Monthly Archives: 2025年8月

1. はじめに

先日、大阪・関西万博の「空飛ぶクルマステーション」を訪問し、空飛ぶクルマに関する展示を体験してきました。 (参考:https://www.expo2025.or.jp/future-index/smart-mobility/advanced-air-mobility/)

図1 現実風の空飛ぶクルマ

同パビリオンは予約なしでも入場可能ですが、事前予約をすると停機中の空飛ぶクルマの実機に乗り込めるほか、タクシーのように夢洲から高野山や淡路島に飛行する映像体験ができます。また、一定日の朝には実機の飛行デモンストレーションも会場の別場所であります(筆者が訪問した際にはデモ飛行のほかSkydrive社社長による機体説明とQ&Aセッションも行われていました)。
空飛ぶクルマに対しては、開催前から「現実味がない」「税金の無駄」「これは車ではない」など否定的な声も多くありましたが、展示内容は非常にわかりやすく、未来社会の具体的なイメージを持たせてくれるものでした。少なくとも、「夢ではない、近未来の現実かもしれない」と感じさせられる体験でした。

もっとも、展示内では「空には渋滞がない」というキャッチコピーが用いられていましたが、実際にはそう単純ではありません。航空法や小型無人機等飛行禁止法では、人口密集地(DID地区)、空港周辺、重要施設付近など、多くの空域が原則飛行禁止または厳しく制限されています。したがって、現行制度上「自由に飛ばせる空域」は極めて限定的であり、むしろ“使える空”のほうが少ないのが実情です。さらに、空域には航空交通管制が存在し、民間機・ヘリ・eVTOL・ドローンが安全に飛行するためには管制官による交通整理が不可欠です。実際、羽田空港上空ではピーク時に「ホールド(旋回待機)」が頻繁に発生しており、空の交通にも物理的・制度的な限界があります。今後、都市内低高度の運航には、専用ルートや無人航空機交通管理システム(UTM)の整備が不可欠となるでしょう。

技術は現実味を帯びる一方、空飛ぶクルマを本当に実現させるためには、航空法上の耐空証明や運航者責任、都市部でのバーティポート設置基準など、多方面で制度的な課題があります。
国土交通省は近年、2023年の航空法施行規則改正やバーティポート整備指針、さらに2025年の次世代空モビリティ運航ガイドラインの公表など、政省令や技術基準の逐次改正を進めています。
もっとも、現状ではまだ抜本的な制度設計には至っておらず、多くの領域で法的な未確定・グレーゾーンが残されています。
本稿では、空飛ぶクルマに関し、皆さんが思い描く未来の姿やSF作品、それと現行法の対比を通じて整理・考察します。

※本記事は大阪万博での展示を契機に、法律家として未来の制度を考察するシリーズの一環です。 過去記事:
アンドロイドになった『私』は同一人物か?
軌道エレベーターで殺人事件が起きたら誰が裁く?

2. SF作品に見る空飛ぶクルマの世界

空飛ぶクルマは、SF作品の中では昔からおなじみの存在です。ただし、その登場のされ方は一様ではなく、作品ごとに異なる社会像と技術観が描かれています。

個人の自由な移動手段:「バック・トゥ・ザ・フューチャー」

1985年の『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART II』では、2015年の未来でデロリアンが空を飛ぶシーンが印象的です。ここでは空飛ぶ車は個人の乗り物として描かれ、誰もが自由に空を移動できる理想的な未来像が示されています。

権力の象徴としての空飛ぶクルマ:「ブレードランナー」

1982年公開の『ブレードランナー』では、空飛ぶクルマは警察専用車両として描かれ、高層ビルの間を縫って飛ぶシーンが印象的です。ここでの空は公共空間ではなく、権力が支配する領域として機能しています。

大衆化された空の渋滞:「フィフス・エレメント」

1997年の『フィフス・エレメント』では、空飛ぶクルマが完全に民間に普及しており、都市の空間に立体的な交通システムが存在しています。空中には信号機すら存在し、「空中渋滞」が日常の一部となっている世界です。

都市監視インフラとしての空:「攻殻機動隊」

1995年劇場版公開の『攻殻機動隊』では、公安9課の移動手段としてヘリ型のホバーカーが登場します。空飛ぶクルマは単なる移動手段ではなく、都市監視インフラの一部として位置づけられています。

図2 SF風の空飛ぶクルマ

法制度の不在という共通点

興味深いのは、これらの作品に共通して「空を誰が管理するのか」「どのような法的ルールで飛行が制御されているのか」といった論点がほとんど描かれていない点です。
SF作品が描く「自由な空の移動」は魅力的ですが、現実には空域管理や航空法制が厳格に存在します。むしろ「空は誰のものか」という問いこそ、現代社会における制度設計の最前線にある論点です。

3. 空飛ぶクルマとは何か?

「空飛ぶクルマ」という言葉は耳目を引きますが、現在開発されている機体は、SFで想像されるような形――たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART II』に登場するデロリアン――ではありません。車輪もなく道路も走りませんが、「誰もがオンデマンドに予約して使う日常移動サービス」を目指しているため、親しみやすい「クルマ」という呼び方が使われています。
何を空飛ぶクルマと呼ぶかは確定はしてはいませんが、国土交通省の資料では、空飛ぶクルマは「電動化・自動化された垂直離着陸機(eVTOL)」として定義されることが多く、次のような特徴が挙げられます。

このような特徴から、空飛ぶクルマは従来のヘリコプターやドローンとは異なる位置づけを持ちます。

類似技術との比較

分類 推進方式 操縦 離着陸方法 主な用途 法制度
空飛ぶクルマ(eVTOL) 電動 将来自動化 垂直離着陸 都市内移動・空中タクシー 航空法適用も制度設計途上
ヘリコプター 内燃機関 有人操縦 垂直離着陸 官庁・報道・救急 航空法で規制
ドローン 電動 無人(遠隔) 垂直離着陸 撮影・物流・測量 無人航空機規制

空飛ぶクルマは、ドローンのように小型・軽量で垂直離着陸が可能でありながら、ヘリのように人を運ぶ能力を持つ乗り物であり、その意味で従来の区分では捉えきれない「ハイブリッドな存在」と言えます。

法制度から見た定義の曖昧さ

技術的にはeVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)という言葉が使われることもありますが、日本の航空法には現時点で「空飛ぶクルマ」や「eVTOL」という定義規定は存在しません。
また、「クルマ」という言葉が使われていますが車ではないことから、道路運送車両法の対象外であり、自動車免許や車検制度も及びません。逆に、飛行機やヘリコプターと異なるため、従来の航空法の枠組みにも完全には収まりません。

4. 現在の技術開発状況

空飛ぶクルマというと、まだ未来の乗り物という印象が強いかもしれません。しかし、技術的にはすでに実現段階にあり、国内外の企業が実機の開発・試験飛行・プレ商用運航に踏み出しているのが現状です。

海外:eVTOL市場の加速

アメリカや欧州では、eVTOL(電動垂直離着陸機)をベースとした都市型航空モビリティ(UAM:Urban Air Mobility)の実用化に向けた動きが加速しています。

日本:万博を契機とした実用化への取組み

日本においても、大阪・関西万博を契機として、空飛ぶクルマの商用化に向けた取組みが進んでいます。

技術より先に問われる「制度設計」

空飛ぶクルマの最大の障壁は、技術ではなく制度です。空中を飛ぶ機体である以上、航空法や航空機製造基準、安全認証、運行管理、操縦資格、離発着場の設置基準など、あらゆる法的インフラが必要になります。

5. 法制度の空白と課題

航空法は固定翼・回転翼を含む従来航空を包摂しますが、都市低空で高頻度運航を行うeVTOLや自動/遠隔操縦を前提とする制度設計は未整備で、ここに空白が残ります。

航空法の想定外――「タクシーのようなクルマ」という矛盾

日本の空を規律する中心的な法律は航空法です。しかし、航空法は本来、滑走路から離陸し高高度を飛行する固定翼機や、限定的な用途のヘリコプターを想定した制度設計となっており、空飛ぶクルマ(eVTOL)のような低空・短距離・多頻度の飛行体には制度的ミスマッチがあります。

現時点では、空飛ぶクルマは航空法上「航空機」に分類されており、国土交通省の許可が必要ですが、次のような点で制度対応がまだ追いついていません。

ドローンとの決定的違い

「空を飛ぶ=ドローンと同じように規制されるのでは?」という疑問もあります。
ドローンも登録、リモートID、許可・承認など厳格な管理下にあります。ただし制度設計の焦点は”無人で物を運ぶ”ことにあり、”有人で人を運ぶ”空飛ぶクルマでは型式/耐空、乗員資格、空域容量管理の要求水準と範囲が本質的に異なるのです。

6. 自己と責任――誰が償うのか?

空飛ぶクルマの開発において、避けて通れない論点が「事故が起きたら誰の責任か?」という問題です。これは責任の所在、免許制度、保険制度など法制度全体の構築に直結する中核論点です。

自動運転になれば責任は誰に?

現在開発されているeVTOL機の多くは、将来的に自動操縦・遠隔操縦を視野に入れていますが、初期段階では基本的に「有人操縦」が前提とされています。

仮に将来的に空飛ぶクルマが自動運転化された場合、選択肢として考えられる責任主体は以下の通りです:

  1. 機体の製造者(製造物責任法・PL法の適用)
  2. 自動運転システムの開発者(ソフトウェアの欠陥責任)
  3. 運航管理者(遠隔管制センターなど)
  4. 機体所有者(自動車でいう所有者責任)
  5. 搭乗者本人(人間が最終承認して乗った場合)

たとえば、自動運転中にAIがルート選択を誤り墜落した場合、製造者・ソフトウェア開発者・管制システム・機体所有者のいずれか、あるいは複数が責任を問われる可能性があります。これは自動車の運転者責任とは根本的に異なる複雑な問題です。

より具体的に想定してみましょう。もし新宿上空を飛行中の空飛ぶクルマが突然システム障害で墜落し、地上の建物や通行人に被害が及んだ場合、数十億円、数百億円規模の損害賠償が発生する可能性があります。この責任を製造者が負うのか、運航事業者が負うのか、それとも複数で分担するのか。現在の法制度では明確な答えがないのです。

7. 社会への影響――屋上が駅になる日

空飛ぶクルマが日常化すれば、都市の動脈は地上から空へ移ります。鉄道駅に代わり、高層ビルやショッピングモールの屋上にバーティポート(Vertiport)が整備され、「屋上=玄関」という新常識が生まれます。郊外の大型施設や病院にも空路の結節点が設けられ、都市の価値マップそのものが書き換わります。

図3 屋上が駅になる

誰が使える乗り物になるか

用途としては、まず都市内部の短距離移動が想定されます。筆者が参加したSkydrive社のQ&Aでは「現在の飛行時間は約10分で、将来的には15〜20分を目指す。航続距離は30〜40km、料金は夢洲〜新大阪で片道1〜2万円、最終的にはタクシーの約3倍の速さで2倍程度の料金を目標」と説明されました。
「タクシーの3倍速く、料金は2倍程度」であれば確かに魅力的です。渋滞に縛られない新しい移動手段として、都市生活の可能性を広げるかもしれません。

一方で、導入初期は機体やバッテリー、保険料、発着場のコストがかさみ、運賃はさらに高額になると考えられます。便数も限られ、予約制が前提となるでしょう。さらに混雑時にはサージプライシング(料金の値上げ)が発生し、結果的に「富裕層だけが時間を買える乗り物」になる懸念があります。

都市の再設計と格差の行方

バーティポートには避難経路や騒音対策など複合的な基準が必要です。駅前の価値が相対的に弱まれば、屋上を“空の駅前”として活用する都市計画も現実味を帯びます。高層マンションの屋上が発着場となり、都市構造そのものを変える未来が見えてきます。

しかし、その恩恵を誰が享受できるかは制度設計にかかっています。料金が高止まりすれば「空を使える人」と「使えない人」という新たな移動格差が生まれます。逆に、公共交通としての仕組みを組み込めば、時間をより公平にシェアできるインフラへと育つ可能性もあります。未来は「分断」か「共有」か、その分岐点に立っているのです。

8. 空の未来は誰が決める?――3つの選択肢

空飛ぶクルマは、技術的には現実味を帯びつつあるものの、法制度はまだ追いついていません。これから私たちが選ぶ道は、大きく3つに整理できます。

  1. 民間主導モデル:規制を最小限に抑え、企業の技術開発と市場原理に委ねる(規制サンドボックスの活用)
  2. 官民協調モデル:厳格な資格制度で安全を確保しつつ、段階的に普及を進める(限定空域の解放や特定免許制度)
  3. 公共主導モデル:国や自治体が主導し、公共サービスとして展開する(運賃規制や第三者賠償保険の義務化)

直面する主要課題は明らかです。

空飛ぶクルマは「富裕層だけの高速道路」になるのか、それとも「誰もが利用できる公共空間」になるのか。制度設計次第で未来の姿は大きく変わります。
そして、その制度は「誰かが決めてくれる」ものではなく、社会全体の合意形成の積み重ねによって形づくられていきます。鉄道や自動車がそうであったように、空飛ぶクルマもやがて私たちの生活を一変させるかもしれません。
あなたなら、この未来をどう設計するでしょうか。

2024年5月15日に、金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第32号、以下「改正法」といいます。)が成立し、同年同月22日に公布されましたが、以下の3点に係る改正について、2025年5月1日から施行されました。
①投資運用関係業務受託業に関する規定の整備
②投資運用業に関する規定の整備
③非上場有価証券特例仲介等業務に関する規定の整備

これらは、我が国資本市場の活性化に向けて資産運用の高度化・多様化を図る、具体的には、投資運用業の新規参入を促進し、またスタートアップ等が発行する非上場有価証券の仲介業務への新規参入を促進し、非上場有価証券の流通を活性化させること等を目指したもので、投資運用業登録要件を緩和する規定の整備、またスタートアップ企業等の非上場企業の株式のセカンダリー取引等を活性化するため、非上場有価証券の取引の仲介業務に特化する等一定の要件を充足する場合は、第一種金融商品取引業の登録等要件等を緩和する等、非上場有価証券特例仲介等業務に関する規定の整備が行われました。

(2)では、③非上場有価証券特例仲介等業務に関する規定の整備について概説します。

1. 非上場有価証券特例仲介等業務に関する規定の整備

非上場有価証券の仲介を業として行うためには、原則として、第一種金融商品取引業の登録を受けることが必要ですが(金商法第28条第1項第1号、第29条)、非上場有価証券の流通活性化を目的として、非上場有価証券の取引の仲介業務への新規参入を促すため、今回の改正で、一定の要件を充足する非上場有価証券の仲介業務を「非上場有価証券特例仲介等業務」とし、非上場有価証券特例仲介等業務のみを行う場合の登録要件等が緩和されました。

(1) 非上場有価証券特例仲介等業務の内容
「非上場有価証券特例仲介等業務」とは、第一種金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいいます(金商法第29条の4の4第8項)。

(i)   非上場有価証券(金融商品取引所に上場されていない有価証券で、店頭売買有価証券を除きます(金商法施行令第15条の10の4)。以下同じです。)に係る次に掲げる行為
① 売付けの媒介又は有価証券の募集・売出しの取扱い若しくは私募若しくは特定投資家向け売付勧誘等の取扱い(一般投資家[2] を相手方として行うもの及び一般投資家に対する勧誘に基づき当該一般投資家のために行うものを除きます。以下「1号仲介業務」といいます。)
② 買付の媒介(一般投資家のために行うもの及び一般投資家に対する勧誘に基づき当該一般投資家を相手方として行うものを除きます。)

 (ii)   (i)に掲げる行為に関して顧客から金銭の預託を受けること((i)に掲げる行為による取引の決済のために必要なものであって、当該預託の期間が、顧客から金銭の預託を受けた日の翌日から1週間(金商法施行令第15条の10の5)を超えないものに限ります。)

なお、「金融商品取引所に上場されていない有価証券」の「金融商品取引所」とは、金商法第80条第1項の規定により内閣総理大臣の免許を受けて金融商品市場を開設する金融商品会員制法人又は株式会社をいうことから(パブコメ回答No.37)、かかる金融商品取引所に上場されていない有価証券(例えば、海外でのみ上場されている有価証券等)も「金融商品取引所に上場されていない有価証券」(非上場有価証券)となります。

(2) 登録要件等の緩和
非上場有価証券特例仲介等業務のみを行う場合、以下のとおり各規制が緩和されます。

(i) 兼業規制
第一種金融商品取引業の登録を受けるためには、他に行っている事業が付随業務(金商法第35条第1項各号に定める業務その他の金融商品取引業に付随する業務をいいます。)若しくは届出業務(金商法第35条第2項各号に定める業務をいいます。)に該当し、又は承認業務として承認を取得できる見込みがあることが必要ですが(金商法第29条の4第1項第5号ハ)、非上場有価証券特例仲介等業務のみを行う場合は、当該要件が適用されません(金商法第29条の4の4第2項)。
また、第一種金融商品取引業者は、届出業務を行う場合にはついて届出が、承認業務を行う場合については承認の取得が、それぞれ必要ですが(金商法第35条第3項及び第4項)、非上場有価証券特例仲介等業者については、これらの届出及び承認の取得が不要です(金商法第29条の4の4第3項及び第4項)。

(ii) 自己資本規制比率規制
第一種金融商品取引業の登録を受けるためには、自己資本規制比率が120%以上であることが必要ですが(金商法第29条の4第1項第6号イ)、非上場有価証券特例仲介等業務のみを行う場合は、当該自己資本規制比率が適用されません。そのため、登録申請の際に添付する誓約書において、自己資本規制比率に係る誓約は不要とされ(金商法第29条の4の4第1項)、また自己資本規制比率を算出した書面の提出が不要とされています(業府令第10条第1項第3号括弧書き)。
また、第一種金融商品取引業者は、毎月、自己資本規制比率を算出してこれを届け出る義務があり、かつ、自己資本規制比率120%を下回ることがないように維持する必要がありますが(金商法第46条の6第1項及び第2項)、非上場有価証券特例仲介等業者については、これらの制限が適用されません(金商法第29条の4の4第5項)。

(iii) 金融商品取引責任準備金の積立て義務
第一種金融商品取引業者には、金融商品取引責任準備金の積立て義務があり、その使途も制限されていますが(金商法第46条の5)、非上場有価証券特例仲介等業者については、金融商品取引責任準備金の積立義務がありません(金商法第29条の4の4第5項)。

(iv) 最低資本金及び純財産要件
第一種金融商品取引業の登録を受けるためには、最低資本金及び純財産の額は5000万円以上であることが必要ですが(金商法第29条の4第1項第4号イ及び第5号ロ、金商法施行令第15条の7第1項第3号及び第15条の9第1項)、非上場有価証券特例仲介等業務のみを行う場合は最低資本金及び純財産の額が1000万円以上に引下げられました(金商法施行令第15条の7第1項第6号)。

(v) 人的要件
第一種金融商品取引業の登録を受けるためには、常勤役職員の中に、その行おうとする第一種金融商品取引業の業務を3年以上経験した者が複数確保されていることが求められていますが(金商業者向け監督指針IV-4-1(2)①ハ)、非上場有価証券特例仲介等業務のうち、特定投資家を相手方として行う1号仲介業務(私設取引システム運営業務(金商法第2条第8項第10号)を除きます。)のみを行う場合には、常勤役職員の中に、その行おうとする第一種金融商品取引業の業務(金商法第29条の5第2項に規定する業務を含みます。)を1年以上経験した者が1名以上確保されていればよいこととされています(金商業者向け監督指針IV-4-1(2)①ハ(注))。

(vi) 投資者保護基金への加入義務
第一種金融商品取引業は、いずれかの投資者保護基金に会員として加入する義務がありますが(金商法第79条の27)、非上場有価証券特例仲介等業者については投資者保護基金の加入義務が免除されています(金商法施行令第18条の7の2)。そのため、投資者保護基金に加入しない場合は、登録申請書への記載も不要です(業府令第7条第3号ロ)。

(3) 適切性の確保
(2)のとおり、非上場有価証券特例仲介等業者については登録要件が一部緩和されていることから、その範囲を超えた第一種金融商品取引業を行うことがないよう、以下のような措置を取ることが求められています(業府令第70条の2第10項、監督指針IV-3-6(1))。

(i) 一般投資家を相手方として及び一般投資家に対する勧誘に基づき当該一般投資家のために売付けの媒介又は法第2条第8項第9号に掲げる行為(有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い)を行うことを防止するための必要かつ適切な措置がとられていること。

(ii) 一般投資家のために及び一般投資家に対する勧誘に基づき当該一般投資家を相手方として買付けの媒介を行うことを防止するための必要かつ適切な措置がとられていること。

(iii) 顧客から金銭の預託を受ける場合には、(1)(ii)の金銭の預託として適切に管理するための措置がとられていること。

また、非上場有価証券特例仲介等業務の担当者が第二種金融商品取引業の担当を兼務する場合には、第二種金融商品取引業に係る顧客に一般投資家が含まれているかどうか、含まれている場合には第二種金融商品取引業に係る一般投資家である顧客に対して非上場有価証券特例仲介等業の範囲を超えた第一種金融商品取引業が行われないよう、非上場有価証券特例仲介等業務を行う前の顧客の属性の事前確認が求められています(金商業者向け監督指針IV-3-6(1))。

(4) 日本証券業協会への加入
日本証券業協会に加入する場合、第一種金融商品取引業者は会員となりますが(日本証券業協会の定款第5条第1号、第11条第1項)、非上場有価証券特例仲介等業務のみを行う者は特定業務会員となります(同定款第5条第2号ニ、第13条第1項)。また、入会金は原則として100万円ですが、非上場有価証券特例仲介等業務のみを行う者は50万円で(定款の施行に関する規則第10条第1項及び第2項)、定額会費も1特定業務会員につき月額7万円のところ、非上場有価証券特例仲介等業務のみを行う者は月額3万5,000円と軽減されています(特定業務会員会費規則第3条第1項第1号)。
他方、非上場有価証券特例仲介等業務の内部管理を担当する内部管理統括責任者、同業務を行う営業単位の内部管理責任者及び同業務に関する内部管理部門に所属する管理職者は「外務員等資格試験に関する規則」による会員内部管理責任者資格試験(以下「会員内部管理者責任者資格試験」といいます。)の合格者に限られ(協会員の内部管理責任者等に関する規則(以下「協会員内部管理責任者等規則」といいます。)第6条第4項、第14条第3項及び第7条第2項)、非上場有価証券特例仲介等業務を行う営業単位の営業責任者は、平成18年4月1日改正前の「証券外務員等資格試験規則」による会員営業責任者資格試験又は会員内部管理者責任者資格試験の合格者に限定されており(協会員内部管理責任者等規則第11条第3項)、他の特定業務会員より各責任者等の資格が限定されています。また、非上場有価証券特例仲介等業務に関する内部管理業務に従事する従業員について、会員内部管理責任者資格試験の合格者となるよう努める義務があります(協会員内部管理責任者等規則第7条第2項)。

留保事項


[2] 「一般投資家」とは、特定投資家等、当該有価証券の発行者、当該発行者の取締役、監査役、執行役、理事若しくは監事若しくはこれらに準ずる者若しくは使用人(以下「特定役員等」といいます。)又は当該特定役員等が総議決権の50%超の議決権を保有する法人その他の団体(以下「被支配法人等」といいます。)、当該発行者の総株主等の議決権の50%を超える議決権を自己又は他人の名義をもって保有する会社以外の者をいいます(金商法第29条の4の4第8項第1号、金融商品取引業に関する内閣府令第16条の3第1項及び第3項)。なお、特定役員等及びその被支配法人等があわせて他の法人その他の団体の総株主等の議決権の50%を超える議決権を自己又は他人の名義をもって保有する場合も当該特定役員等の被支配法人等とみなされます(同条第2項)。