2016年8月2日付でハッキングを受けたとされるBitfinexが損失補てんのためにユーザーにトークンを発行するというにつき、幾つかの場所で聞かれたので自分の備忘用です。
(事実関係)
① 各種報道によるとBitfinexは8月2日にハッキング攻撃(とされるもの)を受け119,756 BTC(約6,600万ドル)の損失
② 同社の公式アナウンスではSecurity breach/theft等と表明されているが、詳しい原因や損失は現時点ではアナウンスされていない
③ 同社は8月6日付でカスタマー全員に36.067%の損失を負担させることを決定
④ 損失分をBFXと呼ぶトークンを発行。1BFX=1ドルで計算。当該トークンはBitfinexによって償還されるか、取引所Bitfinexの運営会社であるiFinex Incの株式と交換されるまで存続
(現時点での感想)
① 1BFX=1ドルと述べているが当該価格で実際に取引されるかは不明(詳細は発表されていないが難しいのでは)
② 預託の金銭・預託BTCともに36%強制的にカット。カスタマーが取引所に返還を求めても強制的にカットされた限度でしか受け付けないということだと思われるが、カスタマーがBitfinexを訴えた場合に同社が勝てるかは不明(日本の弁護士の感覚としては厳しい印象。但しBVI法等不明)
③ 準拠法も管轄もBVIであることから時間稼ぎをしながら取引所を継続させることも考えられるが、大口の債権者に敗訴した時点で取引所の存続が厳しくなる
④ またカット後の金額で大量流出の可能性
⑤ 潜在的投資家と出資を話しているとのことである。同社の現時点でのEquityがどの程度あるのかは調べていないが、数十億円の債務超過(潜在的な債務超過?)が存在している取引所に出資をすることは通常の感覚では困難
⑥ Good CompanyとBad Companyを分け、Good Companyに出資を受けることも考えられるが、(日本法だと)詐害行為取消、否認等の問題。BVI法だとどうか?
⑦ コミュニティーの中にはMtGoxとの比較から、倒産ではなく株やTokenで帰ってくるのであれば望ましいという意見もあるように見受けられる。全債権者がTokenに合意していれば良いが、大口債権者がToken処理に反対すれば上記③のようなリスクある。また反対する小口債権者が集団で訴えてくる可能性も
⑧ 仮にスポンサーが発見できたとしても、常識的には私的整理ではなく法的再生手続きを経た上で再生を行う事案ではないか(例えばGood Company、Bad Company方式のプレパッケージ型)。但し、BVI法、香港法、米国法など各国の法律が関係し、債権者も多数国に多数存在すると思われる中で法的再生手続がワークするかも予断を許さない印象。
添付のPDFファイルで同社のアナウンスメントや規約等を紹介しています。Bitfinex関係備忘ノート160809