Monthly Archives: 2020年1月

Ⅰ STO とは何か

1. STO の定義

Security Token(以下「ST」という) と呼ばれるトークン(ブロックチェーン上での権利)の発行による資金調達

ただし、何が Security Token に該当するかは国や論者により定義が異なる

例えば Inwara(ICO、STO についてのリサーチ会社)の Report の定義

セキュリティートークン = 実社会の金融資産を表彰する暗号トークン
ユーティリティートークン = 発行体のサービスや製品へのアクセスを付与する。発行会社に対する権限を表す場合

ここでは主として、金銭・仮想通貨・その他財産により、配当又は 100%以上の元本償還が想定されているトークンを Security Token とする
→ 但し、例えば米国では Security Token の範囲が広い等、定義が変わる

日本では株式や社債の ST、ファンドの ST など色々とありうるが、金商法改正との関係ではファンドの ST をまずは考え、適宜、株式や社債の ST についても触れる

2. 国内情勢、海外情勢

海外の状況

海外でもともと大ブームであった ICO が激減
それに対して STO が増加したことにより着目
数自体はまだまだ少ないが、一件あたり金額が増加
<下記の図参照>

仮想通貨に対する規制が全般的に強化されたことにより、規制に合致した STO の発行ニーズが増加?規制コストを鑑みて大規模化?

国内の状況

流通可能な STO の発行事例は知る限り存在しない(後記の規制の問題)
金商法の改正に伴い本年の春から?

ポイント: 規制コストがかかるが STO を選択するメリットがあるのか?

上記資料は、InWara’s Half Yearly Report 2019 H1 から抜粋

Ⅱ 現行法下での STO

1. 仮想通貨法

現行法上、STO は ICO の一種
日本での販売には「仮想通貨交換業の登録」+「コインの届出」が必要

(仮想通貨交換業の登録)
発行体自らが登録、又は、登録業者を通じて販売
登録はハードル高く、自らの登録は現状、現実的ではない
登録業者による販売も現時点では現実的ではない

(コインの届出)
新規コインを取り扱うには FSA への届出と審査
コインチェック事件後、届出審査の厳格化し、現状、新規コインは 2019 年 11 月に Coincheck
が上場させたステラのみ

2017 年 12 月以降、日本では合法な ICO(STO 含む)は発行されていない

2. 金融商品取引法(ファンド規制)、仮想通貨による出資

配当等(配当、収益の分配)がないコイン

金商法の「有価証券」や「デリバティブ」の規定は限定列挙
少なくとも「配当等」がないコインは、現在の金商法の定義上は、金商法規制に服する可能性は低い

配当等が行なわれるコイン

ファンド(集団投資スキーム)として金商法規制の可能性
①他人から金銭を集め、②事業に投資し、③投資家に対して配当等を行う
Bitcoin や Ether で出資を受ける場合、法律の文言上はファンド規制に服さない。脱法的な場合、規制される

Ⅲ STO と金商法改正と概論

1. 法改正概論

スケジュール

① 2019 年 5 月 31 日に仮想通貨法と金商法の改正法が国会で可決
② 2020 年 1 月 14 日に金融庁が仮想通貨法・金商法の下位規定である政省令をドラフトし、パブリックコメント手続中(2020 年 2 月 13 日コメント〆切り)

金融庁サイト:
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200114/20200114.html?fbclid=IwAR00ob7ly
pNqrWZY_OZAg5g6rw-w-R9LbvC8Ih9g3iWW69c7B5ZTXim5vao

今後の想定される予定
① パブコメ回答が 3 月~4 月頃に出る?
② 改正法は公布後 1 年以内に施行。2020 年 5 月 1 日施行?
③ 暗号資産カストディ規制、デリバティブ商品に関する規制などは、法施行後 6 ヶ月間の移行期間

概要

法令の明確化という点では市場にメリット。ただ、政省令案を見る限り、かなり厳格な規制がなされるようであり、どこまでニーズが出るか

2. 金商法の発想と改正法

一項有価証券
株、社債、投資信託など流動性の高い証券
第一種金商業者(証券会社)が取り扱い
発行開示義務・継続開示義務

二項有価証券
ファンド、合同会社の社員権、通常の信託受益権など流動性の低い権利
二種金商業者(ファンド業者)が取り扱い
発行開示・継続開示義務などが原則ない

もともと二項有価証券であったものを ST 化した場合に一項有価証券としての規制を及ぼすのが改正法の基本の発想(但し、自主募集の場合のファンド規制はそのまま適用)

なお、改正法は、株式や社債の ST 化を禁止するものではない

株式・社債 = ST 化してもしなくても一項有価証券。ただ ST 化した場合には場合により追加規制?
ファンド = もとは二項有価証券。ST 化した場合は一項有価証券として厳格な規制

3. STO と民商法

金商法はあくまで規制法。どのような仕組みで ST が発行できるかは民商法の議論
株式の ST 化は可能? → 株主名簿の記録なく株式移転する方法?
不動産の ST 化は? → 不動産登記なく所有権移転可能?
ファンドの ST 化 → 確定日付なく債権譲渡できるか

上記は金商法では記載していない

Ⅳ 改正金商法上の ST の定義

1. Security Token(電子記録移転権利)の定義

<電子記録移転権利の定義>

金商法 2 条 3 項
下記の①~③を満たし、④を除く権利
① 金商法第 2 条第 2 項各号に掲げる権利(ファンド、信託受益権、合名合資合同会社の社員権など)
② 電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合
③ 電子機器その他の者に電子的方法により記録される場合
④ 流通性その他の事情を勘案して内閣府令に定める場合を除く

電子記録移転権利に該当する場合には「第一項有価証券」となる
他方、非該当の場合には従前どおり「第二項有価証券」となる

なお、ブロックチェーンの利用方法によっては、そもそも上記②「財産的価値に表示される場合」に該当しないという考えもありうる
→ 例えば、単に、ファンドの権利者が誰であるかをブロックチェーン上で管理するが、権利者は秘密鍵を管理せず、ブロックチェーンの書換えはファンド運営者が行う場合、上記②の「表示される」に該当しないのでは、と思われる。(パブコメで聞く予定)

上記④の除外規定について、電子記録移転権利の要素を有するが、保有者が一定の投資家((ア)適格機関投資家、(イ)資本金 5,000 万円以上の法人、(ウ)証券口座開設1 年以上+取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する有価証券や暗号資産の合計額が 1 億円以上であると見込まれる個人等)に制限されており、かつ、権利を表示する財産的価値の譲渡に発行者の承諾が必要な技術的措置が取られている場合とされる

定義府令
9 条の 2
法第 2 条第 3 項に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる要件の全てに該当する場合とする。
一 当該財産的価値を次のいずれかに該当する者以外の者に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。
イ 適格機関投資家
ロ 令第 17 条の 12 第 1 項第 1 号から第 11 号まで又は第 13 号に掲げる者(=資本金 5000 万円以上の法人、外国法人など)
ニ 金融商品取引業等に関する内閣府令第 233 条の 2 第 3 項に定める要件に該当する個人(=有価証券や暗号資産を 1 億円以上保有している個人)
ホ 金融商品取引業等に関する内閣府令第 233 条の 2 第 4 項に定める者
二 当該財産的価値の移転は、その都度、当該権利を有する者からの申出及び当該権利の発行者の承諾がなければ、することができないようにする技術的措置がとられていること。
2 前項の規定により同項第 1 号ハからホまでに規定する金融商品取引業等に関する内閣府令第 233 条の 2 第 2 項から第 4 項までの規定を適用する場合には、同条第二項中「第 62 条第2 号イからトまでに掲げるもの」とあるのは、「第 62 条第 2 号イからトまでに掲げるもの及び暗号資産」とする。

2. 「暗号資産」の定義との関係

資金決済法改正案の暗号資産の定義から「電子記録移転権利」は除外されている。

改正資金決済法第 2 条
5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和23 年法律第 25 号)第 2 条第 3 項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
6 この法律において「通貨建資産」とは、本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され、又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるもの(以下この項において「債務の履行等」という。)が行われることとされている資産をいう。この場合において、通貨建資産をもって債務の履行等が行われることとされている資産は、通貨建資産とみなす。

上記 1(1)④の要件により電子記録移転権利に該当しないものは、理論上、金商法の規制に加えて資金決済法の規制が重畳的に適用されうる。他方、上記 1(1)④の要件に該当する場合には、流通性がなく、資金決済法改正案上の暗号資産の定義にもそもそも該当しない、という考え方もありうる。暗号資産の定義の解釈次第と思われる(パブコメで聞く予定)

もともとが一項有価証券である株券や社債をトークン化した場合、暗号資産の定義からは明示には除外されない。どう考えるべきか不明確(パブコメで聞く予定)。
→ 例えば、株式や社債をトークン化した場合、定義上、暗号資産に該当する可能性あり。「通貨建資産」にあたる場合は暗号資産の定義から除外されることから通貨建て資産に該当すれば問題ないものの、無額面株式が通貨建資産に該当するのか
→ なお、更に考えると「電子情報処理組織を用いて移転することができる」と暗号資産の定義にあるが、ほふり等を利用していても電子情報処理組織を用いて移転しているといえる、トークン化しているか否かは問題ではない、という議論もあることはある

Ⅴ 電子記録移転権利の開示規制

1. 第一項有価証券の募集に係る開示規制

現行の金商法上、第一項有価証券の募集に該当する場合、原則、発行開示(例:有価証券届出書1、目論見書等)、継続開示(例:半期報告書、臨時報告書等)等の公衆縦覧型の開示規制が課せられる

電子記録移転権利たる ST の募集に該当する場合に、如何なる情報を開示するかについては、改正内閣府令(特定有価証券等開示府令)に規定されている。
→ 開示書類の作成には、かなりの手間を要するように思われる

他方、第一項有価証券の私募に該当する場合には、公衆縦覧型の開示規制は課せられていない

2. 第一項有価証券の募集・私募の概念

募集(公募2)

新たに発行される有価証券の取得の申し込みの勧誘のうち
(i) 多数(50 名以上3)の者を相手方とする場合
(ii) 私募に該当しない場合

私募

(i) 適格機関投資家のみを相手方とする場合(適格機関投資家私募)
(ii) 特定投資家のみを相手方とする場合(特定投資家私募)
(iii) 少人数(50 名未満)の者を相手方とする場合(少人数私募)

3. 第一項有価証券の「私募」に該当するための要件(転売制限要件)

(1) 適格機関投資家私募

「取得勧誘において適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合」という要件(転売制限要件、金商法第 2 条第 3 項第 2 号イ)を満たす必要がある。転売制限要件は、本来は有価証券の種類によって異なる

ST の場合、適格機関投資家にのみ販売されるよう技術的な制限を課すことが要求される

令 1 条の 7 の 4(株券)
当該株券等に係る権利が、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合 当該財産的価値を適格機関投資家以外の者に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。

新株引受権、その他の証券
定義府令 13 条の 4(売付け勧誘等における適格機関投資家以外への譲渡に関する制限等)
1 令第 1 条の 7 の 4 第 2 号ニに規定する内閣府令で定める方式は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める要件を満たすものとする。
一当該有価証券に係る権利が、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合 当該財産的価値を)適格機関投資家以外の者に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。

2 令第 1 条の 7 の 4 第 3 号ハに規定する内閣府令で定める要件は、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。
一 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める要件に該当すること。
イ当該有価証券に係る権利が、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合 当該財産的価を適格機関投資家以外の者に移転する技術的措置がとられていること。

適格機関投資家私募の転売制限に違反して適格機関投資家以外の者に転売される場合には、「発行者」に有価証券届出書の提出義務が課される(金商法第 4 条第 2項本文参照)4

(2) 特定投資家私募

特定投資家私募の要件についても転売制限要件が存在し5、当該要件は有価証券の種類に応じて定められている(金商法第 2 条第 3 項第 2 号ロ、金商法施行令第 1 条の 5 の 2 第 3 号、定義府令第 12 条)

詳細省略するが、特定投資家以外への譲渡を制限する技術的制限が課されていることが要件

特定投資家私募の転売制限に違反して特定投資家等以外の者に転売される場合には、発行者に有価証券届出書の提出義務が課される(金商法第 4 条第 3 項本文参照)6

(3) 少人数私募

少人数私募についても転売制限要件が存在し、当該要件は有価証券の種類に応じて定められている(金商法第 2 条第 3 項第 2 号ハ)

株券や新株予約権の ST については特に今回追加された制限はない

他方、その他の有価証券については①一括譲渡以外の技術的禁止、又は②有価証券の枚数又は単位の総数が 50 未満である場合において、単位未満の当該権利を移転することができない制限の技術的措置が必要となる(金商法施行令第 1 条の 7第 2号ハ、定義府令第 13 条第 3 項等)

改正定義府令 13 条
3 令第一条の七第二号ハ(3)に規定する内閣府令で定める要件は、次の各号に掲げる要件に該当することとする。
一 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める要件に該当すること。
イ 当該有価証券に係る権利が、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合 次に掲げる要件のいずれかに該当すること。
(1) 当該権利を取得し、又は買い付けた者がその取得又は買付けに係る権利を表示する財産的価値を一括して移転する場合以外に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。
(2) 当該有価証券の枚数又は単位・・・の総数が五十未満である場合において、単位に満たない当該権利を表示する財産的価値を移転することができないようにする技術的措置がとられていること。

少人数私募の転売制限に違反して多数の者に転売された場合であっても、有価証券届出書の提出義務は課されない(金商法第 4 条第 2 項、第 3 項参照)7
→ 株券の ST の場合、少人数私募で発行しても、その後に拡散してしまうことは考えられる?
→ 社債型やファンド型の ST の場合、技術的に譲渡制限が課されているため、上記のような場合は基本的には生じないように思われる

(4) 実務上の検討事項・疑問点等

日本では適格機関投資家私募として販売、海外では海外における適格機関投資家に限定して販売することができるか → 技術的に対応すれば可能では?

日本で少人数私募として販売し、海外では人数に含めず販売することはできるか
→ 還流制限を技術的に導入することが可能か。

日本で適格機関投資家私募・少人数私募として販売し、その後に海外の取引所では完全に自由に転売できるとした場合、どうなるか(海外の取引所で日本居住者が売買を行うと、発行体が開示違反になるか)
→ 当初の私募の際に通常は技術的制限が必要なので、日本の居住者については適格機関投資家や少人数以外には転売されないような技術的措置が取られることになる?

Ⅵ 電子記録移転権利の取扱いに関する業規制

1. 電子記録移転権利の募集の取扱

業として電子記録移転権利の売買、売買の媒介等、募集・私募の取扱い等を行う場合には、以下のとおり、第一種金融商品取引業(例:証券会社等と同様の資格)の登録が必要となる

金商法第 28 条
1 この章において「第一種金融商品取引業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう。
一 有価証券(第 2 条第 2 項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(電子記録移転権利を除く。次項第 2 号及び第 64 条第 1 項第 1 号において同じ)を除く。)についての同条第 8項第 1 号から第 3 号まで、第 5 号、第 8 号又は第 9 号に掲げる行為
一の2 (以下省略)

金商法第 2 条第 8 項 1 号から第 3 号まで、第 5 号・第 8 号・第 9 号
一 有価証券の売買(デリバティブ取引に該当するものを除く。以下同じ。)、市場デリバティブ取引(金融商品(第二十四項第三号の二に掲げるものに限る。)又は金融指標(当該金融商品の価格及びこれに基づいて算出した数値に限る。)に係る市場デリバティブ取引(以下「商品関連市場デリバティブ取引」という。)を除く。)又は外国市場デリバティブ取引(有価証券の売買にあつては、第十号に掲げるものを除く。)
二 有価証券の売買、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引の媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)又は代理(有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理にあつては、第十号に掲げるものを除く。)
三 次に掲げる取引の委託の媒介、取次ぎ又は代理
イ 取引所金融商品市場における有価証券の売買又は市場デリバティブ取引
ロ 外国金融商品市場(取引所金融商品市場に類似する市場で外国に所在するものをいう。以下同じ。)における有価証券の売買又は外国市場デリバティブ取引
五 有価証券等清算取次ぎ
八 有価証券の売出し又は特定投資家向け売付け勧誘等
九 有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い

→ 第一種金融商品取引業の範囲から金商法第 2 条第 2 項のみなし有価証券に係る各行為が除外されているが、当該除外規定から電子記録移転債権が除かれている(除外の除外)

2. 電子記録移転権利の自己募集・私募

(1) 業規制の概要

現行の金商法上、株式や社債等の自己募集・私募業規制は存在しないが、集団投資スキーム持分(=ファンド)の自己募集・私募については、金商法の業規制が適用される

改正法により、以前から自己募集・私募規制があった証券に加えて、一定の証券(合名、合資、合同会社、類似の外国会社の社員権)につき、自己募集・自己私募に追加で第二種金商業が要求されるようになった

金商法第 28 条
2 この章において「第二種金融商品取引業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう。
一 第 2 条第 8 項第 7 号に掲げる行為
二 (以下省略)

金商法第 2 条 8 項第 7 号
この法律において「金融商品取引業」とは、次に掲げる行為・・・・のいずれかを業として行うことをいう。
七 有価証券(次に掲げるものに限る。)の募集又は私募
ヘ 第 2 項の規定により有価証券とみなされる同項第 5 号又は第 6 号に掲げる権利(=ファンド)
ト イからヘまでに掲げるもののほか、政令で定める有価証券

金商法施行令 1 条の 9 の 2(金融商品取引業となる募集又は私募に係る有価証券)
法第 2 条第 8 項第 7 号トに規定する政令で定める有価証券は、次に掲げるものとする。
2 法第 2 条第 2 項の規定により有価証券とみなされる権利(同条第 8 項第 7 号ホ及びヘ並びに前号に掲げるものを除き、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合(投資者の保護の必要性を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)に限る。)

(金融商品取引業となる募集又は私募に係る有価証券から除かれる場合)
定義府令 16 条の 2
令第 1 条の 9 の 2 第 2 号に規定する内閣府令で定める場合は、法第 2 条第 2項第 3 号及び第 4 号に掲げる権利以外のものである場合とする。

法第 2 条 この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。
2 項
三 合名会社若しくは合資会社の社員権(政令で定めるものに限る。)又は合同会社の社員権
四 外国法人の社員権で前号に掲げる権利の性質を有するもの

(2) ファンドの適格機関投資家特例

集団投資スキーム持分の自己募集・私募には、適格機関投資家等特例業務8が認められているが、ST についても同様に認められるか→ 認められるが譲渡制限のための技術的措置を取る必要がある

(適格機関投資家等特例業務)
金商法法第 63 条 次の各号に掲げる行為については、第 29 条及び第 33 条の 2 の規定は、適用しない。
一 適格機関投資家等(適格機関投資家以外の者で政令で定めるもの(その数が政令で定める数以下の場合に限る。)及び適格機関投資家をいう。以下この条において同じ。)で次のいずれにも該当しない者を相手方として行う第 2 条第 2項第 5 号又は第 6 号に掲げる権利に係る私募(適格機関投資家等(次のいずれにも該当しないものに限る。)以外の者が当該権利を取得するおそれが少ないものとして政令で定めるものに限り、投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定めるものを除く。)
ハ イ又はロに掲げる者に準ずる者として内閣府令で定める者

金商業者府令
(投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの)
第 234 条の 2 法第 63 条第 1 項第 1 号に規定する投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定めるものは、出資対象事業持分に係る私募のうち、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するものとする。

三 当該権利が財産的価値に表示される場合には、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める措置がとられていないこと。
イ 当該権利の取得勧誘(法第 2 条第 3 項に規定する取得勧誘をいう。ロにおいて同じ。)に応ずる取得者が適格機関投資家(法第 63 条第 1 項第 1 号イからハまでのいずれにも該当しないものに限る。以下この号において同じ。)である場合当該財産的価値を適格機関投資家以外の者に移転することができないようにする技術的措置
ロ当該権利の取得勧誘に応ずる取得者が特例業務対象投資家(令第 17 条の 12第 4 項第 2 号に規定する特例業務対象投資家をいう。以下ロにおいて同じ。)である場合当該権利を取得し又は買い付けた者が当該権利を表示する財産的価値を一括して他の一の適格機関投資家又は特例業務対象投資家に移転する場合以外に移転することができないようにする技術的措置

Ⅶ 電子記録移転権利のセカンダリー取引に関連する規制

ST のセカンダリー取引に関して、当該トークンの売買の媒介を行う場合には、第一種金融商品取引業の登録が必要となる(金商法第 2 条第 8 項第 2 号、第 28 条第1 号)

ST のセカンダリー取引に関して、「板取引」等の取引所を設置する場合、その態様により、金融商品市場の免許(金商法第 2 条第 14 項、第 80 条第 1 項)、又は私設取引システムに該当するものとして PTS 業務の認可(同法 第 80 条第 2 項、第2条第 8 項第 10 号、第 30 条第 1 項)を受けることが必要になると思われる
→ 現実的には市場免許の取得は極めて困難
→ PTS 認可の取得は容易ではない。また PTS 認可の場合、困難であり、また、PTS 業務については、事実上、板取引(オークション形式)ができないように思われる
→ 当初は、いわゆる OTC 取引にて、金融商品取引業者がビッドプライス・オファープライスを提示して ST を販売する「販売所形式」でのセカンダリー取引になる、と推察される。セカンダリーマーケットの充実も課題

参考 金融商品市場

金商法第 2 条第 14 項
14 この法律において「金融商品市場」とは、有価証券の売買又は市場デリバティブ取引を行う市場(商品関連市場デリバティブ取引のみを行うものを除く。)をいう。

なお、「市場」の定義はない。

参考 PTS 業務(この部分は今回の改正で変更はなし)

金商法第 2 条第 8 項第 10 号
十 有価証券の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理であって、電子情報処理組織を使用して、同時に多数の者を一方の当事者又は各当事者として次に掲げる売買価格の決定方法又はこれに類似する方法により行うもの(取り扱う有価証券の種類等に照らして取引所金融商品市場又は店頭売買有価証券市場(第六十七条第二項に規定する店頭売買有価証券市場をいう。)以外において行うことが投資者保護のため適当でないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)
イ 競売買の方法(有価証券の売買高が政令で定める基準を超えない場合に限る。) (=オークション、板取引。取扱い可能金額に制限。取引所や店頭有価証券がないと使えない?)
ロ 金融商品取引所に上場されている有価証券について、当該金融商品取引所が開設する取引所金融商品市場における当該有価証券の売買価格を用いる方法(=ST は上場されていないので使えない)
ハ 第 67 条の 11 第 1 項の規定により登録を受けた有価証券(以下「店頭売買有価証券」という。)について、当該登録を行う認可金融商品取引業協会が公表する当該有価証券の売買価格を用いる方法(= 店頭売買有価証券は旧 JASDAC 市場のようなものが想定されている。STO 協会が類似制度を導入する?)
ニ 顧客の間の交渉に基づく価格を用いる方法 (=顧客から買値・売値を出させ、板ではない方式で仲介する?)
ホ イからニまでに掲げるもののほか、内閣府令で定める方法(顧客注文対当方法、売買気配提示方法)

施行令 (競売買の方法による場合の基準)
第 1 条の 10 法第 2 条第 8 項第 10 号イに規定する政令で定める基準は、次に掲げるものとする。
一 毎月末日から起算して過去 6 月間に行われた上場有価証券等(金融商品取引所に上場されている有価証券及び店頭売買有価証券をいう。以下この条において同じ。)の売買(デリバティブ取引に該当するものを除く。以下この条において同じ。)であつて法第 2 条第 8 項第 10 号イに掲げる売買価格の決定方法により行うものに係る総取引高の 1 営業日当たりの平均額の、当該 6 月間に行われた上場有価証券等のすべての取引所金融商品市場及び店頭売買有価証券市場における売買に係る総取引高の 1 営業日当たりの平均額に対する比率が 100 分の 1 であること。
二 毎月末日から起算して過去 6 月間に行われた上場有価証券等の売買であって法第 2 条第 8 項第 10 号イに掲げる売買価格の決定方法により行うものに係る銘柄ごとの総取引高の 1 営業日当たりの平均額の、当該 6 月間に行われた当該銘柄のすべての取引所金融商品市場及び店頭売買有価証券市場における売買に係る総取引高の 1 営業日当たりの平均額に対する比率が 100 分の 10 であること。

定義府令 (私設取引システム運営業務の売買価格の決定方法)
第 17 条 法第 2 条第 8 項第 10 号ホに規定する内閣府令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
一 顧客の提示した指値が、取引の相手方となる他の顧客の提示した指値と一致する場合に、当該顧客の提示した指値を用いる方法
二 金融商品取引業者が、同一の銘柄に対し自己又は他の金融商品取引業者等の複数の売付け及び買付けの気配を提示し、当該複数の売付け及び買付けの気配に基づく価格を用いる方法(複数の金融商品取引業者等が恒常的に売付け及び買付けの気配を提示し、かつ当該売付け及び買付けの気配に基づき売買を行う義務を負うものを除く。)

Ⅷ ファンド型 ST の規制纏め

1. 業規制

(1) プライマリー

  募集・私募等の主体 募集・私募等の相手方 必要な登録・届出等
A ST 発行者 適格機関投資家

49 名以下の富裕層に限定*
発行者において適格機関投資家等
特例業務の届出が必要
B ST 発行者 A 以外の場合、自主規制で
一定の投資家に限定すべき
という議論あり
発行者において第二種金商業の登
録が必要
C ST 発行者以外の第三者 同上 当該第三者において第一種金商業
の登録が必要

*限定の方法については要検討

(2) セカンダリー

・業として、ST の売買の媒介を行う場合、第一種金融商品取引業の登録を必要とする

・取引所形式での取引は現実的には困難であり、販売所方式での取引になると思われる

2. 開示規制

  募集・私募の区分 募集・私募等の相手方 開示義務
a 私募 適格機関投資家私募* 適格機関投資家に限定 通常無し
b 少人数私募* 49 名以下に限定
c 特定投資家私募 特定投資家に限定
d 募集 多数 有価証券届出書**
(その他、四半期報告書、臨時報告書等の継続開示についても留意する)

* 限定の方法については要検討
**発行価格の総額が 1 億円未満の募集の場合、有価証券届出書(金商法第 4 条第1 項第 5 号)の届出義務が免除される

3. 考えられる方式

当初は、規制が緩やかな方式として、①発行者自らが、適格機関投資家特例を使用して募集を行う方式(1(1)a‐2b 方式)、又は②発行者が第三者に対し適格機関投資家私募を委託する方式(1(1)c‐2a 方式)が取られ、その後、徐々に、発行者が第三者に委託して ST の募集を多数の者に対し行う方式(1(1)c‐2d 方式)による取引が行われる?

Ⅸ 法改正と STO に関する各種の質問

金商法改正に関連して各種セミナーで例えば、以下のような質問を受けている。なお、今回の改正はあくまで業法の改正であり、ST の私法上の位置づけ、発行手続きその他関連規定に直ちに影響を及ぼす訳ではない。

1. セキュリティトークンの移転の方法と私法上の有効性

匿名組合契約その他ファンド上の地位をトークン化して、トークンの移転によって、匿名組合契約上の地位を自由に移転できるか。
日本の民法上、契約上の地位の移転には、地位の譲渡人及び譲受人の合意と契約の相手方の承諾が必要となる。この点は改正法で何らの変更はなく、トークンの移転によって権利が自動的に移転する、ということが可能かはあくまで今後の解釈による。なお、実務上は何法を準拠法にするか、私法上どのような権利を有するかについては Code is Law として明確には規定しない対応になるのでは、と思われる。

日本の民法上の第三者対抗要件
確定日付ある通知、又は確定日付ある承諾
これがなくトークンの譲渡のみで良い、としてリスクは発生しないか?

2. セキュリティトークンの会社法上の発行手続き

会社法上の ST の発行手続きはどうなるか。
ST は、株式ではなく社債でもなく9、これらに対する会社法の発行手続規制がそのまま当てはまる訳ではない。匿名組合その他ファンドの権利をトークン化したものである、と考えれば、株主総会の決議は必要ではなく、但し、重要な業務執行であり取締役会の決議(会社法第 362 条第 4 項柱書)を経ることが妥当とは思われるが、今後の解釈による。

3. セキュリティトークンの税務上の取扱い

匿名組合その他ファンドの権利をトークン化したものである、と考えれば、ファンドと同様の取扱いになるのでは、と思われるが、税務専門家との協議が必要である。

4. 既存株主への説明義務

会社法上、既存株主に対して特段、説明義務等が求められる訳ではない。但し、穏当な経営という観点からは既存のステークホルダーの権利を害さないトークン組成が必要であろう。

5. 上場会社の適時開示

上場会社が ST を発行する場合、金融商品取引所における適時開示についても留意が必要である。いかなる情報を開示すべきかについては、適宜、各金融商品取引所と調整する必要があるだろう。

6. ブロックチェーン

X社がY証券のアレンジでSTOまたは仮想通貨市場ZでSTOを行う場合、X社が発行する証券に相当するブロックチェーンの実態はX,Y,Zのどこに配置されるか?
例えば仮想通貨市場毎に何らかのマルチ・トークン・プラットフォームがあり,そこに追加できるプロトコルがあって(STO-20), そのプロトコルを守る形で自身のトークンを作って登録すると,あとは承認さえおりれば売買可能となるイメージか?

ブロックチェーンについては Ethereum ベースや Tezos ベースのものが多い。その場合、Ethereum や Tezos はどこにあるか、ということになりパブリックチェーンであって全世界にある、ということになるのではないか

Ⅹ アセットクラスごとの STO の可能性

1. 株式 STO

<考えられるスキーム>

現在の株式は株券不発行が原則
株主名簿での管理が必要であり、株主名簿への記載が対抗要件(会社法 130 条)

(株主名簿)
第百二十一条 株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
一 株主の氏名又は名称及び住所
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
三 第一号の株主が株式を取得した日
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号
(株式の譲渡の対抗要件)
第百三十条 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする

ブロックチェーン上でトークンを移転した場合に自動的に株主名簿が書き換わるシステムを開発することが良いと思われる。移転があった場合、株主の氏名・住所などを通知してもらえるシステムの開発が必要

なお、会社法 125 条などを踏まえると株主名簿を電磁的記録で作成すること自体は可能

<業者規制>

現在:自己募集・自己私募については業規制なし。株式の募集・私募については一種金商業が必要

改正法:トークン化した場合、自己募集・自己私募については変更なし
募集・私募については原則変更ないが、販売対象に自主規制等で一定の規制が入る可能性

例えば

が想定されるが具体的要件は未定

2. 社債 STO

<考えられるスキーム>

社債について紙を発行した場合、紙の譲渡が権利の取得要件となる

トークン化する場合、社債券を不発行とし、かつ記名式社債として、トークンの譲渡に伴い社債名簿を書き換えする方法により対応か(株式 STO と同様のシステム開発)

(社債券を発行する場合の社債の譲渡)
第 687 条 社債券を発行する旨の定めがある社債の譲渡は、当該社債に係る社債券を交付しなければ、その効力を生じない。
(社債の譲渡の対抗要件)
第 688 条 社債の譲渡は、その社債を取得した者の氏名又は名称及び住所を社債原簿に記載し、又は記録しなければ、社債発行会社その他の第三者に対抗することができない。
2 当該社債について社債券を発行する旨の定めがある場合における前項の規定の適用については、同項中「社債発行会社その他の第三者」とあるのは、「社債発行会社」とする。
3 前二項の規定は、無記名社債については、適用しない。
(権利の推定等)
第 689 条 社債券の占有者は、当該社債券に係る社債についての権利を適法に有するものと推定する。
2 社債券の交付を受けた者は、当該社債券に係る社債についての権利を取得する。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。

なお、会社法 681 条などを踏まえると社債原簿を電磁的記録で作成することは可能

<業者規制>

現在:社債の募集・私募については一種金商業が必要。自己募集・自己私募については業規制なし

改正法:トークン化した場合、自己募集・自己私募については原則変更ない。

募集・私募については原則変更ないが、販売対象に自主規制等で株式の販売と同様の規制が入る可能性があるよう

3. 考えられる不動産 STO の仕組み

不動産自身はトークン化できないため、SPC を設立し、当該 SPC が発行する有価証券をトークン化するという方法が通常と思われる

例えば下記のような方法が考えられる。(これまでの証券化では下記(1)~(3)が多かった印象)

(1) TMK

<基本>
<資産>
<税務>
<その他>

会計監査が必要

<非トークンの場合の販売>
<トークン化>

(2) GK-TK(信託受益権の利用)

<基本>
<資産>
<運用>
<税務>
<非トークンの場合の販売>
<トークン化>

(3) 信託受益権そのままのトークン化

<基本>
<資産>
<運用>
<税務>
<非トークンの場合の販売>
<トークン化>

(4) GK-TK(現物不動産、不動産特定共同事業法)

<基本>
<資産>
<税務>
<非トークンの場合の販売>
<トークン化>

(5) Operating Company + TK (現物不動産、不動産特定共同事業法)

<基本>
<資産>
<運用>
<税務>
<非トークンの場合の販売>
<トークン化>

(6) GK only (現物不動産)

<基本>
<資産>
<運用>
<税務>
<非トークンの場合の販売>
<トークン化>

(7) KK only (現物不動産)

上記(6)に関して、GK ではなく KK を使えば二種金商業の規制なく自己募集可能?KKにすることで論点増えるか?

まとめ:不動産 ST 化(要再検討)

    資産 販売の業法 販売先 税務(Tax Transparency) その他の論点
(1) TMK 現物不動産 第三者による販売:一種金商業
自己販売:規制なし(但し TMKは自己募集できるか?)
自主規制で限定される可能性 90%超配当や適格機関投資家引受など要件満たせば擬似的に Yes 資産流動化計画の作成
会計監査
優先出資の Token 化の方法
(2) GK-TK(信託受益権) 信託受益権 第三者による販売:一種金商業
自己販売:規制なし
同上 Yes TK トークン譲渡の対抗要件
(3) 信託受益権 通常は現物不動産 同上 同上 Yes 信託銀行が Token 化を認めるか
受益権トークンの対抗要件
(4) GK-TK(不動産特定共同事業法型) 現物不動産 第三者による販売:不特法の登録をした一種金商業?
自己販売:販売は委託必須で自己募集不可
適格機関投資家+3 億円以上の人のみ Yes TK トークン譲渡の対抗要件
(5) 不動産特定共同事業法の運営会社に TK 現物不動産 不動産特定共同事業法の会社が自身で販売 限定なし?(金商法無関係) Yes 国交省は不動産特定共同事業法下のSTについてまだ未検討のよう
倒産隔離ではない
暗号資産規制の適用可能性?
TK トークン譲渡の対抗要件
(6) GK の社員権 現物不動産と信託受益権? 第三者による販売:一種金商業
自己販売:二種金商業
自主規制で限定される可能性 no  
(7) KK の株主権 現物不動産と信託受益権? 第三者による販売:一種金商業
自己販売:規制なし?
自主規制で限定される可能性 no  

XI 海外の規制の概要

1. 米国法と Howey Test

米国では securities の概念が極めて広範であり、日本とは異なり明確には決まっていない。そのうちの investment contract については、通常、Howey Test という判例基準で決定される。

Howey Test
An investment contract for purposes of the Securities Act means a contract, transaction or scheme whereby a person [1] invests his money in [2] a common enterprise and its led to [3] expect profits [4] solely from the efforts of the promoter or a third party, [excluded factors] its being immaterial whether the shares in the enterprise are evidenced by formal certificates or by nominal interests in the physical assets employed in the enterprise.

[1]資金の出資、[2]共同事業への出資、[3]収益を期待して、[4]当該収益は専らプロモーター又は第三者の努力によりなされる、[excluded factors] シェアが正式な証書や資産に対する名目的な権利等で表されているかは重要ではない

他国ではユーティリティートークンとして規制対象ではないトークンであっても、米国ではセキュリティーとして規制される場合が多い

2. その他の国の法律

他の殆どの国では、トークンが有価証券に該当するかで規制を考え、かつ有価証券の範囲は①出資、②運用、③配当があるか否かで考えているように思われる(シンガポール、香港、英国、EU など)。その上で、多くの国に適格機関投資家向け販売、少人数向け販売、少額販売などに Exemption があるようである

例えば、EU だと、EUR1M 以下の販売については、目論見書の提出義務が免除され、ただ各国はこの金額を EUR8M にまであげることができ、例えばドイツ(一定の条件あり)、フランス、イタリア、デンマーク、フィンランドなどで 8Mの上限、クロアチア、ベルギー、オーストリアで 5M 上限などとなっている
https://www.esma.europa.eu/sites/default/files/library/esma31-62-
1193_prospectus_thresholds.pdf

以 上