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Curvegridについて

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創・佐藤法律事務所について

創・佐藤法律事務所はブロックチェーンと暗号資産に関する法的助言を専門とする法律事務所です。当事務所の弁護士は、バイリンガルであり、アメリカ、シンガポール、日本の大手法律事務所と長年にわたり仕事をしてきました。 2015年の設立以来、ブロックチェーンとフィンテックの最前線に立ってリーガルアドバイスを提供しています。2020年、代表弁護士の斎藤創は、Chambers Asia Pacificにより日本におけるFinTech弁護士として、またBest Lawyers rankingsにおいても日本のFinTech、金融機関規制分野の弁護士としてランクインしました。長年の金融分野での経験と新しい技術への深い理解により、変わり続ける法規制環境の中で、お客様のために革新的なソリューションを提供しています。

9月9日に開催した「フィンテックエンジニア養成勉強会#10」の動画です。

以下、セミナーで使用した「DEFIと日本法」
の資料となります。

DeFi Japanese_law_200909 from So Saito

丸の内支店設立のお知らせ

今般の世界規模での新型コロナウイルスの感染拡大が、皆さまの日々の生活に大きな影響を与えている状況が長く続いており、一日も早い終息を心より願うばかりでございます。

さて、このたび弊事務所は、現在の赤坂オフィスに加え、支店として丸の内オフィスを設置することとなりました。

丸の内オフィスの連絡先は以下のとおりです。

創・佐藤法律事務所 丸の内オフィス※
新住所 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル9階937区


電話 03-6275-6080
FAX 03-6275-6081

※創・佐藤法律事務所丸の内オフィスは、創・佐藤法律事務所を主たる事務所とする弁護士法人創・佐藤法律事務所の支店となります。

なお、赤坂オフィスの連絡先に変更はございません。

これを機にさらに業務の充実を図り、皆様のご期待に添えますよう、所員一同、一層の努力を重ねてまいる所存です。今後とも倍旧のご支援ご指導を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

New Office in Marunouchi

We are pleased to announce that business is going so well that on August 3rd, we are opening a new office in Marunouchi, Tokyo, a central financial city of Japan, in addition to our current Akasaka office.

The address and telephone number of our Marunouchi office are as follows:

937 Shin-Kokusai Building, 3-4-1, Marunouchi
Chiyoda-ku, Tokyo, 100-0005 Japan

Tel : +81-3- 6275-6080
Fax : +81-3-6275-6081

Until August 16, please contact us at 81-3-5545-1830, our original phone.

Sorry for the inconvenience.

In this unprecedented situation due to covid-19, the most important thing is to make sure we conduct business in a safe environment. We are carefully monitoring the situation and will continue to follow guidance from the government authorities regarding further developments.

We are looking forward to assisting you in your M&A, private equity, and corporate transactions and are going to work with you online and offline from our new location in accordance with the social distancing rules in place.

Please feel free to contact us with any questions.

We look forward to seeing you.

ファンドの種類金商法における有価証券の種類公募における金商業登録の要否開示規制
自己募集募集の取扱い
法人投資法人(国内)1項有価証券実施不可第一種金商業運用資産の50%超を有価証券に対する投資に充てるファンドの場合、開示規制の対象(なお、私募の場合は開示規制の対象外)
投資法人(海外)1項有価証券実施不可第一種金商業
株式会社1項有価証券登録不要第一種金商業
合同会社2項有価証券登録不要第二種金商業
信託投資信託(国内)1項有価証券 第二種金商業第一種金商業
投資信託(海外)1項有価証券第二種金商業第一種金商業
組合民法に基づく任意組合2項有価証券第二種金第二種金
商法に基づく匿名組合2項有価証券第二種金商業第二種金商業
投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合2項有価証券第二種金商業第二種金商業
有限責任事業組合契約に関する法律に基づく有限責任事業組合2項有価証券第二種金商業第二種金商業

ファンド持分が適格機関投資家等(全てが適格機関投資家である場合又は出資者に1名以上の適格機関投資家と適格機関投資家以外の者で政令で定めるもの(特例業務対象投資家)が49人以下の場合)にのみ提供されている場合、ファンドは金融商品取引業者としての登録をする必要はなく、より簡易な手続である適格機関投資家等特例業務の届出を金融庁に行うことで足ります(いわゆる63条特例)。この制度は自己私募と自己運用の場合にのみ利用することができます。そのため、ファンド持分の私募の取扱いをする事業者は、当該制度の対象外であり、第二種金融商品取引事業者として登録する必要があります。

組合型ファンドに関する規制と63条特例の詳細については、日本のファンド規制に関する当事務所の記事をご覧ください。

I はじめに

一般に「ファンド」とは、運用の専門家が複数の出資者から出資を募り、その出資金を用いて投資を行い、投資によって生じた利益を出資者に分配する仕組みをいう。

日本ではファンドに利用可能な法形態として、主に「信託」「会社(法人)」「組合」の3つがある。投資信託は「信託」、JREITは投資法人という「会社(法人)」が使用される一方、少人数の投資家を対象とするベンチャーファンドやPEファンドは「組合」形式が利用されることが殆どである。

本稿では、組合型のファンド(いわゆる集団的投資スキーム)に関する法制度の概要について述べ、更に、2020年5月1日に施行された令和元年改正金融商品取引法の内容を踏まえた暗号資産(仮想通貨)[1]に関するファンドへの法規制の影響についても触れる。

なお、集団投資スキームの投資対象は、有価証券の他、不動産、貴金属・原油等のコモディティー等様々であり、投資対象やスキームにより不動産特定共同事業法や、商品投資に係る事業の規制に関する法律(いわゆる商品ファンド法)などの規制が適用されることもありうるが、本稿では主として有価証券や暗号資産に投資するファンドについて検討する。

II ファンドに関する日本法上の規制

1. 投資ビークルについて

組合型ファンドは、上述の通り一般に少人数の投資家を募る場合に多く用いられており、日本法に基づく組合型ファンドとしては、民法上の組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合、有限責任事業組合契約に基づく有限責任事業組合が投資ビークルとして用いられている。外国投資家の割合(パススルーの有無)、また後述する外国法人の発行する株式等の外国への投資割合においては、英国領ケイマン諸島籍のリミテッドパートナーシップをはじめとした外国籍の組合型ファンドが用いられるが、それについては別の機会に譲ることとする。それぞれの特徴を以下に述べる。

(1) 民法上の組合

民法上の組合は、民法667条に基づき組成される。ファンドとして用いる場合には、組合員の一部を業務執行組合員として業務執行を専属させ(民法670条2項)、その他の者は非業務執行組合員として業務執行を行わせない形とするのが通常である。

投資先について制限はないが、業務執行を行わない組合員を含め組合員全員が無限責任を負うことになる。また、組合内部で各組合員の負担割合を定めることはできるが、これを対外的に主張できない。

(2) 匿名組合

匿名組合契約は、商法535条に基づく契約であり、投資家である匿名組合員と事業主体である営業者との間の1対1の契約である。そのため、「匿名組合」という団体を生じさせるものではない。対外的には、営業者が自己の名で事業を行い、その効果は営業者に帰属し、匿名組合員には帰属しない(商法536条4項)。匿名組合員は、営業者への出資義務を負い営業者から利益の分配を受ける権利を有することになる。匿名組合契約上、匿名組合員は出資の価額を超えて損益の配分を受けない形とされる場合には、匿名組合員の責任は有限責任といえる。なお、営業者による投資先について制限はない。

各匿名組合契約は1対1の契約であることから、営業者は各匿名組合員と個別に契約を締結する必要がある。

(3) 投資事業有限責任組合

投資事業有限責任組合は、投資事業有限責任組合法に基づく組合である(投資事業有限責任組合法2条2項)。投資事業有限責任組合は、無限責任組合員と有限責任組合員から構成される。無限責任組合員が業務執行をし、組合の債務の全部につき無限責任を負う一方、有限責任組合員は業務執行権限を有さず、組合の債務につき出資の価額を限度として弁済する有限責任を負う(同法7条1項、9条1項及び2項)。

投資事業有限責任組合は、その投資可能な対象が限定されており(同法3条1項)、例えば、外国法人の発行する有価証券に対する投資は50%未満に制限されるなどの規制がある。

(4) 有限責任事業組合

有限責任事業組合は、有限責任事業組合契約に関する法律に基づく組合である(有限責任事業組合法2条)。有限責任事業組合の組合員は、全員がその出資の価額を限度として、組合の債務を弁済する責任を負う(有限責任事業組合法15条)。

組合の業務執行を決定するには、原則として総組合員の同意が必要となり、重要な財産の処分及び譲受け並びに多額の借財について総組合員の同意を要する点については契約での排除が制限されている(同法12条)など、全組合員が一定程度主体的にその運用に関与する必要がある。投資対象として特段制限は設けられていないが、投資ビークル自体にLLPが用いられることは多くない(LPSの無限責任組合員としてLLPが用いられることはある)。

(表1 日本の組合型ファンドの概要まとめ)

 民法上の組合匿名組合投資事業有限責任組合有限責任事業組合
構成員無限責任の組合員無限責任の営業者と有限責任の匿名組合員(*1)無限責任組合員と有限責任組合員有限責任組合員
契約形態組合員全員を当事者とする契約営業者と匿名組合の2者間契約組合員全員を当事者とする契約組合員全員を当事者とする契約
登記の要否不要不要
組合財産の帰属総組合員の合有営業者総組合員の合有総組合員の合有
業務執行総組合員 但し、組合契約で業務執行者を定めることができる営業者無限責任組合員総組合員 但し、組合の業務執行の一部を特定の組合員に委任できる
事業の範囲制限なし制限なし株式、各種債券、金銭債権、匿名組合契約の出資持分等の取得・保有など投資事業有限責任組合法3条1項に掲げるものに限る。 外国法人の有価証券は50%未満。暗号資産への投資は不可次の業務以外は制限なし ①性質上組合員の責任の限度を出資の価額とすることが適当でない専門家の業務 ②組合の債権者に不当な損害を与えるおそれがある業務

2. ファンド持分の金商法上の有価証券該当性

このような組合型ファンドが以下の①~③の要件を充たす場合には、その持分は原則として有価証券に該当し(金商法2条2項5号、金商令1条の3)[2]、当該持分の取得勧誘(募集・私募)や出資を受けた金銭の運用につき、金商法上の各種規制がかかる(開示規制(金商法4条1項)、募集・私募や運用に関する業規制(金商法29条、28条2項、2条8項7号、28条4項、2条8項15号) 。

① その持分が民法に基づく組合契約、匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に基づく権利であること

② 出資者が出資もしくは拠出をした金銭又は有価証券等を充てて事業を行うこと

③ 出資者が、出資額又は拠出額を超えて、上記②の事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができること

3. 各種の規制

(1) 開示に関する規制

株券や社債など流動性が高い一定の有価証券の募集又は売出しが行われる場合には、原則として、有価証券届出書の提出のような発行に関する開示義務が要求される(金商法4条1項)。

他方、投資ファンドの持分は、通常、金商法上は第2項有価証券に該当するとされることから、金商法に基づく開示義務の対象となる場合は限定的である(同法3条3号) [3]

(2) 募集・私募に関する業規制

組合型ファンドの持分(金商法2条2項の規定により有価証券とみなされる同項5号又は6号に掲げる権利)の募集又は私募は、第二種金融商品取引業に該当するため(同法28条2項1号・2条8項7号)、自らが運営者となる組合型ファンドにつきその出資者を募る行為(自己募集)は、第二種金融商品取引業者としての登録を受ける必要がある(同法29条)。登録が申請されると、管轄の財務局による一定の審査がなされ、登録の拒否事由(同法29条の4以下[4])がある場合を除いて、金融商品取引業者登録簿に登録される。

(3) 運用に関する業規制

金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバディブ取引に係る権利に対する投資として、国内の組合型ファンドの持分(金商法2条2項5号)又は海外の組合型ファンドの持分(同項6号)を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うことは、投資運用業に該当する(同法28条4項3号・2条8項15号ハ)。「主として」とは、基本的に、運用財産の50%超を意味すると考えられている[5]。したがって、主として有価証券を投資対象とする組合型ファンドの資産の運用を自らが運営者として行う場合、その運用行為は投資運用業に該当し、金融商品取引業者としての登録を受ける必要がある(同法29条)。登録が申請されると、管轄の財務局による一定の審査がなされ、登録の拒否事由(同法29条の4以下)がある場合を除いて、金融商品登録簿に登録される。

(4) 募集・私募、運用の委託

上記(2)及び(3)の規制は業務を完全に他の業者に委託をした場合には下記の通り適用されない。

①募集・私募の委託

組合型ファンド持分の発行者が、その募集又は私募に関する対外的行為の一切を第三者である第二種金融商品取引業者に委託し、ファンド持分の募集の取扱い又は私募の取扱い(金商法第2条第8項第9号)を行わせる場合には、自ら有価証券の募集又は私募を行っているとは認められず、金融商品取引業に該当しないものと考えられている[6]

②運用の委託

自らが運用者として組合型ファンドを組成した場合であっても、運用行為の概要や受任者に支払う報酬の額等を定めた契約の締結、運用財産の分別管理、事前届出その他、定義府令16条1項10号の要件を充たして運用行為を他の者に一任する場合には投資運用業に該当しない(金商令1条の8の6第1項4号、定義府令16条1項10号)。

(5) 適格機関投資家等特例業務

また、上記(2)及び(3)の規制は、下記の適格機関投資家等特例業務(63条特例)を利用することにより排除され、簡易な届出のみで対応できる[7]。多くのファンドがこの例外を利用している。

適格機関投資家等特例業務における出資者の範囲は、①適格機関投資家1名以上で、②適格機関投資家以外の者で政令で定めるもの(特例業務対象投資家)[8]が49名以下であり、③いずれも不適格機関投資家(金商法63条1項1号イ~ハ、金商業等府令235条)に該当しない者とされる(同法63条1項)。

適格機関投資家等特例業務を実施する者については、金融商品取引業者としての登録義務を課さず、商号や主たる営業所の所在地等の事項についての簡易な届出のみを義務づけている(同法63条2項以下)。

なお、この制度は悪質な業者の利用によって投資被害事例が増加したこと等を理由に、平成 27 年金商法改正で規制が強化された。上記②の49名以下の投資家の範囲は不適格機関投資家に該当しない限り無制限であった(一般の個人投資家も対象に含まれていた)が、同規制強化後は、上場会社、資本金が5000万円以上である法人、保有資産1 億円以上で証券口座開設後1年を経過している個人といった特定の者に限定された。

他方、かかる投資家の限定は過度に過ぎるとしてベンチャーファンドに関しては特例が設けられた。所定の要件[9]を満たすファンドは、投資家の範囲が上場企業の役員・元役員・一定の専門家なども含むよう拡大されている(金商法施行令17条の12第2項、業府令233条の3)[10]

(表2 適格機関投資家等特例業務の49名以下投資家の範囲)

平成27年改正以前同改正以降
全ての組合型ファンド特に制限なく誰でも投資可能通常の組合型ファンド上場会社、資本金が5000万円以上である法人、保有資産1 億円以上で証券口座開設後1年を経過している個人など
ベンチャーファンド特例上記に加え、①上場会社の役員、②過去5年以内に上場会社の役員であった者等

(6) 当局による監督

第二種金融商品取引業者や投資運用業者に対しては、内閣総理大臣(金融庁)による監督がなされ、顧客資産の分別管理(金商法40条の3)等といった金融商品取引業者としての規制を遵守する必要が生じる。これらの規制に違反すると、業務改善命令等の行政処分がなされる(同法51条等)。なお、適格機関投資家等特例業者については、第二種金融商品取引業や投資運用業よりも緩和された規制が適用されることとなる。

(表3 ファンドの販売・運用につき、金商法上、必要な業登録・届出)

 

通常必要な登録

第三者に完全に委託した場合の登録

63条届出利用の可否

販売規制

出資の募集・私募(自己募集)

第二種金商業登録

登録不要

(当該第三者は第二種金商業登録が必要 左下コラム*1参照 )

63条届出で可

出資の募集・私募の取り扱い(他者設定ファンドの販売)

第二種金商業登録(*1)

第三者への完全再委託は考え難い

第二種金商業登録(63条特例の適用なし)

運用規制

50%以上有価証券に投資するファンドの運用(自己運用)

投資運用業登録

登録不要

(当該第三者は投資運用業登録が必要左下コラム*2参照)

63条届出で可

50%以上有価証券に投資するファンドから委託を受けて運用

投資運用業登録 (*2)

投資運用業登録

投資運用業登録(63条特例の適用なし)

それ以外(暗号資産含む)のファンドの運用

登録不要

登録不要

登録不要(なお、63条届出も不要)

III 暗号資産ファンドに対する規制

暗号資産ファンドといった場合、①ファンドの調達手段が暗号資産であるファンド、②ファンドの投資対象が暗号資産であるファンド、③投資家の得る権利がトークン化されているファンドなど、様々なケースを指す場合がある。

これらの暗号資産ファンドに特有の規制について解説する。また、令和元年金商法改正による暗号資産ファンドの法規制への影響について触れる。

1. 暗号資産に投資するファンド

(1) 暗号資産に投資するファンドと第二種金融商品取引業

暗号資産に投資するファンドを組合形式で組成する場合、当該ファンドに対する出資者の権利は集団投資スキーム持分(金商法2条2項5号)となる。その場合、ファンド運営者が出資の募集又は私募をするためには、原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要であること(同法28条2項1号、2条8項7号)、適格機関投資家等特例業務の適用がありうること(同法63条)、第三者に募集又は私募に関する対外的行為の一切を委託する場合には金融商品取引業に該当しないことは、有価証券に投資するファンドと同様である。

(2) 暗号資産に投資するファンドと投資運用業

暗号資産投資ファンドの投資対象が、資金決済法上の暗号資産又は前払式支払手段に該当する場合、「有価証券又はデリバティブ取引に係る権利」への投資には当たらず、投資運用業の適用はない。

これに対して、投資対象が第一項有価証券や第二項有価証券に該当するセキュリティートークンの場合、「有価証券」に対する投資に該当することとなる。運用財産の50%を超えて有価証券に投資する場合、原則として投資運用業の登録の必要が生じる(金商法28条4項3号、29条、2条8項15号)。

(3) 暗号資産に投資するファンドと資金決済法

暗号資産交換業(資金決済法2条7項)とは、暗号資産の売買や売買の取次ぎを「業として行うこと」をいう。そこで、暗号資産への投資を行う場合にも暗号資産の売買をすることになり、暗号資産交換業への該当性が問題となるが、一般的には投資目的で行う取引は「業」とは考えられないこと、金商法上の有価証券に対する投資一任運用行為は「投資運用業」に該当し、「有価証券の売買」又はその「代理」として第一種金融商品取引業に該当するとは解されていないこととパラレルに考えると、業として暗号資産の売買をすることとはならず、暗号資産交換業(資金決済法2条第7項)には該当しないものと思われる[11]

2. 暗号資産で募集するファンド

金商法2条2項5号の規定は令和元年金商法改正以前は「金銭(又は政令で指定する金銭類似物)」で募集する場合とされており、暗号資産は金銭でも金銭類似物でもないため、脱法的と見られるような場合を除き、集団投資スキーム規制の対象外であった。

しかしながら、法改正により集団投資スキーム規制との関係では暗号資産が「金銭とみなされる」こととなったため(改正金商法2条の2)、暗号資産で募集するファンドも集団投資スキーム規制の対象となることとなる。

3. ファンドの権利をトークン化した場合の規制

令和元年の改正金商法は、電子記録移転権利という法概念を創設し、以下のとおり定義づけた。

電子記録移転権利とは、以下の①~③を満たし、④を除く権利(金商法2条3項)
① 金商法第2条第2項各号に掲げる権利(ファンド、信託受益権、合名合資合同会社の社員権など)
② 電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合
③ 電子機器その他の物に電子的方法により記録される場合
④ 流通性その他の事情を勘案して内閣府令に定める場合

ファンドの権利をトークン化した場合、通常、上記の電子記録移転権利に該当すると思われる。

電子記録移転権利につき、改正金商法は、かかる権利が事実上多数の者に流通される可能性があることを理由に第一項有価証券と定めた(改正金商法2条3項・8項)。

電子記録移転権利が第一項有価証券に該当することにより、当該権利の募集の取扱い又は私募取扱いを業としてする行為は第一種金融商品取引業(同法28条1項1号、2条8項9号)となる。なお、電子記録移転権利に該当する集団投資スキーム持分について、自己募集・自己私募が第二種金融商品取引業に該当することや、自己私募又は運用につき適格機関投資家等特例業務(同法63条1項)の適用対象となる[12]点について、改正による変更はない。

また、電子記録移転権利が第一項有価証券に該当することで、これを募集(公募)する場合には原則として開示規制の適用を受けることとなり、発行者は有価証券届出書の提出義務(同法4条1項)や、目論見書の作成・交付義務(同法13条1項、15条1項)を負い、また、発行後の有価証券報告書(同法24条)等による継続開示も義務付けられる。もっとも、(ⅰ)適格機関投資家のみを相手方とする場合、(ⅱ)特定投資家のみを相手方とする場合、又は(ⅲ)50名未満の少人数の者を相手方とする場合といった私募に該当するにとどまる場合には、公衆縦覧型の開示規制は課されない。

なお、STOについては、別途、当事務所で各種資料を掲載しているので、当事務所ホームページ等をご参照頂きたい。

(表4 トークン化ファンドの販売・運用につき金商法上、必要な業登録・届出)

 通常必要な登録・届出第三者に完全に委託した場合の登録・届出63条届出の利用の可否
販売規制
出資の募集・私募(自己募集)第二種金商業登録登録不要(当該第三者は第二種金商業登録が必要)63条届出で可
出資の募集・私募の取り扱い(他者設定ファンドの販売)第一種金商業登録(*)第三者への完全再委託は考え難い第一種金商業登録(63条特例の適用なし) (*)
運用規制
50%以上有価証券に投資するファンドの運用 (自己運用)投資運用業登録登録不要(当該第三者は投資運用業登録が必要)63条届出で可
50%以上有価証券に投資するファンドから委託を受けて運用投資運用業登録投資運用業登録投資運用業登録(63条特例の適用なし)
それ以外(暗号資産含む)のファンドの運用登録不要登録不要登録不要(なお63条届出も不要)

(表5 開示規制)

募集・私募の区分

募集・私募等の相手方

開示義務

私募

適格機関投資家私募(*1)

適格機関投資家に限定

通常無し

少人数私募(*1)

49名以下に限定

特定投資家私募(*1)

特定投資家に限定

募集

多数

有価証券届出書(*2)

(その他、半期報告書、臨時報告書等の継続開示についても留意する)

 

(*1) 技術的手段で転売先を限定

(*2) 発行価格の総額が1億円未満の募集の場合、有価証券届出書(金商法第4条第1項第5号)の届出義務が免除される

以 上


[1] なお、令和元年資金決済法及び金商法改正により、仮想通貨が暗号資産という法令上の呼称に変更された。これは、国際的にcrypto-assetという表現が用いられていることや、法定通貨との混同を避けるためである。そこで、本稿でも、暗号資産という用語を用いる。

[2] 投資ファンドが①~③の要件を充たす場合であっても、(1)出資対象事業に係る業務執行がすべての出資者の同意を得て行われるものであること、(2)出資者のすべてが、ⅰ出資対象事業に常時従事する、又はⅱ特に専門的な能力であって出資対象事業の継続の上で欠くことができないものを発揮して当該出資対象事業に従事すること、の両要件を充たした場合(金商法2条2項5号イ、金商令1条の3の2)の他、一定の場合には投資ファンドの持分が有価証券に該当しない場合がある。

[3] ファンド持分が「有価証券投資事業権利等」に該当する場合や改正金商法により定められる「電子記録移転権利」に該当する場合には、開示規制の対象となる(金商法3条3号)。有価証券投資事業権利等とは、原則として、ファンドの出資額の50%を超える額を充てて有価証券に対する投資を行う場合をいう(同号イ、金商令2条の9第1項)。電子記録移転権利については後述のとおり。ただし、その場合もファンド持分を取得する者が500名を超える場合(「募集」金商法2条3項3号、金商令1条の7の2)に限られる。

[4] 金融商品取引業登録取消処分から5年を経過しない者、金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者、金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者については登録が認められない。

[5] 金融庁パブコメ回答190番等[平19.7.31]

[6] 金融庁パブコメ回答103番等[平19.7.31]

[7] ただし、平成27年金商法改正以降、届出書及び添付書類の拡充(例:適格機関投資家の名称等の記載)、また事業報告書の提出等が義務付けられた。

[8] 金商法施行令17条の12第1項、業府令233条の2に列挙された者。

[9] 金商法施行令17条の12第2項、業府令233条の4、239条の2第1項に定める要件。

[10] ベンチャーファンドに関する特例で特例業務対象投資家に加わる者は、①上場会社の役員、②過去5年以内に上場会社の役員であった者、③通算1年以上の期間、会社の役職員又はアドバイザーとして会社の運営に関する一定の業務に従事し、かつ、最後に従事してから5年以内の者、④経営革新等支援機関として認定されている公認会計士、弁護士、司法書士、行政書士、税理士等である。

[11] 西村あさひ法律事務所編「ファイナンス法大全[全訂版](下)」870 頁、871 頁も参照のこと。

[12] 電子記録移転権利についての自己私募又は運用が適格機関投資家等特例業務に該当するとされるためには、以下の区分に応じた要件を満たす必要がある(改正金商法63条1項1号、改正業府令234条の2第1項3号)

① 適格機関投資家が出資者となる場合

  電子記録移転権利を適格機関投資家以外の者に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。

② 特例業務対象投資家が出資者となる場合

  電子記録移転権利の取得者が当該権利を一括して他の一の適格機関投資家又は特例業務対象投資家に移転する場合以外に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。

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So & Sato

昨年7月6日に働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)が交付されたことにより、本年4月1日より、労働基準法を含む労働関係法が大幅に改正されることとなりました。

これは、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、労働者のニーズ多様化」などの状況に直面した我が国において、長時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備を目指すことが理由です。

当該改正により特に大きな影響がある点について簡単に解説したいと思います。

本稿では、本年4月1日改正後の労働基準法を「改正労働基準法」といいます。

1. 時間外労働の上限規制(改正労働基準法 36 条)

現行法では、36 協定で定めることのできる時間外労働時間の上限については、時間外労働の限度に関する基準(平成 10 年労働省告示第 154 号)において、法的拘束力のない告示があるにすぎませんでした。しかしながら、改正労働基準法では、36 協定で定めることのできる時間外労働の限度時間の上限が月 45 時間、年 360 時間に定められることとなりました(改正労働基準法 36 条 4 項)。

また、特別条項による場合(特別の事情に基づいて限度時間を超えて労働させる場合)等であっても、時間外労働時間が年間 720 時間以内、単月の時間外労働時間(法定休日労働時間も含みます。)が 100 時間未満、かつ 2 ヶ月間から 6 ヶ月間の各平均時間外労働時間(法定休日労働時間も含みます。)が 80 時間未満でなければなりません。さらに、月 45 時間の時間外労働時間を上回る月は、年間で 6 ヶ月以内でなければなりません(同条 5 項)。

当該改正は 2019 年 4 月 1 日から施行されますが、同日からすべての労働者に対して適用されるわけではありません。中小事業主には、2020 年 3 月 31 日まで上記規制の適用が猶予されます。中小事業主とは、資本金の額又は出資の額が 3 億円(小売業又はサービス業は 5,000 万円、卸売業は1億円)以下である事業主及び常時使用する労働者の数が 300 人(小売業は 50 人、卸売業又はサービス業は 100人)以下である事業主をいいます。

他にも、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務には上記規制の適用除外が認められているほか(同法 36 条 11 項)、工作物等の建設の事業、自動車の運転の業務、医業に従事する医師等には、2024 年 3 月 31 日まで猶予期間が設けられています(同法139 条以下)。

なお、施行日(中小企業は 2020 年 3 月 31 日まで適用を猶予されます。)の前日を有効期間に含む 36 協定については、改正法施行日以降も、当該協定に定める期間の初日から起算して 1 年を経過する日までの間は効力を有することとなります(附則 2 条)。

上記規制に違反した使用者は、労働基準監督官による臨検、是正勧告及び改善指導の他、違反した労働者一人当たり 30 万円以下の罰金に処される可能性があります(同法120 条)。

2. フレックスタイム制の清算期間延長(同法 32 条の 3)

現行の労基法では、フレックスタイム制を設ける場合には、清算期間として、1 ヶ月を上限とする期間の総労働時間をあらかじめ定め、当該期間中の実労働時間が定められた総労働時間を超える場合には、当該超過部分について時間外割増賃金を支払う必要があります。

今回の改正では、清算期間の上限が従来の 1 ヶ月から 3 ヶ月に拡張されます(同法32 条の 3 第 1 項 2 号)。その結果、例えば夏休み中の子供と過ごす時間を増やすため、親である従業員が 8 月の労働時間を短縮し、その前後の月の労働時間を増やして調整するといったことが可能になります。

フレックスタイム制の導入に関する労使協定は締結のみで足り、届出は原則として不要ですが、清算期間が 1 ヶ月を超える場合には労使協定の届出が義務化されます。また、1 ヶ月あたりの労働時間の上限を設定(清算期間を1ヶ月ごとに区分した各期間において1週平均 50 時間を超えない範囲内)し、当該上限を超えた時間外労働については、清算期間の経過を待つことなく割増賃金を支払う必要があります(同条 4項)。

例として、以下のように労働時間を調整することが考えられます(計算を簡便にするため、すべての月が 4 週 28 日、法定労働時間 160 時間としています。)。

(1) 1 ヶ月当たりの労働時間及び 3 ヶ月当たりの労働時間の上限を超えない場合

1 月2 月3 月
実総労働時間200 時間80 時間200 時間

上記の場合、従前であれば 1 月及び 3 月に各月 40 時間分の時間外労働が発生することから、合計 80 時間分の時間外割増賃金を支払う必要がありました。もっとも、清算期間を 3 ヶ月とするフレックスタイムを導入した場合、上記の例では 3 ヶ月間の実総労働時間が 480 時間であり、法定労働時間の枠を超えていないため、時間外割増賃金を支払う必要がないということとなります。

(2) 1 ヶ月当たりの労働時間の上限を超える場合

1 月2 月3 月
実総労働時間210 時間210 時間80 時間

上記の例では、1 月及び 2 月に週平均 50 時間を超える時間外労働が発生しているため、1 月及び 2 月に 10 時間分ずつの割増賃金を支払う必要があります。

(3) 3 ヶ月当たりの労働時間の上限を超える場合

1 月2 月3 月
実総労働時間200 時間200 時間150 時間

上記の例では、1 月及び 2 月は週平均 50 時間の時間外労働時間の発生にとどまるため、1 月及び 2 月分の労働に対しては時間外割増賃金を支払う必要はありません。他方、3 月の実総労働時間も週平均 50 時間以内ではありますが、3 ヶ月の実総労働時間が 550時間であるため、480 時間を超える 70 時間分について時間外割増賃金を支払う必要があります。

なお、この場合は 3 月に 60 時間を超える時間外労働をさせたものと考えられますから、60 時間分については 2 割 5 分以上の時間外割増賃金を、10 時間分については 5割以上の時間外割増賃金を支払う必要があります。

3. 年休を取得させる義務の発生(同法 39 条)

改正労働基準法では、使用者は、1 年に 10 日以上の年次有給休暇が付与される労働者1に対し、毎年 5 日以上、時季を指定して年休を与えなければならなくなります(同条 7 項)。ただし、労働者が時季を指定した日数及び労使協定による計画的付与(例えば、暦の関係で飛び石連休となっている場合に、祝日の間の所定労働日を休日とする場合等)により取得された日数については、5 日から差し引くことができます(同条 8 項)。現行法上は労働者による時季指定がない限り、年休を付与しなくとも違法ではありません。しかし、改正法施行後は事業主に、労働者に年休を取得させる義務が生じます。仮に従業員に年 5 日以上の年次有給休暇を取得させなかった場合、使用者は労働基準監督官による臨検、是正勧告及び改善指導の他、労働者一人当たり 30 万円以下の罰金に処せられる可能性があります(労働基準法 120 条)。

4. 高度プロフェッショナル制度の創設(同法 41 条の 2)

改正労働基準法では、労働の評価の対象を時間ではなく成果とすることを目的として、高度プロフェッショナル制度(いわゆる「高プロ」)が導入されます。高度プロフェッショナル制度とは、高度な職業能力を必要とする特定高度専門業務に従事する労働者について、労働時間規制の対象から除外する制度を意味します。これらの労働者には労働時間に関する規定は適用されず、また、時間外・休日・深夜労働に対する手当の支払義務もありません。

高度プロフェッショナル制度の対象となる業務は、①金融商品の開発業務、②証券会社のディーラーといったディーリング業務、③市場や株式などのアナリストの業務、④コンサルタントの業務、⑤医薬品などの研究開発業務の 5 つです。ただし、上記業務に従事する者の全てが本制度の対象となるわけではなく、そのうち高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務のみに限定されることにご注意ください(労働基準法第 41 条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るため の指針案(https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000456690.pdf)参照)。本制度の対象となる者の年収は 1075 万円以上でなければなりません。当該年収には、固定給のほか、固定で支給される手当等を含みますが、成果報酬や賞与のうち、実績等に応じて変動する額は含みません。つまり、最低でも年間 1075 万円以上の支給がなされる者のみが対象となります。

高度プロフェッショナル制度を導入するためには、以下の手続きが必要となります。

①労使委員会(委員の半数については、過半数労働組合がある場合には過半数労働組合が、過半数労働組合がない場合には過半数代表者が任期を定めて指名すること)の設置
②労使委員会における、委員の 5 分の 4 以上の多数による以下の事項の決議

  1. 対象業務
  2. 対象労働者(入社年数や見込賃金額の下限等を定めるものであり、個別の労働者を対象とするものではありません。)
  3. 使用者が対象労働者の事業場内に所在した時間と事業場外で業務に従事した場合における労働時間との合計の時間(健康管理時間)を把握するための措置
  4. 対象者に対して、1 年間を通じて 104 日以上の休日、4 週間を通じて 4 日以上の休日を与えること
  5. ①インターバル措置(11 時間)と深夜業の回数(月 4 回以内)の制限、②1 ヶ月または 3 ヶ月の健康管理時間の上限措置(1 週間当たりの健康管理時間が 40時間を超える時間数がそれぞれ 100 時間、240 時間を超えないこと)、③2 週間連続の休日を年に 1 回以上(本人が希望する場合には 1 週間連続の休日を年 2回以上)与えること、④臨時の健康診断のいずれかの措置を行うこと
  6. 有休休暇の付与、健康診断の実施などの省令の定める事項のうち、労働者の健康管理時間の状況に応じた健康及び福祉を確保するための措置として実施するもの
  7. 対象労働者の同意の撤回の手続き
  8. 対象労働者からの苦情についての処理に関する措置
  9. 対象労働者が同意をしない場合に、不利益な取り扱いをしないこと
  10. 決議の有効期間等

③決議の労働基準監督署への届出
④対象労働者の書面又は電磁的方法による同意の取得

5. 勤務間インターバル制度の創設の努力義務(労働時間等設定改善法 2 条)

長時間労働による健康被害を鑑み、事業主には、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務が課されます。例えば、始業時刻 9 時、終業時刻 18 時の会社において、前日深夜 0 時まで残業した場合に、翌日の始業時刻を 11 時に繰り下げるといった運用が考えられます。ただし、あくまで当該制度の導入は努力義務に過ぎず、事業主に制度導入義務はありません。

6. 同一労働同一賃金(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律 9 条、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 30 条の3)

改正労働法の下では、雇用形態にかかわらず、同一の貢献をした場合は同じ給与・賃金を支給しなければなりません。なお、改正法の施行は、大企業は 2020 年 4 月 1日、中小企業は 2021 年 4 月 1 日とされています(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則 1 条 2 号、11 条)。

当該制度の下では、例えば以下の点が考慮されます(厚生労働省告示第 430 号参照)。

  1. 基本給が、労働の実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給がされているか
  2. 昇給が、同一の能力の向上には同一の、違いがあれば違いに応じた昇給がされているか
  3. 賞与について、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給がされているか
  4. パートタイム労働者や有期雇用労働者に対して、福利厚生施設の利用、転勤の有無等の要件が同一の場合の転勤者用住宅の利用、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除、年次有給休暇の保障について違いがないか

7. 月 60 時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ(労働基準法138 条の廃止)

現行法の下では、時間外労働に対する割増賃金率は原則として 25%ですが、1 ヶ月について 60 時間を超える時間外労働時間に対する割増賃金率については 50%とされていますが、中小事業主の事業については、後者の割増賃金率は適用を猶予されていました。改正労働基準法によりかかる猶予期間を定めた労働基準法 138 条が廃止され、2023年 4 月 1 日からは中小事業主の事業についても当該割増賃金率が適用されることとなります。

本稿は、議論用に纏めたものに過ぎず、具体的な法的助言ではありません。また当職らの現状の見解に過ぎず、当職らの見解に変更が生じる可能性があります。具体的な案件については、当該案件の個別状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。

2020年4月末のセミナーに使用した暗号資産法改正の概説のレジュメです。日本語版と英語版。取引所、カストディー、デリバティブ、STO。概略を短時間で知りたい人向けです。

日本語版 Crypto_Law_Amendment(JP)_200427

英語版  Crypto_Law_Amendment(EN)_200424

定時株主総会開催方法について

2020年4月7日に新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条に基づき緊急事態宣言がなされた中、本年の株主総会をどう開催するかは、総会実務者としては関心があるところだと思います。会社法上、いわゆる完全なバーチャル株主総会[1]の開催に関しては否定的な意見もあり[2]ハードルが高い中、会社法の規定に従い、いわゆるハイブリッド型バーチャル株主総会(詳細は後述)[3]を開催するのか、延期するのか又は継続会(会社法第317条参照)をするのか等本年の定時株主総会をどのように行うのか、判断が迫られています。

そのような中、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」による「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」では、「法令上、6月末に定時株主総会を開催することが求められているわけではなく、日程を後ろ倒しにすることは可能であること。」とされています[4]。この点、多くの株式会社(上場非上場問わず)では、定時株主総会において議決権等の権利を行使できる株主は「毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することのできる株主とする。」などの規定を定款で定めており、かかる定款の規定を無視して基準日を定め(会社法第124条第2項)、当該基準日時点での株主に権利行使させる形で延期した例も見られるところです[5]。このような例があるとはいえ、当初の日程で決議する議題があるなど6月末に定時株主総会を開催する必要があり、にもかかわらず企業決算・監査が間に合わない場合に備えて、対応方法として前述の連絡協議会は以下の方法を掲げています[6]

資金調達や経営判断を適時に行うために当初予定した時期に定時株主総会を開催する場合には、例えば、以下のような手続をとることも考えられること。

  1. 当初予定した時期に定時株主総会を開催し、続行(会社法317条)の決議を求める。当初の株主総会においては、取締役の選任等を決議するとともに、計算書類、監査報告等については、継続会において提供する旨の説明を行う。
  2. 企業及び監査法人においては、上記のとおり、安全確保に対する十分な配慮を行ったうえで決算業務、監査業務を遂行し、これらの業務が完了した後直ちに計算書類、監査報告等を株主に提供して株主による検討の機会を確保するとともに、当初の株主総会の後合理的な期間内に継続会を開催する。
  3. 継続会において、計算書類、監査報告等について十分な説明を尽くす。継続会の開催に際しても、必要に応じて開催通知を発送するなどして、株主に十分な周知を図る。

ハイブリット「参加型」バーチャル株主総会と
ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会

株主総会の開催方法としては、新型コロナウイルス感染症拡大防止という観点からも、ハイブリッド型バーチャル株主総会が注目を浴びています。

経済産業省が2020年2月26日に策定した「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(以下「実施ガイド」といいます。)2頁では、ハイブリッド参加型バーチャル株主総会とハイブリッド出席型バーチャル株主総会という二つのハイブリッド型バーチャル株主総会の開催方法が挙げられています。

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会(以下「参加型」といいます。)とは、リアル株主総会(「物理的に存在する会場において、取締役や監査役等と株主が一堂に会する形態で行われている」ものとされています。)の開催に加え、リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、株主総会への法律上の「出席」を伴わずに、インターネット等の手段を用いて審議等を確認・傍聴することができる株主総会をいいます。

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会(以下「出席型」といいます。)とは、リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会をいいます。

参加型と出席型のいずれも、会社法上特にこれを禁止する規定はなく、適法に開催することができます。以下、株主の参加場面における注意点について、実施ガイドの内容を基に概説します。

(1)質疑応答

参加型の場合、当日、インターネット等の手段を用いて参加する株主は、あくまでもオブザーバーとして参加することになるので、会社法上、株主総会において株主に認められている質問(会社法第314条)を行うことができません(実施ガイド9頁参照)。

他方、出席型の場合、株主総会への「出席」である以上、質問は可能であるものの、インターネット等からの出席という特殊性から、音声ではなくテキストによる質問ということが考えられ、出席者一人が提出できる質問回数や文字数、送信期限(通信に要する時間や、事務局の処理時間を考慮すると、リアル株主総会の会場の質疑終了予定の時刻より一定程度早く設定する必要があるでしょう。)などの事務処理上の制約や、質問を取り上げる際の考え方、個人情報が含まれる場合や個人的な攻撃等につながる不適切な内容は取り上げないといった、リアルの場での質問ではあまり問題となっていなかった事柄についても、その処理方法について予め運営ルールとして定め、招集通知やウェブ上で通知することが考えられます(実施ガイド21頁参照)。

(2)議決権行使

参加型の場合、当日、インターネット等の手段を用いて参加する株主は、一般的には当日の決議に参加することができません[7]。そのため、「議決権行使の意思のある株主は、書面や電磁的方法による事前の議決権行使や、委任状等で代理権を授与する代理人による議決権行使を行うことが必要であり、会社は、その旨を事前に招集通知等であらかじめ株主に周知することが望ましい」とされています(実施ガイド9頁)。

他方、出席型の場合、株主総会への「出席」である以上、審議に参加し、議決権を行使することは可能であるものの、バーチャルでの株主総会に出席した株主が事前に議決権行使を行っていた場合の取り扱いに関しては、リアル株主総会と異なる取扱いをすることが考えられます(実施ガイド18頁)。

(3)動議

参加型の場合、当日、インターネット等の手段を用いて参加する株主は、あくまでもオブザーバーとして参加することになるので、会社法上、株主総会において株主に認められている動議(会社法第304条参照)を行うことができません(実施ガイド9頁)。

他方、出席型の場合、株主総会への「出席」である以上、動議は可能であるものと考えられるものの、バーチャル出席者に対しリアル出席者と同等の取り扱いをするために「システム的な体制を整えることは、会社の合理的な努力で対応可能な範囲を超えた困難が生じることが想定され」(実施ガイド22頁)、「株主に対し、事前に招集通知等において、「バーチャル出席者の動議については、取り上げることが困難な場合があるため、動議を提出する可能性がある方は、リアル株主総会へご出席ください。」といった案内を記載したうえで、原則として動議についてはリアル出席者からのものを受け付ける」(実施ガイド22頁)ということが考えられます。また、リアル出席者からなされた動議に関しても、バーチャル出席者に採決に参加させることがシステム上困難なことも想定され、「株主に対し、事前に招集通知等において、「当日、会場の出席者から動議提案がなされた場合など、招集通知に記載のない件について採決が必要になった場合には、バーチャル出席者は賛否の表明ができない場合があります。その場合、バーチャル出席者は、事前に書面又は電磁的方法により議決権を行使して当日出席しない株主の取扱いも踏まえ、棄権又は欠席として取扱うことになりますので予めご了承ください」といった」(実施ガイド22頁)案内を記載したうえで、「個別の処理が必要となる動議等の採決にあたっては、バーチャル出席者は、実質的動議に関しては棄権、手続的動議に関しては欠席として扱う」(実施ガイド22頁)ことが考えられます。

バーチャル株主総会と本人確認

ハイブリッド型バーチャル株主総会においては、当日の出席者の本人確認についてリアル出席株主とバーチャル出席株主それぞれに対して行うことが必要であるとした上で、バーチャル出席株主の本人確認にあたっては、事前に株主に送付する議決権行使書面等(議決権行使書面又は議決権行使書面と同封の書類)に、株主毎に固有のIDとパスワード等を記載して送付し、株主がインターネット等の手段でログインする際に、当該IDとパスワード等を用いたログインを求める方法を採用するのが妥当とされています(実施ガイド15頁)。

また、ハイブリッド参加型バーチャル株主総会における代理人出席に関しての取り扱いに関して記載されており、「代理出席の取り扱に当たっては、代理人の出席はリアル株主総会に限るとすることも、妥当な判断と考えられる。そのような取扱いをする場合、代理人の出席はリアル株主総会に限るという旨について、予め招集通知等において株主に通知しておくことが必要である。」としています(実施ガイド16頁)。①会社法では、株主が議決権を行使する方法として、代理人による議決権行使が認められている(会社法第310条)から代理人がリアル株主総会に出席することを認めなければならないが、これを認めていれば同条には違反しないと言えること、また、②バーチャル出席という態様の特性を考えると、代理人による出席を認める必要性が乏しいが、他方で本人確認等に付随する処理は実務上煩雑であり、事務処理コストが高いことが理由として挙げられています。

リアル株主総会の実務においては、「日本の信頼性の高い郵便事情を背景に、株主名簿上の株主の住所に送付された議決権行使書面を所持している株主は、通常の当該株主と同一人であるという経験則を適用し、本人確認を実施していると理解できる。」(実施ガイド15頁)ことから、実際に代理人がリアル株主総会に出席する場合であっても、出席者が本人なのか代理人なのか確認しない会社が多いかと思われます(特に、法人株主の役職員に関して対応していないケースはよく聞くところです。)。

ハイブリッド型バーチャル株主総会でも、議決権行使書面又は議決権行使書面と同封の書類に記載されたID及びパスワードによってバーチャル出席した場合、リアル株主総会と同様に実際に株主として参加又は出席したものが本人か代理人であるかどうかは実際には不問とするケースもあろうかと思われます。

当職も6月総会をいくつか控えています。今後、ハイブリッド型参加型バーチャル株主総会が取り入れられ、総会実務担当者、証券代行その他関係者間で議論が深まっていくかものと思いますので、またアップデートできればと思います。


[1] 経済産業省が2020年2月26日に策定した「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200226001/20200226001-2.pdf)3頁で定義する、参加者全員がリモートで参加する、バーチャルオンリー型株主総会を意味します。

[2] 商事法務No.2225「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実務対応₋実施ガイドを踏まえて₋」16頁武井一浩先生のコメント参照。会社法第298条第1項第1号等条文上の「場所」という記載は明らかに物理開催を前提としており、実際ネット上での開催のみとするのは難しいと思われます。なお、ドイツでは、2020年3月28日付で2021年12月31日までの時限立法として、完全なバーチャル株主総会が認められました(Gesetz zur Abmilderung der Folgen der COVID-19-Pandemie im Zivil-, Insolvenz- und Strafverfahrensrecht)。要件としては、①株主総会が、音声及びビデオが配信されていること、②株主は議決権を電磁的方法又は事前の書面により行使できること、③電磁的方法により質問を行うことができること、及び④株主総会決議に異議を唱えることができる権利が与えられることとされています。

[3] 「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」2頁

[4] https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200415/20200415.html

[5] なお、延期の場合は、3月末日の株主は定時株主総会で議決権を行使することができず、改めて基準日を定めて公告する必要があります。株主会社東芝は、本年4月18日付で、定時総会の延期のため基準日設定の公告を行う旨の適時開示を行っています(http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20200418_1.pdf)。

[6] 延期または継続会の場合、一つの案として、上場会社であれば、会社法第459条(剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定め)の定めが定款にあることがほとんどだと思いますが、同条及び定款の定めに従い、取締役会において剰余金配当の決議を行い、定時株主総会(継続会)において剰余金配当の決議を行わないといった対応も検討しうるところかと思います(実際、以前から会社法第459条及び定款の定めに従い剰余金配当は取締役会決議のみで行い定時株主総会において当該議案は上程しないという方針の上場会社もあるところではあります。)。

[7] 実施ガイド9頁には、注6として「会社によっては、その置かれている状況により、インターネット等の手段を用いて審議を傍聴した株主が傍聴後に議決権を行使することを可能にするような選択肢を検討することも考えられる。(以下略)」と記載している。

2020年4月3日(金)に①暗号資産 ②そのデリバティブ ③STOの改正法政省令等に関するパブリックコメント(以下「パブコメ」といいます。)の回答及び政省令等の最終版が発表されました。
<金融庁ウェブサイトへのリンク>
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200403/20200403.html?fbclid=IwAR3kH2It0K77yGeYK5meNArPOpen_T9Pj6AOcmrB6ukLlwsT0slHnfkEeFI
今後、各法律事務所やメディアから、より詳細な情報が発表されると思われますが、速報として、①暗号資産及び②暗号資産デリバティブに関し、重要と思われるパブコメ回答を解説します。
なお、本文中の番号はパブコメ回答の番号になります。

1 暗号資産の定義

1.1 暗号資産の定義

<パブコメの結果>
暗号資産の定義から「電子記録移転有価証券表示権利等」を除外(1番~3番)

<背景と解説>
改正法では「暗号資産」の定義から「電子記録移転権利」が明文で除かれています(改正資金決済法2条5項)。
「電子記録移転権利」とは、ファンドなど元々あまり流通性が高くない権利をトークン化して流通性が上がった場合、株式・社債など元々流通性が高い有価証券と同様の規制に服させよう、と今回の金商法改正で定義された用語です。
「電子記録移転権利」は、もし除外規定がなければ「暗号資産」の定義にも該当する場合が多く、暗号資産規制と金商法規制の二重規制を避けるため、除外規定が設けられました。
しかしながら、改正金商法上、①株式・社債のように元々流通性が高い有価証券をトークン化した場合には「電子記録移転権利」には含まれておらず、②またトークン化したファンドでも一定の要件を満たす場合、「電子記録移転権利」の定義から除外されています。
このような「電子記録移転権利」に該当しない権利は、明文上は暗号資産の定義からは除外されないため、場合により暗号資産規制で規制されたり、金商法規制との二重規制になるのではと懸念されていました(注)。
(注) なお、株式・社債等、場合により資金決済法上「通貨建資産」と認められ、暗号資産規制から除外される場合もありますが、詳細は省略します。

これに対して、パブコメ回答では「ICOが投資としての性格を有する場合には、当該トークンは金商法の規制対象となり、資金決済法の規制対象とはならない」、「電子記録移転有価証券表示権利等(解説:電子記録移転権利の他、上記①及び②も含む権利)は、この場合に該当するものと考えられます。」として、解釈で二重規制を排除したものと考えられます。
なお、あらゆる場合に二重規制が適用ないのかは更に検討が必要であり、具体的な商品を取扱う際には、弁護士等にご相談されることをお勧めします。

2 カストディ規制

2.1 カストディ規制の範囲(秘密鍵)

<パブコメ結果>
秘密鍵を保有せず、暗号資産を移転できない場合にはカストディ規制に服さない(9番)

<背景と解説>
改正資金決済法2条7項4号では、「他人のために暗号資産を管理すること」(以下「カストディ」といいます。)を規制しています。
何が「他人のために暗号資産を管理する」に該当するかは、法文上は明確ではありませんでしたが、ガイドラインやパブコメ回答を踏まえると「秘密鍵の管理」、「暗号資産の移転の権限」がポイントとなっています。

2.2 カストディ規制の範囲(マルチシグ等)

<パブコメ結果>
マルチシグのキーを一部のみしか保有していない場合にはカストディ規制の対象外(11番~)
秘密鍵を業者が預かってはいるが当該秘密鍵が暗号化されており、業者が複号・使用できない場合にもカストディ規制の対象外(12番)

<背景・解説>
上記のような場合、「秘密鍵の管理」や「暗号資産の移転の権限」がないとして、規制対象外となります。

2.3 カストディ規制の範囲(クラウドサービス、スマートコントラクト等の場合)

<パブコメ結果>
クラウドサービスに秘密鍵が保管されていても、当該業者が、主体的に利用者の暗号資産を移転できる権限がない場合には「カストディ業務」に該当しない(16番)
スマートコントラクトのエスクローやウォレットでも、主体的に利用者の暗号資産を移転できない場合には同様(17番、18番)

2.4 カストディ規制の範囲(信託会社)

<パブコメ結果>
信託会社が信託契約に基づき、暗号資産交換業者との間で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行う場合には、当該信託会社の行為は、基本的には暗号資産交換業に該当しない(19番)

<背景・解説>
資金決済法2条7項4号では「他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く)とされているところ、信託業法をこの「他の法律として認めたもの。
ただし、回答では「暗号資産交換業者との間で」とわざわざ限定がなされているところ、一般人から信託会社がカストディを受ける場合、どう考えられるかは不明です。また、資金決済法の改正法上は「暗号資産の売買や暗号資産同士の交換」を信託会社が行う場合の除外規定はないと思われ、パブコメ回答との関係は要検討と思われます。
なお、別途の規制で、信託銀行や銀行・銀行持株会社の子会社の信託会社は暗号資産の受託は認められないこととなっております(改正兼営法施行規則3条1項6号、銀行法 16 条の2第1項6号、銀行法 52 条の 23 第1項5号)。

2.5 カストディ業務の法施行前の廃止

<パブコメ結果>
法改正の施行前にカストディ業務を行っていた者が、施行日前にカストディ業務を廃止した場合、返還が完了していなくても、カストディ業務としての登録を受ける必要がない(23番)

<背景・解説>
法改正前にカストディ業務を行っていた会社で、資金決済法の規制の負担の重さから、暗号資産を返還した上で、業務を廃止する会社が存在しています。
このような会社から、返還先のビットコインアドレスの連絡がないユーザーが存在し(少額の預け入れの場合、そのような例が多く見られます)、強制的にビットコインを返還する方法もない、強制的に返還できない場合に預託が継続しているとすると暗号資産交換業の登録を受ける必要があるのか、そのような資金もなく破産せざるを得ない、等の意見が出ておりました。
このような会社の声を受け、法施行日前に廃業を宣言し、返還の手続きを行っていた会社については暗号資産交換業の登録は不要としたものです。

3 利用者の暗号資産の管理

<パブコメ結果>
交換業者、カストディ業者を問わず、ホットウォレット比率の上限は5%(47番、原案維持)

<背景・解説>
暗号資産のエクスチェンジを行っている者と単にカストディを提供している者との間ではビジネスモデルが異なるのでは、としてカストディ業者のホットウォレット比率につき、より柔軟な対応を求めるコメントがなされましたが、不正アクセス防止等を理由に原案が維持されたものです。

4 暗号資産デリバティブ規制

4.1 デリバティブプロ

<パブコメ結果>
暗号資産についてはデリバティブプロとの間の取引に関する規制の適用除外を認めない(60~63番、原案維持)

<背景・解説>
為替等のデリバティブに関し、いわゆるデリバティブプロフェッショナル(10億円以上の有価証券を保有する等のプロ)との間で取引をする場合、金融商品取引業の登録が不要とされています。
この点、暗号資産のデリバティブについても、同様にデリバティブプロフェッショナルの適用除外を認めるよう業界等から要望がありました。
これに対し、①暗号資産デリバティブには積極的な社会的意義を見出しがたい、②現物の暗号資産についても規制があるところデリバティブにも規制を及ぶす必要がある、等の理由で、デリバティブプロの適用除外を認めないとされたものです。

4.2 日本の業者が海外の業者との間で行う暗号資産関連デリバティブ取引

<パブコメ結果>
日本で暗号資産関連デリバティブを行う金商業者が、海外の業者との間で暗号資産関連デリバティブ取引を行う場合、当該海外業者が現地で外国の法令に準拠して暗号資産関連店頭デリバティブ取引を行っている場合、当該海外業者は日本で登録を受ける必要はない(定義府令16条1項4号の2)。この「外国の法令に準拠して暗号資産関連店頭デリバティブ取引を行っている場合」とは、現地の金商法に類似した法律で、金商法に類似した暗号資産関連店頭デリバティブを行っている場合を含むが、それ以外にもケースバイケースで様々な他の業務が含まれうる(66番、67番)。

<背景・解説>
日本の暗号資産交換業者や金商業者は、外国業者とヘッジ目的等で暗号資産取引や暗号資産デリバティブ取引を行っています。このような際に、外国業者が日本で登録を受けなければならないとすれば、日本の業者はヘッジ取引を行うことが著しく困難となります。
定義府令16条1項4号の2は、日本の金商業者が現地の法令で認められた外国業者との間で暗号資産店頭デリバティブ取引を行う場合、当該外国業者は日本での登録をする必要がないとしています。
しかしながら、「外国(現地)の法令に準拠」とする場合、①現地では規制が全くない場合、②簡易の届出で済む場合、③金商業の登録と類似した制度がある場合、等様々な場合があり、日本の業者としてはどのような場合が取引相手方として認められるか不明なため、コメントがなされたものです。回答はケースバイケースだ、とされていますが、広く認められることが望まれます。

4.3 日本の業者が日本の会社と行うヘッジ目的等の暗号資産関連デリバティブ取引

<パブコメ結果>
「業として暗号資産関連デリバティブ取引を行う者を相手方として当該取引を行う者であっても、原則として第一種金融商品取引業の登録を要する」という文言を、「業として暗号資産関連デリバティブ取引を行う者を相手方として業として当該取引を行う者であっても、原則として第一種金融商品取引業の登録を要する」と文言を明確化する(65番)

<背景・解説>
上述の通り、日本の暗号資産交換業者や金商業者が海外業者とヘッジ目的で暗号資産取引や暗号資産デリバティブ取引を行うことがしばしばあります。また、このようなヘッジ取引は、決済や税務の都合上、外国業者の日本子会社との間でなされることも多くあります。
そして、従前の暗号資産業務のプラクティスでは、少なくともヘッジ目的等一定の限定された範囲で日本の業者が日本で未登録の会社と取引を行う場合や、リクイディティプロバイダーと取引を行う場合、当該会社の行為は業(=公衆を相手とし反復継続する行為)ではなく当該会社は未登録で行えると一般に解釈されていたところ、暗号資産デリバティブでもそのように解釈可能な余地はあることを明確化した物と思われます。
ただし、何が業に該当するかはケースバイケースの判断となり慎重な対応が必要ですので、ビジネスとして行う場合、弁護士等にご相談されることをお勧めいたします。

4.4 レバレッジ倍率

<パブコメ結果>
暗号資産の個人向けの信用取引、デリバティブ取引について、レバレッジ比率を2倍とするもの(原案維持、68番~123番)

<背景・解説>
暗号資産のデリバティブ取引については現在、多くの交換業者は上限4倍とされています。
これについて、2018年の「仮想通貨交換業に関する研究会」では、海外の事例等を参考に、2倍を上限とすることが適当だ、とされました。
レバレッジ比率を上限2倍とする改正については、個人投資家等も含め極めて多くの反対があり、パブリックコメントに対しても多数のコメントが出されましたが、①顧客保護、②業者のリスク管理、③過当投機の防止、を理由に原案どおりレバレッジ比率2倍が維持されました。
(意見につき例えば「【仮想通貨メディア共同声明】金融庁施行予定のレバレッジ倍率規制案等における署名支援のお願い」https://coinpost.jp/?p=132139)

4.5 デリバティブの板取引

<パブコメ結果>
デリバティブの板取引については当面の間、市場免許ではなく、第一種金商業の登録のみで行えるものとする(126番~130番)

<背景・解説>
金商法で、有価証券やデリバティブの「市場」の開設については、金融商品市場免許(例えば、東証免許)が必要とされています(金商法2条4項、80条)。
この「市場」が何を指すのかについては金商法上明確な定義はありませんが、PTS(私設市場)の規制なども考えると、少なくとも株式の「板取引」は市場に該当すると解釈されています。
本邦での暗号資産のレバレッジ取引はTwo Way方式と板取引方式が一般に用いられています。暗号資産デリバティブの板取引が市場と見られると、は提供できなくなってしまうのでは、と懸念されていました(日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)の2019年9月6日付「デリバティブ規制に関する提言書」も参照https://cryptocurrency-association.org/news/main-info/20190906-001/)。
この点、パブリックコメント回答では「現状、暗号資産関連デリバティブ取引は、わが国の経済活動において重要な役割を果たしているわけではなく、現状において暗号資産交換業者が行っているような取引については、直ちに金融商品取引所としての規制を課す必要性があるとまではいえないと考えられることから、当面の間、店頭デリバティブ取引とうに該当するものとして、第一種金融商品取引業の登録を求めることとします。」とされたものです。

留保事項
本稿の内容はパブコメ結果から合理的に考えられる議論を記載したものにすぎません。また、当職の現状の検討結果に過ぎず、今後、変更がありえます。
本稿はBlog用に纏めたものに過ぎません。具体的案件の法律アドバイスが必要な場合には各人の弁護士にご相談下さい。