日本で事業を展開する場合、法人格を有する会社形態によることが一般的です。会社には、次の4つの類型があります。
いずれも法人格を有しており、株式会社及び合同会社については全ての株主の責任は出資額に限定されます(有限責任)。ほとんどの企業は株式会社を利用していますが、近年、合同会社を選択する傾向があります。特に、GoogleやAmazonなどのIT企業は、合同会社を利用するケースが多くなっています。その理由としては、株式会社と比較して合同会社の運用コストが低く、米国税制上、パススルー課税が実現できる点が考えられます。
もし、他者からの資本調達を目的としているのであれば、それを簡単な手続により実現できる株式会社を選択することが適切です。
また、投資事業を行う場合には、組合をヴィークルとして利用するのが一般的です。組合には、次の類型があります。
投資事業有限責任組合は投資目的でのみ利用されます。詳細については、下記の一般的なファンド構造に関するQ&Aを参照してください。
外国会社が日本で事業を展開するにあたり、子会社を設立するのではなく、日本に支店や駐在員事務所を設置することも考えられます。支店や駐在員事務所は法人格を持たない点で子会社と異なります。また、駐在員事務所については、その活動が市場調査など一定の範囲に限定されており、収益を伴う営業活動を行うことができないことに注意を要します。
また、日本国内の代理店を利用する方法もあります。この場合、駐在員事務所や支店を設置する場合と異なり、日本国内の販売業者との契約が必要となり、また、販売業者の持つネットワークや販売能力の適切な評価が必要となります。
外国為替及び外国貿易法に基づき、ソフトウェア開発や情報処理を含む国家安全保障に関連する特定の事業を目的とする日本企業への投資は、対内直接投資又は特定取得として日本における事前届出規制の対象となります。これは通常、上場企業と非上場企業いずれの発行株式の取得にも適用されます(上場企業の場合は1%以上の取得の場合)。
投資規制の対象となる全ての上場企業は、次のリンク先のリストで確認することができます。https://www.mof.go.jp/international_policy/gaitame_kawase/fdi/list.xlsx
対象会社の支配を伴わない金融機関や投資ファンドなど特定の種類の投資家による投資ついては、事前届出規制の免除制度の適用があります。
事前届出規制の対象となる事業以外の事業分野に係る企業への投資については、事後報告規制の対象となることがあります。
スタートアップにおいては、通常、株式会社(KK)か合同会社(GK)を選択されます。
日本のスタートアップにおいては、東京証券取引所での新規上場を目指し、株式会社形態で設立され、その後充実した機関設計が採られることが一般的です。
外国法人が日本で事業を開始する場合にも当てはまりますが、外国法人が日本で子会社を設立する際、株式会社が選択されることが一般的です。ただ、株式会社と比較すると合同会社は、より柔軟かつ容易に運営することが可能であることから、合同会社が採用されることもあります。
株式会社と合同会社のいずれも全ての株主の責任は出資額に制限されます。
更に、有限責任事業組合(LLP)などと異なり、合同会社が上場を目指して株式会社に組織変更することなども可能です。
法人の種類の変更(組織変更)が可能か否かは、当初の法人の種類によります。また、法人の種類により変更できる法人の種類も異なってきます。例えば、合同会社(GK)から株式会社(K.K.)への組織変更は可能ですが、有限責任事業組合(LLP)から株式会社に組織変更することはできません。
必要ありません。
株式会社(KK)の場合でも、取締役会や監査役の設置は必須ではありません。もっとも、株式市場への上場を目指す場合には、取締役会が必須となります。監査役については、取締役会設置会社においては、(監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社を選択する場合を除き)、監査設の設置も必須となります。また、特定の事業の許認可を得る場合などにも、特定の機関の設置が求められることがあります。
会計監査人は、(i) 上場企業(ii)監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社、および(iii)大会社(資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の会社)は設置が必要となります。
会社設立には最短で1〜2週間かかります。なお、定款の作成や認証、代表取締役の印鑑証明書の取得などの手続を要するため1ヵ月ほどの期間を見込んでおいた方が良いでしょう。また、外国人が発起人となる場合には、更に1ヵ月ほど見込んでおいた方が良いと思います。特に、日本語ができない外国人の場合、会社設立書類を英語に翻訳する必要があるため、手続に通常よりも時間がかかります。設立手続を効率的に行うために、先ずは専門事業者が会社を設立し、設立後に株式を譲り受ける方法もあります。
株式会社の設立費用は、定款認証手数料が50,000円、定款に貼付する印紙代が40,000円(電子定款の場合は印紙代不要)、設立登記時の登録免許税は資本金額によりますが最低でも150,000円掛かります。合同会社の設立費用は、定款に貼付する印紙代が40,000円(電子定款の場合は印紙代不要)、設立登記時の登録免許税は資本金額によりますが最低でも60,000円掛かります。
その他、弁護士や司法書士を利用する場合の費用も必要です。
政府や地方自治体において、数多くのインセンティブプログラムがあります。政府のインセンティブプログラムの概要は、日本貿易振興機構(ジェトロ)のページに掲載されています。税務に関するアドバイスが必要な場合は、適切な税理士をご紹介します。
創業者株主間契約は、創業者間で、設立構想を計画化し、支出する金額、業務内容その他の会社設立に関する共同創業者の義務を明確化させるのに役立ちます。全ての創業者の役割と責任を定義し、進捗管理や意思決定のプロセスを詳細に定めます。創業者の出資、権利確定、補償、解任または離脱、知的財産、紛争解決に関しての定めも重要です。適切な創業者株主間契約により、共同創業者間の利益を調整し、また、創業者の社内のプロセスを最適化し、共同創業者間の紛争リスクを軽減を図ることができます。また、共同創業者間の紛争が生じた場合でも、その効率的な解決に役立てることができます。
日本の労働法令は従業員を手厚く保護しています。いったん雇用された従業員を解雇することは困難です。そのため、特に、スタートアップや小規模企業などを中心に、従業員雇用の代替手段として、外部の請負業者や個人事業主を利用することで、長期雇用や社会保険といった不要な人件費による負担回避を検討することがあります。
資金決済法に基づく暗号資産(資金決済法第2条第5項)の定義には、ビットコイン(1号暗号資産)やユーティリティトークン(2号暗号資産)などの暗号資産が含まれるため、資金決済法の規制を受けます。
また、株券や社債をトークン化した権利は、暗号資産ではありませんが、一般に、金融商品取引法に基づく電子記録移転有価証券表示権利等(金商法第29条の2第1項8号、金商業府令案第1条第4項第17号、第6条の3)の定義に含まれ、金商法の規制を受けます。
インヴェストメントトークンによる投資では、暗号資産の所有者はプロジェクトのキャッシュフローに参加することができ、典型的には伝統的な証券を証票するものとして機能します。セキュリティトークン(ST)の公募は、一般に開示規制(金商法第4条第1項)の対象となり、金融庁へ金融商品取引業者として登録(金商法第29条)する必要があります。
また、STを販売その他の仲介業務を行う事業者は、通常、第一種金融商品取引業者(金商法28条第1項第1号、第2条第8項第9号)として金融庁への登録を行う必要があります。
暗号資産(資金決済法第2条第5項)とST(電子記録移転権利(金商法第2条第3項))は相互に排他的に規制がなされており、金融商品取引法で電子記録移転権利として定義されているトークンは資金決済法上の暗号資産には該当しません。逆も同様です。
要件は、トークンが公募として発行されるか、私募として発行されるかによって異なります。大まかに言って、公募は私募に比べて厳しい規制が課せられる可能性があり、一定の場合を除いて、有価証券届出書、目論見書等の準備と、金融庁への金融商品取引業者としての登録が必要です。自社でSTOを実施する企業は、トークンの設計によっては、第二種金融事業者として登録するか、第一種金融商品取引業者として登録されている事業者にトークンの販売を委託する必要があります。
私募の場合、有価証券届出書や目論見書の作成といった開示規制は課されませんが、一定の場合を除き、第二種金融商品取引業者として登録する必要があります。
セキュリティ・トークン(1項有価証券)の公募は、50名以上の者を相手方として新しく発行されるセキュリティ・トークンの取得の申込みを勧誘することのほか、私募に該当しない取得勧誘であると理解されています。勧誘という用語は広く解釈され、一般に、インターネットを介した取得の申込みの勧誘も含まれます。また、日本語での勧誘に限られません。
セキュリティ・トークン(1項有価証券)の私募は、適格機関投資家(QII)私募、特定投資家私募および少人数(50名未満)私募の3つの類型があります。 一定の条件のもとで、少人数私募の人数から適格機関投資家の人数を除外することができます。
セキュリティトークンを用いた出資の自己募集・私募、募集・私募の取扱い、運用等は、基本的に、金融商品取引業者のみ実施することができます。
トークンの設計や投資主体の法的性質、セキュリティトークンの取扱い内容等により、第一種金融商品取引業者や第二種金融商品取引業者として登録することが必要になる場合があります。
ステーブルコインの内容により規制がなされます。一部のステーブルコインは、資金決済法の定める暗号資産として、その他はマネーオーダー(小為替)としてみなされる可能性があります。トークンを伴うステーブルコインは、集団投資スキームに該当する可能性があり、その場合、金融商品取引法の対象となります。
暗号資産取引所にステーブルコインを上場させることは理論上可能です。
ただし、ステーブルコインの上場は、実験的に上場されたものが1つあるのみです。ステーブルコインに適用される法規制は、コインの設計により異なります。ステーブルコインが資金決済法上の暗号資産に該当する場合には、上場が簡単になります。
日本のファンドは、(i)信託型(ユニットトラストなど)、(ii)法人型(J-REITのような投資法人)、および(iii)組合型の各類型があります。
組合型ファンドには、(i)民法に基づく任意組合、(ii)商法に基づく匿名組合、(iii)投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合、および(iv)有限責任事業組合契約に関する法律に基づく有限責任事業組合があります。
ファンドの種類により、業規制(金商業登録の要否)や開示規制が異なります。概要は以下のとおりです。
運用資産の50%以上を有価証券に投資するファンドの場合、無限責任組合員(GP)/資産運用管理者は、原則として、投資運用業者として金融庁へ登録する必要があります。
また、主として、商品(コモディティ)や不動産に投資するファンドの資産運用管理者は、許可が必要になることがあります。その他のアセットクラスへの投資を行うファンドを運用する場合、これらの要件はありません
業務執行組合員(GP)が、(i)自己募集を行い、又は(ii)ファンド資産を自己運用する場合、それぞれ第二種金融商品取引業、投資運用業の登録を受けなければなりません。しかしながら、適格機関投資家等特例業務に該当する場合には、業登録を経ずに、届出(63条の届出)により、業務を行うことが可能となります。
適格機関投資家等特例業務においては、ファンド持分の取得勧誘は、1人以上の適格機関投資家及び49人以下の適格機関投資家以外の投資家に限定されます。なお、かかる投資家の背後に適格機関投資家以外の投資家がいる場合、適格機関投資家等特例業務の要件を充足することはできません。
また平成27年改正以降、適格機関投資家以外の投資家も、上場会社、5000万円以上の資本金を有する者などに限定されています。
いわゆる1項有価証券の公募は、50名以上の者を相手方として新規発行証券の取得の申込みのほか、私募に該当しない取得勧誘とされています。勧誘という用語は広く解釈され、一般に、インターネットを介した取得の申込みの勧誘も含まれます。また、日本語での勧誘に限られません。
なお、50人以上の投資家に対して有価証券の取得勧誘を行う場合であっても、当該投資家が適格機関投資家に限定されているである場合(転売制限等の条件が定められています。)は、公募には該当しません。
他方で、いわゆる2項有価証券の場合、公募とは、500名以上の者が新規発行証券を取得する場合をいいます。ただし、第二種金融商品取引業及び/又は投資運用業の登録によらず、届出適格機関投資家等特例業務による届出による場合は、適格機関投資家以外の投資家は49人以下でなければならないことに注意が必要です
いわゆる1項有価証券の私募は、適格機関投資家(QII)私募、特定投資家私募および少人数(50名未満)私募の3つの類型があります。 一定の条件のもとで、少人数私募の人数から適格機関投資家の人数を除外することができます。
私募の場合には、有価証券届出書の地方財政局への届出や投資家への目論見書の交付が必要となりません。
運用財産の50%超を有価証券への投資により運用するファンド持分への投資勧誘は、通常、開示規制の対象となります。ファンド持分の発行者は、公募による場合、財務局に有価証券届出書を提出し、投資家に対して目論見書を交付しなければなりません。
公募および私募の定義は、提供される有価証券の種類によって異なります(すなわち、一般的に流動性の高い金融商品取引法第2条第1項に基づくいわゆる1項有価証券と、流動性の低い同法第2条第2項に基づくいわゆる2項有価証券によって異なります。)。公募および私募の詳細については、後述するQ&Aを参照して下さい。
組合型ファンドにおける投資勧誘については、一般的に、ファンド持分が500名以上の投資家に提供される場合には、金融商品取引法に基づく開示要件の対象となります。
私募による場合、通常、開示規制の適用はありません。
LPに組合の事業を執行する権限が与えられていると第三者が信じ込んだ場合、LPは、GPが第三者と取引を締結した場合と同じ責任を第三者に対して負うことになります。そのため、LPの有限責任を確保するうえで、LPが組合の事業を執行する権限があると第三者に信じ込ませるような行動は避ける必要があります。
法令上、LPに業務執行権限が与えられていると第三者が誤解するようなLPの行動の内容が明確にされていないため、個別具体的な事情を踏まえて検討する必要があります。また、投資事業有限責任組合契約その他のファンドに関する契約に、LPに業務執行者に代わって事業を遂行する権限を与える規定が含まれていないことも確認する必要があります。
一般的に、特定の要件が満たされている限り、ファンドによる収益はパススルー課税となります。ただし、外国人投資家は源泉徴収税の対象となる場合があります。
当事務所が自ら税務に関するアドバイスを提供することはありませんが、当事務所は税務問題に関する外部の専門家と緊密に連携したサービス提供を行っています。