修正、更新、編集または変更の手順、その他、DAOに関するすべての事項」に関する規定がされていなければらならない。
・DAO法案は、設立時に定義したスマートコントラクトに変更が生じる場合に、合わせて定款を変更する必要がある点が特徴。
 
以上は、あたらしい経済社の記事「米ワイオミング州の「DAO法」、7月に施行へ」(https://www.neweconomy.jp/posts/112086)を参考に記載

なお、Wyoming州のDAO法はあくまで法形式に関する法律であり、販売時の金融規制は別途かかると思われる点に留意が必要です。

4 DAOに対する金融規制

4.1         初めに

配当等のあるInvestment DAO(=配当や100%以上の元本償還がある想定)のトークン販売には下記の規制が適用されます。

  日本法上の形態 トークンの無償配布 トークンの販売 投資運用
合同会社、株式会社の社員権のDAO 合同会社の社員権のトークン化など 社員権トークンの無償配布は、会社法などで不可 発行者のための販売の代行は第1種金商業。自己募集は合同会社の場合、第2種金商業、株式会社の場合は規制なし。

50名以上勧誘の場合、有価証券届出書の提出等

規制なし
社員権以外の権利のDAO(配当あり) TK出資、組合出資、所定の法形式に分類困難な権利のトークン化など 規制なし 発行者のための販売の代行は第1種金商業。自己募集は第2種金商業。

50名以上勧誘の場合、有価証券届出書の提出等

規制なし

(有価証券投資の場合には投資運用業の可能性)

他方、配当等のないDAOも考えられますが、その規制は以下となります。

  トークンの無償配布 トークンの販売 投資運用(配当なし前提)
ユーティリティートークン 規制なし 暗号資産交換業 規制なし
NFT 規制なし 規制なし 規制なし

以下、解説します。

4.2         ファンド類似権利のトークン化のDAOと金商業の登録規制

合同会社や株式会社の社員権以外の権利のトークン化で、金銭や暗号資産の出資、投資運用、配当又は100%以上の元本償還がある場合、日本法上は広く集団投資スキーム(=ファンド)と見られると思われます。集団投資スキームは、典型的には組合契約、匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約などのファンドを規制する概念ですが、金商法2条2項5号、6号は集団投資スキームの範囲を「その他の権利」と広く定義しているためです。

集団投資スキームの定義の概要
以下の①~④を満たす権利
① 民法第667条第1項に規定する組合契約、商法第535条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律第3条第1項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権、その他の権利
② 当該権利を有する者(「出資者」)が出資又は拠出をした金銭(暗号資産を含む)を充てて行う事業(「出資対象事業」)が存在
③ 出資者が出資対象事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる
④ 出資者全員が常時業務に関与する等の例外事由にあたらない

そして、2020年5月1日施行の改正金商法により、電子記録移転権利という法概念が創設され、トークン化された集団投資スキームの権利は、通常、この電子記録移転権利に該当します。

電子記録移転権利の定義の概要
以下の①~③を満たし、④を除く権利(金商法第2条第3項)
① 金商法第2条第2項各号に掲げる権利(ファンド、信託受益権、合名・合資・合同会社の社員権等)
② 電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合
③ 電子機器その他の物に電子的方法により記録される場合
④ 流通性その他の事情を勘案して内閣府令に定める場合

この電子記録移転権利の販売には、第一種金商業の登録が必要であり、また、50名以上に勧誘する場合、公募となり(金商法2条3項)、有価証券届出書の提出が必要となります(金商法5条)。

なお、例えば適格機関投資家や49名以下の富裕層にのみ販売を限定し、かつ、転売があっても、それ以外の者がDAOトークンホルダーになれないように技術的に制約されている場合、自己募集は63条届出という簡易な届出で足ります。

Investment DAOの組成の際には当初はそのような限定された形で販売する等し、大きくなった後に、規制を順守しつつ、一般公衆に販売していくことは考えられるのではと思われます。

4.3         社員権のトークン化のInvestment DAOと金商業登録規制

これに対して、社員権のトークン化(電子記録移転権利)の場合、合同会社の社員権であれば他者による募集に一種金商業が自己募集には二種金商業が、株式会社の株主権のトークン化であれば他者による募集に一種金商業が課されます。株式会社の株主権のトークン化の自己募集には業規制はかけられません。

4.4         公募等に関する規制

公募等になる場合、別途、有価証券届出書の提出が必要となる場合があります。以下のいずれかに該当する場合は、公募として、原則としてファンド類似権利や社員権をトークン化した電子記録移転権利の発行につき有価証券届出書の提出が必要になります。

(i)  50名以上の者(転売制限等を行った場合の適格機関投資家を除く)を相手方として有価証券の取得勧誘を行う場合
(ii) 適格機関投資家私募、特定投資家私募および少人数私募のいずれにも該当しない場合

適格機関投資家私募とは、適格機関投資家のみを相手方として行い、適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ない場合として一定の要件を満たした取得勧誘を意味し(金商法2条3項2号イ)、また、特定投資家私募とは、特定投資家の身を相手方として行い、特定投資家以外に譲渡されるおそれが少ない場合として一定の要件を満たした取得勧誘を意味し(同号ロ)、少人数私募とは、50名未満の者を相手方として、多数の者に所有されるおそれが少ない取得勧誘を意味します(同号ハ)。

4.5         配当のないDAOに対する金融規制

配当等のないDAOも考えれますが、その規制は以下となります。

  トークンの無償配布 トークンの販売 投資運用(配当なし前提)
ユーティリティートークン 規制なし 暗号資産交換業 規制なし
NFT 規制なし 規制なし 規制なし

なお、ユーティリティートークンの販売に関し、暗号資産交換業の規制には、有価証券の販売の場合と異なりプロ向け販売の例外などがないのですが、例えば、「業」と見られない範囲の関係者に対してのみ販売を行い、かつ一般公衆には無償配布を行いつつ、事業が大きくなった後には暗号資産交換業者と組んだ上で上場を行う、ということは考えられると思われます。

5 DAOを日本で組成する場合の法形式

5.1         初めに

日本でDAOを組成する場合、法形式を明確化して、民法上の組合、投資事業有限責任組合、合同会社+匿名組合、などで、組成する場合と、特に明確化せず、いずれの法形式かよく判らない団体が権利性の良く判らないトークンを出している、という形にすることの両者が考えられます。

法形式を明確化しない場合、日本では一般には「権利能力なき社団」が「権利性が良く判らないトークン」を出しているという取扱いになると思われます。この場合、二重課税が排除できないことや、法的安定性が若干欠ける等のデメリットがありますが、法形式に縛られず自由である、というメリットがあります。

他方、法形式を明確化した場合、各々の法形式に応じて、二重課税が排除される等のメリットがありますが、法令に従った運営をしないといけない等、自由度が減るデメリットがあります。

以下で考えられる考慮要素を検討します。

法形式比較

  法形式 有限責任性 配当可能か 二重課税回避 その他、総合評価

法人格なし

権利能力なき社団+権利性の良く判らないトークン 〇? × △~〇 自由度が高い。二重課税の点さえ問題なければ良いスキーム。
民法上の組合+組合持分トークン × △~〇 自由度が高い。有限責任性の点さえ問題なければ良いスキーム。
投資事業有限責任組合+組合持分トークン × 他の点は良いものの、NFTの購入が不可等、投資先や事業に制約。通常DAOでは使いにくい。
有限責任事業組合+組合持分トークン × 他の点は良いものの、組合員の名義の登記が必要である等、DAOでは使いにくい。
法人格あり 法人(*1)+匿名組合(例:TK-GKスキーム)のトークン化 △ 会社法や一般社団法に従った運営が必要。TK保有者には指図権がない等の点に留意が必要。二重課税がない、有限責任である点は良い。
法人(*1)+権利性の良く判らないトークン 〇? × △~〇 会社法や一般社団法に従った運営が必要。それ以外の自由度高く、二重課税の問題を気にしなければ良いスキーム。
法人(*1)+社員権(*2)のトークン化 〇(一般社団法人は×) × × 会社法や一般社団法に従った運営、社員としての管理が必要で、自由度低いか。

*1 法人としては合同会社、株式会社、一般社団法人など。株式会社より合同会社のほうが一般的に設立と運用が簡便。より公益的なイメージを持たせたい場合には一般社団法人を利用
*2  合同会社の社員権、株式会社の株式、一般社団法人の社員権

5.2         法人格の有無

DAO化を徹底したい場合には法人格のない形式にすることが考えられます。単にトークン等に投資をする場合や、スマートコントラクトで全てが完結する場合、特に法人格を持つ必要はありません。

法人格を有する場合、当該法人の設立根拠法に従って運営をしなければならない、取締役や理事等が存在し中央集権的である、という制約はありますが、例えば、トークンホルダーに一定の投票権を持たせ、その投票に従って取締役等が行動する、と約束することで、相当程度のDAO類似性は達成できると思われます。

DAOの設立当初はいずれにせよ中央集権的な部分が必要と思われるため、当初は法人を設立し、後日、軌道に乗った後に法人格を失くしていくスキームも考えられます。

5.3    DAOトークンホルダーの有限責任性

出資者が出資した金額以上の責任を負わないこと、これを有限責任と言います。

DAOの目的が単にNFT投資等の場合、仮にDAOトークンホルダーの有限責任性が確保されていなくても大きな問題はないとも考えられますが、やはり有限責任性は確保した方が良いと思われます。そのような観点からは、例えば民法上の組合は有限責任性が確保されず、避けるべきと思われます。

他方、株式会社の株主、合同会社の社員、一般社団法人の社員、匿名組合契約の出資者などは、極めて例外的な場合を除き、有限責任です。

なお、多くのトークン発行事例では、そもそもトークンがどのような性質を持つのか不明確であり、それを会社が発行したり、財団が発行したり等します。このような「よく判らないトークン」のトークンホルダーが有限責任であるかは不明確な点もありますが、例えば投票権がある等のみの場合、基本的には有限責任と考えて良いのではと思われます。

5.4    配当可能か

トークンホルダーに配当等を行いたいか否かで選択できるスキームが異なります。例えば一般社団法人+社員権トークン化の場合、法令上、配当は行えません(一般社団法11条2項)。

なお、法形式上配当が可能であったとしても、配当は義務ではなく、約束で配当は行わないとすることも考えられます。配当を行うか否かで、前述4の金融規制の適用が変わってくるため、その点の留意が必要です。

5.5         二重課税の排除(Tax Transparent)

Investment DAOの場合、税務上、法人段階で課税され、配当があった場合に当該配当に対して構成員レベルでも課税される(二重課税、not tax transparent)のか、法人段階では課税されず構成員レベルで課税されるのか(二重課税なし、tax transparent)は重要な考慮要素になります。

二重課税を避けたい場合、民法上の組合や匿名組合など、法令上、明確に税務の処理が規定されている法形式を使用することが必要と思われますが、このような法形式には例えば民法上の組合には無限責任性、匿名組合には指図権の問題などがあり、留意が必要です。

5.6 DAOとしての自由度、適格性

例えば、ファンドで多く使用される投資事業有限責任組合は、法令上、投資先が限定されており(投有責法3条1項)、NFT等への投資ができません。勿論、債権等に投資するInvestment DAOであれば投資事業有限責任組合の採用も考えられますが、一般のDAOには使用しにくいと思われます。

また、匿名組合契約の場合、匿名組合員には経営への監視権はあるのですが(商法539条)業務執行権はなく(同法536条3項)、かつ、業務執行を行っていると見られると、匿名組合性が失われる(民法上の組合等と見られる)可能性がある点、留意が必要です。

5.7 トークン移転と対抗要件

日本法上、債権の移転を第三者に対抗するには原則として「確定日付のある証書による通知又は承諾」が必要とされています(民法467条2項)。例えば、債権者Aが債務者に対する債権を有し、Aが当該債権をBとCとに二重に譲渡した場合、このBとCのどちらが勝つかを「確定日付のある証書(内容証明郵便や公証人の確定日付印のある文書)による通知又は承諾」で決めよう、という発想になります。また、Cが差押債権者やAの倒産管財人である場合も、同様に対抗要件が問題となります。

トークンの移転の際に、確定日付ある通知又は承諾を得ることは、実務上、行われていません。法令上、債権であるか明確ではない場合、許容可能なリスクと思われますが、何らかの債権をトークン化したということを明確化した場合、移転に確定日付がないことのリスクが発生する可能性があります。その意味ではよく判らないトークンの譲渡の方がリスクが低い可能性はあります。とはいえ、トークンの譲渡に伴い、権利が譲渡されるのではなくAが元の契約から脱退をし、Bが債務者との間で元の契約と同一の契約をしたという構成にすることにより対抗要件問題は解決できる可能性があり1、債権譲渡に関しては、対抗要件問題は決定的な要素ではないと思われます。

この他、株式会社の株主権のトークン化については、株主の地位の移転の対抗要件は株主名簿の記載であり(会社法136条)、トークン化の場合もこの点は変わらないと思われる等、各種権利の移転についての対抗要件、効力要件は、トークン化に際して、検討することが必要です。

留保事項
・DAOについてはそもそも明確な定義もなく、これまで本邦で法的に分析された資料等もないため、法令上、合理的に考えられる当職らの現状の見解を整理したものに過ぎません。
・DAOに関する法制度の整備や関係当局の解釈、その他議論の状況等を踏まえ、本稿の内容について当職らの考えにも変更がありえます。
・本稿の内容につき関係当局の確認を経たものではなく、関係当局が異なる判断を行う可能性があります。
・海外の法令や国内外のDAO事例は、各社のホームページ、ニュース記事、各種Blog等を参考に記載したものであり、内容の正確性は保証できません。
・本稿は、DAOの利用を推奨するものではありません。
・本稿は議論用に纏めたものに過ぎません。具体的案件の法律アドバイスが必要な場合には各人の弁護士等にご相談下さい。

脚注

  1.  2019年1月1日増島雅和「「トークン化の実相についての詩論(5)-動産のトークン化」https://note.com/masamasujima1976/n/ne217e949e408 もご参照下さい。