現在、世界中でDecentralized Finance(DeFi、分散型金融)が勃興しつつあり、その一分野であるイールドファーミング/リクイディティマイニングも注目を集めている。
イールドファーミング/リクイディティマイニングの安全性はまだ確認されていないが、今後、より発展する可能性もあると考え、その一つであるCompoundの仕組みを紹介し、日本法上での取り扱いを検討する。
用語 | 解説 | |
1 | DeFi | 証券、保険、デリバティブ、レンディングなど金融分野において、ブロックチェーンを活用したアプリケーションによって構成される金融システムを指す。中央集権の管理者を必要とせず、分散型ネットワークによる自律したエコシステムで、誰でもアクセス可能かつ透明性の高い金融システムやプロジェクトを総称する。 |
2 | イールドファーミング | 暗号資産やステーブルコインをDeFiのレンディングなどで運用し、利息収入などの受動的な収入を得ること。 |
3 | リクイディティマイニング | DeFiプラットフォームに流動性を提供することによって、利息以外の何らかの報酬を得ること。 |
現時点の公表資料等を分析する限り、下記のように整理され本邦の規制対象外と考えられるのではと思われる。但し、事実関係により結論は異なりうる等、本稿末尾の留保事項をご参照頂きたい。
項目 | 結論 | |
1 | cTokenの性質 | 電子記録移転権利ではなく暗号資産となると考えられる。なお、レンディングに対しリワードが与えられるが、これは収益の分配ではないと考えられ、よってcTokenは集団投資スキームや投資信託の権利を表すものではないと考えられる。 |
2 | CompTokenの性質 | 暗号資産となる。 |
3 | レンディングと貸金業法等の規制 | レンディングは日本法上の解釈としては消費貸借又は消費寄託になると思われる。暗号資産の消費貸借及び消費寄託、ステーブルコインの消費貸借及び消費寄託のいずれに対しても、貸金業法や銀行法、出資法などの規制は適用されない。 |
4 | スマートコントラクトへのロックとカストディ規制 | ステーブルコインのスマートコントラクトへのロックには規制はない。暗号資産のスマートコントラクトへのロックは消費寄託と考えられる可能性があるが、その場合でも、秘密鍵を管理して暗号資産を移動できる権限を有する管理者が存在しない場合、カストディ規制の適用はない。 |
5 | ボロウィングと貸金業法等の規制 | ボロウィングには、貸金業法等の規制は適用されない。 |
6 | cTokenの発行 | レンディングに対して、それを証するものとしてcTokenが発行されるが、これは暗号資産の売買や交換には該当せず、暗号資産交換業には該当しない。 |
7 | COMPTokenの発行 | 貸手・借手にガバナンストークンであるCOMPTokenが配布されるが、これは暗号資産の売買や交換ではなく、暗号資産交換業には該当しない。 |
イールドファーミング(直訳すると利回り農業)とは、暗号資産やステーブルコインをDecentralized Financeのレンディングなどで運用することにより、利息収入などの受動的な収入を得ることをいう。
イールドファーミングとよく同時に行われる行為として、リクイディティマイニング(直訳すると流動性採掘)がある。DeFiに流動性を提供することにより利息や配当以外の何らかの報酬を得ることをいい、例えば、Compoundでは流動性提供者にCOMPTokenというガバナンストークンが提供される。
Compoundは、Ethereumのメインネット上で稼働する分散型の暗号資産の銀行/マネーマーケットであり、イールドファーミング/リクイディティマイニングの最大手プラットフォームの一つである。
ユーザーは自己保有のトークンをコントラクトに貸し付けて収益を得ることができる。また、ユーザーはコントラクトに担保を提供することにより、コントラクトからトークンを借り入れることをできる。
Compoundは分散的、自律的に運営されており、特定の中央集権の管理者が存在しない銀行/マネーマーケットを目指しているようだ。具体的な貸出や借入の仕組みは以下のとおりと思われる。
Compoundの取扱通貨と利率1
日本法上の規制の検討の前提として、各トークンの性質について検討する。
まず、cTokenが暗号資産となるのか、電子記録移転権利等として有価証券となるのかが問題となる。
Compoundのレンディングでは、ユーザーがコントラクトに対して暗号資産やステーブルコインを貸し付け、それに対して利息を得られる。他方、コントラクトはユーザーに暗号資産等を貸し出すことにより利息を得る。Compoundと同等の経済的仕組みは、中央集権型金融では、銀行業として行われる場合もあり、また証券会社のMRF/MMFとして行われる場合もある。更に日本のクラウドレンディングはファンド型のスキームで行われている。 日本法で評価した場合に、Compoundのレンディングが貸付や預託になるのか、ファンド(集団投資スキーム)やMMF(外国投資信託)に該当するのかにより、cTokenの法的評価が異なってくることから、レンディングの法的性質を検討する必要がある
日本法でのファンド(集団投資スキーム)の定義は、概ね下記となる。
日本法によるファンド (A) ①組合契約、②匿名組合契約、③投資事業有限責任組合契約、④有限責任事業組合契約、⑤社団法人の社員兼、⑥その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。) (B) 当該権利を有する者(「出資者」)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるもの=暗号資産を含む。)を充てて行う事業(「出資対象事業」)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利 (C) 次のいずれにも該当しないもの イ 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利 ロ 出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする当該出資者の権利 (以下略) 外国法によるファンド (D) 外国の法令に基づく権利であって、上記の権利に類するもの |
上記(A)の「その他の権利」の概念は非常に広く、法形式の如何は問わず、①~⑤は例示列挙に過ぎないとされている。ただ、法文上は「権利」とされ、完全な分散型金融で発行されたトークンは「権利」に該当しないという議論はありえよう。しかしながら、発行体がいないという点で同様であるビットコインに関し、現在では何らかの権利性を認める見解が有力であり2、本稿との関係では、スマートコントラクトに対しても一応は何らかの権利が成り立つ、という前提で検討することとする。
また、上記(B)のうち、「事業に充てて」という点も広く解釈されており、例えば、スマートコントラクトが出資を受けた暗号資産等の貸付を行う、という行為も事業と考えられる。
よって上記(C)に関し、Compoundでレンダーが得る収入が日本法上、利息なのか収益配当なのかが問題となる。この点、利息と収益配当の限界事例は判然としないが、通常の利息の場合には予め定められた利率(固定利率の場合もあれば変動利率の場合もある)で支払いがなされ、収益の場合には事業で実際に得られた収入を踏まえて事後的に分配額が決定される。また、利息の場合、元本全額の償還が予定されるが、収益の場合、事業が失敗した場合には損失が分配されることもある、という差があると思われる。
Compoundの利息はマーケットの需要と供給に応じて日々変動はするものの、オラクルが需要と供給を見ながら予め定められた利率が適用されるものと思われ、かつ損失の配分も予定されていないように思われる。そうすると、日本法上も、収益配当ではなく利息の支払いと考えられよう。
以上のように考えると、Compoundのレンディングは集団投資スキームではないと議論可能と考えられる。
なお、経済的にはMMFにも類似することから外国投資信託への該当性も問題となる。この点は、形式的に信託ではないことや、金銭を信託するものではなく暗号資産を移転するものであること、集団投資スキームでの議論と同様に、収益配当ではなく利息と考えられることから、外国投資信託には該当しないと考えられる。
以上のように、Compoundは集団投資スキームでも投資信託でもない。そうだとするとレンディングの法的性質は消費貸借又は消費寄託のいずれかに該当する(このいずれに該当するかは下記IVの2で議論する)。そして、cTokenは消費貸借又は消費寄託に対して発行されるトークンであり、ERC-20規格によって発行されることから、外部で他の暗号資産と交換可能と思われる。従ってcTokenは資金決済法上の暗号資産に該当すると考えられる。
COMPTokenはガバナンストークンであり、配当等を得られるものではない。また、ERC-20規格によるトークンであり上場されていることから、外部の取引所等で他の暗号資産と交換可能である。COMPTokenは日本法上の暗号資産に該当すると考えられる。
暗号資産の消費貸借及び消費寄託、ステーブルコインの消費貸借及び消費寄託のいずれにも、貸金業法や銀行法、出資法などの規制は適用されない。
レンディングの結果、ステーブルコインや暗号資産がスマートコントラクトにロックされる。
まず、ステーブルコインのロックには規制はない。
他方、暗号資産については、消費貸借であれば規制はなく、カストディ(寄託)であれば暗号資産交換業規制が適用される可能性がある。
民法上、「消費寄託は、目的物(の価値)を寄託者が自ら保管する危険を回避しようとするものであって、寄託の利益が寄託者にあるのに対し、消費貸借は、借主がその目的物を利用するためのものであり、ここに消費寄託と消費貸借の違いがある」3とされる。そのように考えると、Compoundでは、スマートコントラクトが運用を行うことに主眼があり、消費貸借と考えることができる。
他方、寄託と貸付の差異につき、暗号資産交換業者のガイドラインでは下記のようにされている。
ガイドライン Ⅰ-1-2-2③ 内閣府令第23条第1項第8号に規定する暗号資産の借入れは、法第2条第7項第 4号に規定する暗号資産の管理には該当しないが、利用者がその請求によっていつでも借り入れた暗号資産の返還を受けることができるなど、暗号資産の借入れと称して、実質的に他人のために暗号資産を管理している場合には、同号に規定する暗号資産の管理に該当する。 |
Compoundにおけるレンディングは、いつでも返還を求めることが出来るようであり、上記ガイドラインとの関係では、寄託と考えられる可能性がある。
ただ、オーバーナイトのローンが存在し、他方、定期預金も存在するなど、上記のガイドラインの「いつでも借り入れた暗号資産の返還を受けることができるなど」はあくまで例を示すものであり決定的なものではなく、「暗号資産の借入れと称して、実質的に他人のために暗号資産を管理している場合」となるかが重要と思われる。
Compoundのレンディングは消費貸借であると考えて良いのでは、と思われるが、仮に寄託と考えられても、Compoundでは、スマートコントラクトに対する寄託であり、管理者は存在しない。Compoundでは秘密鍵を管理する事業者はおらず、コントラクトからの引き出しは(a)発行されたcTokenを返却すること、(b) cTokenを担保に提供して借入をすること、によってのみ可能なようだ。Codeに従わずに引き出しできる者がいない点で、通常の取引所やカストディアンとは異なる。
本邦のカストディ規制では「事業者が利用者の暗号資産を移転するために必要な秘密鍵を一 切保有していない場合には、当該事業者は、主体的に利用者の暗号資産の移転を行い得る状態にないと考えられますので、基本的には、資金決済法第2条第7項第4号に規定する「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当しないと考えられます。」(令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメント結果9番)等とされており、Compoundで秘密鍵を管理する事業者がいない場合、仮に消費寄託類似の行為とされたとしても、カストディ規制には服さないと考えられる。
CompoundはユーザーからcTokenを担保に受け取り、暗号資産を貸し出す。この性質は消費貸借となると思われるが、暗号資産の消費貸借には特に規制はない。
レンディングに対して、それを証するものとして暗号資産であるcTokenが発行されるが、これは暗号資産の売買や交換には該当せず、暗号資産交換業には該当しないと議論可能と考える。
暗号資産交換業では、「暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換」(資金決済法2条7項1号)を交換業として規制する。一般に売買とは「当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生」じ(民法555条)、交換は「当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる」(民法586条)。この売買や交換と消費貸借(民法587条)や消費寄託(民法566条)とは区別されている。
Compoundでは、cTokenを返還すればロックした暗号資産を取り戻せる等の仕組みがあり、このような消費貸借又は消費寄託の場合、ユーザーからコントラクトに暗号資産の財産権が移転した訳ではない、と考えられよう45。
その場合、レンディングを証するものとしてcTokenを発行すること自体には規制はない。
現在、Compoundではレンディングを行ったユーザー、ボロウィングを行ったユーザーに対して、COMPTokenの発行がなされる。COMPTokenの発行は、Compoundを利用したことによる報酬、一種のおまけ的なものと考えられ、そうだとすれば暗号資産の売買等には該当せず、規制はない。
以 上
本年5月1日施行の金商法の改正により「暗号資産」が「金融商品」に含まれることになりました。その関係もあり、幾人かから暗号資産の投資助言について尋ねられましたので、整理しておきます[1]。
結論としては以下のようになると思われます。
① 暗号資産の現物取引に関する助言は、投資助言業の登録は不要 ② 暗号資産デリバティブ取引に関する助言は、投資助言業の登録が必要 ③ 同一の暗号資産に関し、現物取引とデリバティブ取引が行われている場合がある。この場合の助言は、いずれに対する助言なのか不明瞭。助言の内容、同一の板か違う板か、対象とする取引の商品性なども踏まえて、慎重な検討を要する。 ④ 暗号資産の信用取引に関する助言は、投資助言業の対象外。但し、信用取引に対する助言なのかデリバティブ取引に対する助言なのか慎重な検討を要する。 |
金商法上、投資助言・代理業を行うためには金融商品取引業者としての登録が必要です(金商法28条、29条)
金商法2条8項11号により、金融商品に関する投資助言とは、①金融商品の価値等の分析に基づく投資判断(投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断をいう。)に関し、②口頭、文書(一定の物を除く)その他の方法により助言をすることを約し、③相手方が報酬を支払うことを約束する、という要件になります。
本年5月1日施行の金商法の改正により「暗号資産」が「金融商品」に含まれることになりました(金商法2条24項3号の2)。そのため、暗号資産デリバティブ取引の投資判断に関して助言を行うには投資助言・代理業の登録が必要です。なお、具体的商品の推奨のほか、暗号資産デリバティブ取引のシグナル配信、コピートレードサービスの提供、なども場合により投資助言に該当すると思われますので、留意が必要です。
これに対し、暗号資産は金融商品ですが、通常は上記1の下線に記載される有価証券でもなくデリバティブ取引でもありません。
従って、暗号資産現物に限定して行う助言は、金商法の文言上は、投資助言には該当しません。
上記2に関わらず、ビットコインなどの暗号資産については、同一の暗号資産に対して、世の中では現物取引とデリバティブ取引の両者が行われています。この場合、具体的商品に対する助言が、規制されない現物取引の助言となるのか規制されるデリバティブ取引に対する助言になるのか検討することが必要です。
例えば、取引所の同一の板でビットコイン現物とビットコインデリバティブの取引が行われている場合、自らの助言が現物に関する助言に過ぎないと主張しても併せてデリバティブ取引に対して助言しているという方向で議論されると思われます。
他方、取引所で現物取引とデリバティブ取引の板は別のものとして設定される場合もあります。デリバティブ取引の価格はできるだけ現物の価格と近似するよう設計はされているものの、必ずしも現物の価格と一致するものではなく、相当に乖離する場合もあるようです。この場合、現物に対する助言とデリバティブに対する助言は区別して議論できるのではないかと思われますが、助言の内容、対象となる取引の商品性なども踏まえて慎重な検討が必要です。
暗号資産のレバレッジ取引には、金商法で規制される暗号資産デリバティブ取引に該当する取引と、資金決済法で規制される信用取引に該当する取引があります。
金商法の投資助言規制は有価証券や金融商品デリバティブ取引に関する規制であり、信用取引に対する助言は文言上は金商法の規制対象外となります。
ただし、具体的な商品が信用取引なのかデリバティブ取引なのかは、必ずしも明確ではない場合もあります。特に他社が取り扱うレバレッジ取引に助言する場合には、そもそもレバレッジ取引の法的構成が外部からは不明確な場合も多いため、慎重に検討する必要があります。
暗号資産信用取引とは暗号資産交換業の利用者に信用を供与して行う暗号資産の交換等(暗号資産交換業府令1条2項6号)をいい、例えば、 下記のような取引があります。
信用取引の例 ① 100万円の担保を入れることにより、200万円を借り入れ、当該200万円でBTCを購入 ② 100万円を担保に入れることにより、3BTCを借入、当該BTCを売却 |
これに対し、金商法が定めるデリバティブ取引には下記のものが含まれています。
デリバティブ取引 (1) 原資産を対象とする取引類型 ① 金融商品先物取引・金融商品先渡取引(金商法2条21項1号、22項1号) ② 金融商品等オプション取引(同条21項3号・22項3号) (2) 参照指標を対象とする取引類型 ① 金融指標先物取引・金融指標先渡取引(同条21項2号・22項2号) ② 金融商品等オプション取引(同条21項3号・22項3号) ③ 金融指標オプション取引(同条21項3号ロ括弧書・22項4号) ④ スワップ取引(同条21項4号・4号の2・22項5号) (3) それ以外の取引類型 ① クレジット・デリバティブ取引(同条21項5号・22項6号) |
金商法や資金決済法の条文と照らしながら具体的商品の該当性を検討していくことが必要となります[2]
留保事項
本稿の内容は関係当局の確認を経たものではなく、法令上、合理的に考えられる議論を記載したものにすぎません。また、当職の現状の考えに過ぎず、当職の考えにも変更がありえます。
本稿は議論用に纏めたものに過ぎません。具体的案件の法律アドバイスが必要な場合には各人の弁護士等にご相談下さい。
参考条文
「投資助言・代理業」
金商法28条3項
この章において「投資助言・代理業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう。
一 第2条第8項第11号に掲げる行為
二 第2条第8項第13号に掲げる行為
「投資助言」
金商法2条8項
11 当事者の一方が相手方に対して次に掲げるものに関し、口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約(以下「投資顧問契約」という。)を締結し、当該投資顧問契約に基づき、助言を行うこと。
イ 有価証券の価値等(有価証券の価値、有価証券関連オプション(金融商品市場において金融商品市場を開設する者の定める基準及び方法に従い行う第28条第8項第3号ハに掲げる取引に係る権利、外国金融商品市場において行う取引であつて同号ハに掲げる取引と類似の取引に係る権利又は金融商品市場及び外国金融商品市場によらないで行う同項第4号ハ若しくはニに掲げる取引に係る権利をいう。)の対価の額又は有価証券指標(有価証券の価格若しくは利率その他これに準ずるものとして内閣府令で定めるもの又はこれらに基づいて算出した数値をいう。)の動向をいう。)
ロ 金融商品の価値等(金融商品(第24項第3号の二に掲げるものにあつては、金融商品取引所に上場されているものに限る。)の価値、オプションの対価の額又は金融指標(同号に掲げる金融商品に係るものにあつては、金融商品取引所に上場されているものに限る。)の動向をいう。以下同じ。)の分析に基づく投資判断(投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断をいう。以下同じ。)
「金融商品」
金商法2条24項
この法律において「金融商品」とは、次に掲げるものをいう。
一 有価証券
二 預金契約に基づく債権その他の権利又は当該権利を表示する証券若しくは
証書であつて政令で定めるもの(前号に掲げるものを除く。)
三 通貨
三の二 暗号資産(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項に規定する暗号資産をいう。以下同じ。)
金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針VII-3-1 (2)②c
②投資助言・代理業に該当しない行為
イ. 不特定多数の者を対象として、不特定多数の者が随時に購入可能な方法により、有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断(以下「投資情報等」という。)を提供する行為
例えば、以下aからcまでに掲げる方法により、投資情報等の提供を行う者については、投資助言・代理業の登録を要しない。
ただし、例えば、不特定多数の者を対象にする場合でも、インターネット等の情報通信技術を利用することにより個別・相対性の高い投資情報等を提供する場合や、会員登録等を行わないと投資情報等を購入・利用できない(単発での購入・利用を受け付けない)ような場合には登録が必要となることに十分に留意するものとする。
a. 新聞、雑誌、書籍等の販売
(注)一般の書店、売店等の店頭に陳列され、誰でも、いつでも自由に内容をみて判断して購入できる状態にある場合。一方で、直接業者等に申し込まないと購入できないレポート等の販売等に当たっては、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。
b. 投資分析ツール等のコンピュータソフトウェアの販売
(注)販売店による店頭販売や、ネットワークを経由したダウンロード販売等により、誰でも、いつでも自由にコンピュータソフトウェアの投資分析アルゴリズム・その他機能等から判断して、当該ソフトウェアを購入できる状態にある場合。一方で、当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を受ける必要がある場合には、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。
c. 金融商品の価値等について助言する行為
(注)有価証券以外の金融商品について、単にその価値やオプションの対価の額、指標の動向について助言し、その分析に基づく投資判断についての助言を行っていない場合、又は報酬を支払うことを約する契約を締結していない場合には、当該行為は投資助言業には該当しない。
例えば、単に今年の日本の冬の平均気温について助言するのみでは、投資助言業には該当しない。
以 上
[1] CoinPost「金融庁、ビットコイン等の投資助言行為で警告|該当しないケースは」 https://coinpost.jp/?p=154943、及び、増田雅史弁護士の下記Twitterも参考になりますので合わせてご参照下さい。
https://twitter.com/m_masuda/status/1268382240779583489?s=20
[2] 松尾直彦「金融商品取引法〔第5版〕」73頁を参考に記載
ファンドの種類 | 例 | 金商法における有価証券の種類 | 公募における金商業登録の要否 | 開示規制 | |
自己募集 | 募集の取扱い | ||||
法人 | 投資法人(国内) | 1項有価証券 | 実施不可 | 第一種金商業 | 運用資産の50%超を有価証券に対する投資に充てるファンドの場合、開示規制の対象(なお、私募の場合は開示規制の対象外) |
投資法人(海外) | 1項有価証券 | 実施不可 | 第一種金商業 | ||
株式会社 | 1項有価証券 | 登録不要 | 第一種金商業 | ||
合同会社 | 2項有価証券 | 登録不要 | 第二種金商業 | ||
信託 | 投資信託(国内) | 1項有価証券 | 第二種金商業 | 第一種金商業 | |
投資信託(海外) | 1項有価証券 | 第二種金商業 | 第一種金商業 | ||
組合 | 民法に基づく任意組合 | 2項有価証券 | 第二種金 | 第二種金 | |
商法に基づく匿名組合 | 2項有価証券 | 第二種金商業 | 第二種金商業 | ||
投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合 | 2項有価証券 | 第二種金商業 | 第二種金商業 | ||
有限責任事業組合契約に関する法律に基づく有限責任事業組合 | 2項有価証券 | 第二種金商業 | 第二種金商業 |
ファンド持分が適格機関投資家等(全てが適格機関投資家である場合又は出資者に1名以上の適格機関投資家と適格機関投資家以外の者で政令で定めるもの(特例業務対象投資家)が49人以下の場合)にのみ提供されている場合、ファンドは金融商品取引業者としての登録をする必要はなく、より簡易な手続である適格機関投資家等特例業務の届出を金融庁に行うことで足ります(いわゆる63条特例)。この制度は自己私募と自己運用の場合にのみ利用することができます。そのため、ファンド持分の私募の取扱いをする事業者は、当該制度の対象外であり、第二種金融商品取引事業者として登録する必要があります。
組合型ファンドに関する規制と63条特例の詳細については、日本のファンド規制に関する当事務所の記事をご覧ください。