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メタバース、特にバーチャルSNS型のメタバース(SNS型のメタバースの概要についてはメタバースと法律(1)の記述をご参照下さい)では、ユーザーのアバターによる表現が自由に許されることが多く、下記①のような事象が問題となります。
また、一般ユーザーがアバター(キャラクター)やワールド等を製作できるようにSDK(ソフトウェア開発キット)が公開されているものが多く存在します。このようなSNS型メタバースでは、下記②、③のような事例がしばしば存在し、法律との関係が問題となります。
更に、SNS化型メタバースでは、このような①~③の行為を許容するプラットフォーマーの責任がどうなるか、も問題となります。
本稿で検討すること ① ユーザーによりバーチャルライブなどの、演奏、歌唱、ダンスなどの様々な表現行為がなされることと法律 ② ユーザーがアバター(キャラクター)などの顔、服、小道具などを作成し、利用し、販売することと法律 ③ ユーザーがワールドを作成し、他のユーザーに来場して貰い、遊んで貰うことと法律 ①~③のような事例に関するプラットフォーマーの対応 |
これらの問題はメタバースに特有の問題ではなく、既存の動画投稿サイト、SNS、ユーザー投稿型のゲームなどでの問題点と重複する点がありますが、異なった問題点もあり、改めて検討するものです。
メタバース上で、ユーザーがライブをし、歌うこと、演奏すること、踊ること等について、他人の作品を取り扱う場合、基本的には著作権が問題となります。
メタバース上での大規模ライブ(竜とそばかすの姫より)
すなわち、歌については、歌詞やメロディーは音楽の著作物として保護されています。また、既に演奏された音源を流す場合、例えばカラオケ音源をバックに歌う場合などは、演奏物の著作隣接権も問題となります。更に、他人の作った振り付けを踊る場合、舞踏の著作物が問題となります。
(a)自身が著作権を有する場合、(b)著作権フリーである場合、(c)著作権の一括許諾がなされている場合、を除き、理論的には使用について許可を取る必要があります。なお、メタバース上での利用は、公衆送信権との関係で、私的利用の例外は認められないのでは、と思われますが、この点も後述します。
想定される行為 | 対象となる著作権 | 例外の適用 | |
1 | (市販の曲を)メタバース上で自分で演奏 | 音楽(作曲)の著作物:演奏権と公衆送信権 | JASRAC、NEXTONE管理曲の包括許諾 但し、現在、メタバースサイトで包括許諾を取っているサイトがあるものがあるかは不明。今後、包括許諾が取られれば問題ない。 なお、公衆送信権や演奏には私的利用の例外はないこと、「公衆」の範囲の問題となるが、完全に閉じたワールド以外は公衆になりうることに留意。 |
2 | (市販の曲を)メタバース上で自分で演奏し、自分で歌唱 | 音楽(作詞・作曲)の著作物:演奏権と公衆送信権 | 同上 |
3 | (市販の曲を、既にあるカラオケ音源をバックにして)メタバース上で歌を歌う | 音楽(作曲・作詞)の著作物:演奏権と公衆送信権
カラオケ演奏:著作隣接権 |
音楽の著作物について同上
著作隣接権についてはJASRACやNEXTONEの包括許諾の対象外であることに留意 |
4 | (市販の曲を、市販演奏をベースに、他人の振付にて)メタバース上でダンス | ダンス(舞踏)の著作物: 上映権、公衆送信権 曲及び演奏:上記3と同様 |
TikTok等で上げられているダンスの振付は、他人が振付を真似して配信することに事実上の承諾があると考えられる可能性が、(市販の音楽等に比べて)高いと考えられる。
但し、音楽については留意 |
①市販の曲のメタバース上での演奏と著作権
メタバース上で、市販の曲を演奏する場合、歌詞の著作権と、作曲の著作権が問題となります。また、市販の曲を歌唱する場合で、他の演奏家が演奏したカラオケ等をバッグに流す場合には、演奏家が有する著作隣接権という権利も問題となります。 そして、通常、インターネットでのアップロードは公衆送信権という権利の問題となり、メタバース上での利用も同様の権利の問題となると思われます。
なお、「演奏してみた」「歌ってみた」は、YouTube、ニコニコ動画、TikTokなどの既存の動画サイトでも人気のカテゴリーです。これらのサイトは、JASRACやNEXTONEとの間で著作権についての包括的な許諾契約を締結し、金銭を払っていることから、JASRAC、NEXTONE管理曲であれば、ユーザーはいちいち個別の許可を取ることなく、演奏をアップロードできます。但し、既存サイトでも、著作隣接権についてはこのような包括承諾の対象となっておらず、カラオケ音源の利用には別途の問題が生じます。
これに対して、現時点では多くのメタバースサイトでは、現状、このような包括契約を締結していないと考えられ、YouTube、ニコニコ動画、TikTokなどとは異なった注意が必要となります。
YouTube、ニコニコ動画、TikTok | 多くのメタバースサイト | |
他人の曲(JASRAC、NEXTONE管理曲)の自分自身による演奏、歌唱 | 包括契約の対象なので個別の同意不要 | 包括同意契約がないので、個別の同意が必要 |
他人の演奏(カラオケ音源含む)の利用 | 個別の同意が必要 | 個別の同意が必要 |
➁踊ってみた、と明示又は事実上の承諾
既存動画サイトでは「踊ってみた」も人気を博しています。これらの振り付けは多くの場合、振付の創作者が、他のユーザーが踊った上で動画サイトで共有することを望んでいると思われ、少なくともその振付師が当初アップした動画サイトでは明示の承諾があるのではないかと思われます。
他方、他の動画サイトでダンスをアップロードすることや、アバターによるメタバース空間でのダンスについてまで承諾があるかは理論上は若干の疑義があります。多くのコミュニティ発生型のコンテンツは、インターネット上では(少なくとも営利目的でなければ)自由に使用できると考える創作者も多いと思われ、事実上の承諾がある、ないしそこまでは言えなくても事実上問題がないと考えられる場合が多いと思われますが、理論的には「踊ってみた」でも著作権の処理を考える必要がある点、留意が必要です。
なお、踊ってみたでも通常、音楽が一緒に流れると思われ、音楽の著作権処理については、上記①を念頭に置く必要があります。
③メタバースでの利用が「私的利用」といえるか、「公衆」の範囲
著作権の議論をする場合、「私的使用のため」であれば問題ない等と議論されることがあります。
しかし、「私的利用」は複製についての例外、家庭内など個人的な限られた範囲内で使用する目的で、使用する本人がコピーする場合は、著作者から許諾を得なくてもよい、という規定です。
著作権法第30条 著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる |
インターネットでの利用(公衆送信)や演奏などは著作権法上、複製とは異なる概念とされており、私的利用の例外は適用ありません。
なお、公衆送信権や演奏権には「私的利用」の例外はありませんが、これらはあくまで「公衆」に対する送信、「公衆」に対する演奏を問題とするため、完全に閉じたワールドで仲間内で歌う場合等には、著作権上の問題は発生しないと思われます。
[参考:著作物の例]
著作権法第10条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。 一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物 二 音楽の著作物 三 舞踊又は無言劇の著作物 四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物 五 建築の著作物 六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物 七 映画の著作物 八 写真の著作物 九 プログラムの著作物 |
【参考:著作権の内容】
区分 | 支分権 | 著作権法 | 内容 |
著作権 | 複製権 | 21条 | 複製(有形的に再製すること)する権利(2条1項15号) サーバーへのアップロードやハードディスクへのコピーといった有体物に固定することも含む |
公衆送信権 | 23条 | インターネットなどを通じて公衆に情報を送出する権利 | |
展示権 | 25条 | 美術の著作物・未発行写真の著作物の原作品を展示する権利 | |
譲渡権 | 26条の2 | 映画以外の著作物又はその複製物を譲渡する権利 | |
貸与権 | 26条の3 | 映画以外の著作物又はその複製物を貸し出す権利 | |
翻案権 | 27条 | 二次的著作物を作成する権利 | |
二次的著作物利用権 | 28条 | 二次的著作物について利用(上記の各権利に係る行為)する権利 | |
著作者 人格権 |
同一性保持権 | 20条 | 著作物又はその題号を勝手に改変されない権利 |
メタバース上では、自分のアバターを作成しそれを用いることが多く想定されます。 アバターの作成方法及び表現方法によって発生する権利等が異なるため、項目を分けて検討します。
作成方法及び表現方法 | 検討が必要な権利 | 結論 | |
1 | アニメ調のアバター | ||
(a)他者が作成した原画をモデリングする場合 | 著作権 | – 複製権、翻案権又は公衆送信権の侵害となり得る。 – イラスト制作を依頼した場合であっても、著作権は当然に移転されないことに留意が必要。 |
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(b)著作権で保護されない独創性のないキャラクターやロゴをモデリングする場合 | 商標権 | – 企業のロゴやキャラクターのうち、独創性のないものは、著作物として認められない。 – 商標登録されている場合も多いが、一般的なメタバースでアバターとして利用することは、商標権の侵害に該当しない。 |
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2 | リアル調のオリジナルアバター |
肖像権 |
– 撮影の許可を得た写真を元にアバター作成する場合であっても、メタバース上での使用許可を得ていない場合には、肖像権侵害となり得る。 – 他者の容ぼうを用いたアバターの使用は、なりすまし行為に該当し得る。 – なりすましのもとで第三者を誹謗中傷した場合等には、名誉毀損として刑事上・民事上の責任を負う可能性がある。 |
3 | 制作ツールを用いて作成するアバター | 著作権 肖像権 |
– 他者が容易に同一のアバターを作成できる制作ツールでは、著作権が発生しない場合がある。 – 上記2の作成方法と組み合わせた制作ツールもみられるため、その場合には肖像権についても検討が必要となる。 |
①アニメ調のアバター
自らアニメ調のオリジナルアバターを作成してメタバース上で利用する場合には問題ありませんが、他者のイラスト、キャラクター、ロゴ等をモデリングしてアバターを作成するような場合には、著作権や商標権の問題がないか検討する必要があります。
(a)他者が作成した原画をモデリングしたアバター
他者が作成したイラストやキャラクターは、一般的に著作物として保護され1、それを用いてアバターを作成した場合、複製権、翻案権、又は公衆送信権の侵害となり得ます。歌ってみたの議論と同様に、自らしか入れないメタバース上で利用した場合には私的利用の複製として許容されると考えられますが、翻案を加えて新たな著作物を作成した場合には翻案権の侵害、「オープン」なメタバースで利用した場合には公衆送信権の侵害になり得ます。
イラストレーター等に原画の作成を依頼して、それを元にしたアバターを使用する場合でも、あくまでイラストの依頼であってアバター利用の許諾までは得ていない場合、問題が生じ得ます。著作権は、制作発注や代金支払いに伴って当然に移転するものではなく、著作権の譲渡か利用許諾を得る必要があり、かつ、その譲渡や利用許諾の範囲を明確化する必要があります。
著作権の譲渡を行うと著作権そのものが譲受人へ移転します。したがって、たとえ著作者であっても譲渡後は著作物を原則として利用することができなくなります。著作権は、全部譲渡のほか、支分権や期限を区切り一部譲渡することが可能であるため、譲渡する著作権の範囲を明確化しておくことが求められます。なお全部譲渡の場合であっても二次的著作物に関する権利(著作権法27条、28条)に限っては、明記されていなければ移転しないと推定されるため注意が必要です。
著作権の利用許諾は、契約の相手方に使用を認めるに過ぎないため、著作権は相手方に移転しません。許諾を受けた者は、その契約の範囲内で著作物を使用することはできますが、他者に対して著作物を譲渡することや利用許諾をする(特約があれば利用許諾は可能)ことはできません。
したがって、他者が描いたイラストを用いてアバターを作成する場合、権利者との間で、いかなる権利の譲渡または利用許諾がなされるのか明確にしておく必要があります。
(b)独創性のないキャラクターやロゴをモデリングしたアバター
[参考: 著作物の要件] ① 思想または感情の表現であること ② 創作性があること ③ 表現されたものであること ④ 文学、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの |
企業のキャラクターやロゴマークなどで、例えば、独創性のない動物のイラストを用いたキャラクターや単純に文字や図柄を並べただけのマークでは、創作性の要件を満たさないため著作権は発生しないと考えられます。
企業が使用しているキャラクターやマークについては、著作権が認められないものであっても、商標登録がされている可能性が高く、これらをモデリングしてアバターを作成する場合、商標権を侵害することにならないか別途検討が必要です。
この点については、商標は、商品や役務を他人の商品または役務と識別し、出所の同一性を表示するために、営業上の標識を保護する目的で設けられています。商標権の発生には登録が必要ですが、色彩のみからなる商標や立体商標(ヤクルトの容器等)など広く認められています。
他方、商標登録がされているものを使用しても、それがどの業者の商品や役務であると認識できる態様により使用(商標的利用)されていない限り、商標権の侵害には該当しません(商標法26条1項6号)。
したがって、自らのアバターとしてそれらを使用した場合であっても、一般的には商標的利用があるとはいえず、商標権の侵害には該当しないと考えられます。
➁リアル調のオリジナルアバター
3Dスキャナーやカメラ等を用いて、実在する人物の外見を元にアバターを作成する方法も存在するようですが、この場合、対象人物の肖像権を侵害しないかが問題となります。
肖像権は、憲法13条の幸福追求権を根拠として認められる権利であり、「撮影されない人格的利益」と「撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益」を内容とします。許可を得て他者の容ぼうを撮影した場合であっても、それを用いてアバターを作成しメタバース上で使用することの許可を得ていない場合、後者の肖像権の侵害となり得ます。
また、他者の容ぼうを用いたアバターを使用した場合、第三者からは、そのアバターを操作している人物は本人だと認識される可能性が高く、いわゆるなりすましとして問題になり得ます。なりすましのもとで第三者を誹謗中傷したような場合には、本人をそのような人だと思わせてしまう可能性があるため、名誉毀損として刑事上・民事上の責任を負う可能性があります。
③制作ツールを用いて作成するアバター
プラットフォームが提供するツールを用いて、アバターの髪型や目、輪郭、口の形を選択肢から選び、アバターを作成する方法があります。その選択肢が狭く他者が容易に同じアバターを作成できる場合には、創作性の要件を満たさないため、著作権は認められないと考えられます。選択肢が無数にあり細やかな調整をすることができる場合や、外部から購入したオブジェクトやアイテムを持ち込んで作成することができる場合には、創作性の要件は満たすとも考えられますが、思想または感情の表現であるといえるかは検討が必要です。
また、実在の人物の外見を読み込み、それを編集してアバターとする、②の方法と組み合わせたような作成ツールもみられます。この方法を用いているアバター制作ツールでは、デフォルメされた外見となる場合が多いため創作性が認められない可能性が高いものの、よりリアルな容貌に近づいた場合には②で述べた肖像権についても検討することが必要です。
④今後保護される必要があると考えられる権利
これまでは、ゲーム等にてアバターを作成した場合、当該プラットフォームにおいてのみ使用できるのが一般的で、同じアバターを他のプラットフォームで使用できる例は限定的でした。しかし、メタバースの相互運用性が重視される中で、プラットフォームをまたいで使用できるアバターの必要性が高まっています。
エストニアに拠点を置き2014年に設立されたWolf3Dが開発したアバター作成システム「Ready Player Me」では、複数のVRゲームやプラットフォームで同一のアバターを使用できる”ハブ”システムが実装されており、2021年12月末の時点で、このアバター作成システムを採用している企業は1000社以上にのぼります。
メタバースの相互運用性が高まり、現実世界と同じようにメタバース上で他社と取引を行ったり金銭を稼ぐことが当たり前になった世界においては、現実世界の外見と同じように、アバターそれ自体に肖像権等に類似する権利が必要となり得ると考えられます。
他方、アバターは外見を自由に変更することや、複数のアバターを状況により使い分けることができるため、現実の人物と同様の権利をアバターに認める場合、どのような案件でアバターを保護すべきか明確ではなく、別途検討が必要です。
従来のゲーム等では、ユーザーは予め用意されたコンテンツを利用するのが一般的でしたが、メタバースにおいてはユーザーがワールドなどのコンテンツを作成し、そのワールドに他のユーザーを来訪させる等ができるものが多くあります。以下、そのようなユーザーが作成したコンテンツ(User Generated Contents、以下「UGC」)に係る権利と取扱いについて検討します。
UGCについては、著作物の要件を満たした場合、著作権は創作者に帰属するのが原則です(著作権法17条1項)。しかし、ワールドの著作権を創作者に帰属させた場合、(i)UGCのプラットフォーマー及び他のユーザーへの公開使用、(ii)プラットフォーマー及びユーザーが必要な範囲で行うUGCの複製や二次的創作物の制作等、(iii)プラットフォーマーによるサービスの維持、宣伝など必要な範囲で行うUGCの無償利用等、プラットフォーマーがサービスの提供を行う上で必要とする行為が、ワールド作成のユーザーにより制限又は禁止することが可能となります。
他方、ワールドなどのUGCの著作権を創作者に一切帰属させない旨を利用規約として合意を求める場合には、ユーザーの創作意欲や参加意欲を減退させたり、自らの知的財産をワールド上で使用することを避ける要因になると考えられます。
そのため、UGCについてプラットフォームがどのような権限を必要とするのかを検討したうえで、ユーザーの権利保護とプラットフォーマーの運営上の必要性の調節を志向することが望ましいと考えられます。
上記のようなユーザーの表現行為や創作活動、とりわけ第三者の権利を侵害し得る行為について、サービスを提供するプラットフォーマーはどのように対応すべきかを検討します。
プラットフォーマーは、ユーザーとの合意事項として利用規約を定めているが、一般的であり、当該利用規約に基づく責任を負います。利用規定に基づいて対応を行うのが通常と考えられます。
もっとも、自由度の高いメタバースにおいては、上記で検討したような一般的なインターネットサービスでは想定されていなかった権利侵害行為が生じ得ます。そのため、利用規約に基づく対応をスムーズに行うためには、プラットフォーマーにおいて、予めユーザーの属性やサービスの内容を考慮して、トラブルになり得る表現行為や創作活動を洗い出しておく必要があります。ただしユーザーの自由度を過度に制約することの無いよう、専門家にも相談の上、それぞれ法的にどのように問題になるのかを検討しておくことが望ましいと考えられます。そのうえで、権利侵害行為や違法行為に該当するものについては明確に禁止・制限し、さらに該当規約に違反した場合にプラットフォーマーがどのような措置をとることができるのかについても規定することを検討する必要があります。
他方で、UGCのようなユーザーの創作活動を促進させたい場合には、利用規約で一律に権利侵害罪行為を制限するものではなく、ユーザー間で簡易な利用許諾や権利譲渡の仕組みを提供することなども考えられます。
なお利用規約でカバーしきれないトラブルが生じた場合には、プラットフォーマーは、プロバイダー責任制限法に基づく責任を負う可能性があると考えられます。プロバイダ責任制限法2では、例えば、下記の要件に基づく損害賠償や発信者情報開示などの責任があり留意が必要です。
要件 | |
損害賠償 | (i) 情報の流通による権利侵害 (ii) 送信を防止することが技術的に可能 (iii)権利侵害を知っていたときなど |
発信者情報開示 | (i) 情報の流通による権利侵害が明らか (ii)発信者情報が損害賠償のために必要その他正当な理由 |
同法の要件該当性の判断をスムーズに行うためにも、上述した該当プラットフォーム特有の権利侵害公の検討をしておくことがコンプライアンス上有意義であると考えられます。
留保事項
本稿の内容は、法令上、合理的に考えられる議論を記載したものにすぎず、関係当局の確認を経たものではありません。本稿は、メタバースにおける法的論点について議論のために纏めたものにすぎません。具体的な案件における法的助言が必要な場合には、各人の弁護士等にご相談下さい。